収用交換等によって贈与税の納税猶予の対象となる農地を譲渡した場合には、納税猶予の適用が消滅し、猶予されていた贈与税に利子税を加算して納税する必要があります。では、収用交換等によって当該農地を譲渡した場合には、どのような取り扱いがなされるのでしょうか。以下で解説します。
1.収用により譲渡に係る農業経営を廃止した場合の利子税の特例
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!ある質問者から、贈与税の納税猶予の特例を受けている農地の90%以上が収用交換によって譲渡されたために、農業経営を廃止した場合、対象農地のすべてについて農地等についての贈与税の納税猶予等に係る利子税の特例の適用ができるか、という照会が国税庁に対してなされました。
これに対して、国税庁では、上記の利子税の特例が適用されるのは、収用交換によって譲渡した農地に限定され、その残余部分については同特例の適用はなく、原則のとおり利子税の納税が必要であると回答しました。
上記の質問及び回答が国税庁の質疑応答「納税猶予の特例の適用を受けている農地等の大半が収用により譲渡されたために農業経営を廃止した場合の利子税の特例」となります。
2.贈与税の納税猶予の特例とは
贈与税の納税猶予特例とは、農業を営む者が、一定の要件を満たすその推定相続人に対して農地を譲渡した場合に、一般的には、譲渡した者が死亡する時まで、譲渡に係る農地に課税される贈与税の納税を猶予するというものです。
なお、農地を贈与した者が死亡する前であっても、原則として、以下の事由に該当した場合には、納税猶予の適用がなくなり、譲受人は猶予された贈与税の支払いが必要になります。
1.本制度の対象となる農地面積の20%超について、譲渡、転用、使用収益権の設定又は消滅、耕作放棄があった(農地面積の20%以下について譲渡、転用等があった場合は、贈与税の一部の支払いが必要)
2.本特例の対象農地に係る農業経営を廃止した
3.当該贈与者の推定相続人に該当しないこととなった
3.贈与税の納税猶予等に係る利子税の特例について
土地収用法の規定による収用交換等によって、贈与税の納税猶予特例の対象となる農地等を譲渡したために、同特例の適用が消滅した場合には、猶予されていた贈与税の一部の支払いが必要になります。
その際、通常であれば、猶予された贈与税額の納税の他に、その税額に一定率を乗じた利子税の支払いが必要になりますが、収用交換等による譲渡の場合には、その利子税の金額は本来の税額の1/2に軽減されます。
なお、平成26年4月1日から令和8年3月31日までに行われた収用交換等による納税猶予の対象となっている農地の譲渡の場合には、利子税の金額は0となります。
上記の質疑応答では、質問者は、収用交換等によって贈与税の納税猶予の対象となっていた農地の90%以上を譲渡したのだから、残りの数%の農地に係る利子税も免除されてよいと考えましたが、国税庁はこの考えを明確に否定しました。