空室があるとオーナーは安定的な収益を得られず、相続税評価においてもその部分については貸家建付地評価の減額をとることができなくなり不利になってしまいます。そこで、昨今増えている賃貸住宅の契約形態として、サブリース契約があります。サブリース契約とはどういったものか、また、サブリース契約を結んでいるときの相続税評価の扱いについて解説していきます。
1.サブリース契約とは?
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!サブリース契約とは、アパートやマンションのオーナーが不動産管理会社と結ぶ一括借り上げ契約です。「一括借り上げ」や「家賃保証制度」と呼ばれることもあります。不動産管理者は入居者に転貸し、オーナーに毎月一定額の家賃を支払います。オーナーに支払われる家賃は、周辺相場の80%~90%とされることが一般的です。
オーナー側は、空室の有無に関わらず、毎月安定した収益を得られること、入居及び退去の手続き、集金業務などの手間が省けることなどがメリットとなります。一方で、家賃収入を最大限には得られないこと、入居者の審査に関われないことなどがデメリットです。
また、家賃保証の免責期間を長く設けるなど、オーナーに不利な条件でサブリース契約を結ぼうとするケースもありますので、注意が必要です。また、保証される家賃が同額ではなく、築年数の経過とともに大幅に下がっていくことが多いです。
2.サブリースしている場合の貸家建付地の相続税評価方法
アパートやマンション、貸家などの賃貸住宅が建っている土地は、相続税の評価で貸家建付地として軽減が受けられます。貸家建付地の相続税は、
「自用地とした場合の価額-(自用地とした場合の価額×借地権割合×借家権割合×賃貸割合)」
で計算できます。自用地とは他人が使用できない自己使用する土地のことを指し、借地権割合と借家権割合は地域によって決まっているものです。
賃貸割合は、相続が開始となった時点で、賃貸住宅ごとに入居している住戸の割合を床面積を基準に算出するものですので、空室が多いと不利になります。
アパートや賃貸マンションで、不動産管理会社とサブリース契約を結んでいる場合には、常に賃貸割合は100%となります。被相続人は、不動産管理会社に借家権を与えている状態と解されるからです。
ただし、サブリースを行う会社が同族会社で、入居者の募集を実際には行っていない、また、他社に再委託しているなど、実体を伴わない場合は租税回避行為とみなされ、貸家建付地としての評価は受けられません。自用地としての相続税評価となります。
また、借家権を完全に不動産管理会社に移転していることも条件ですので、入居者の審査で同意を行っているなどの影響を及ぼしているケースでは認められないこともあります。