財産評価基本通達では、取引相場のない株式の評価方法が定められています。相続、遺贈や贈与によって株式を取得した人が評価会社(評価する株式を発行する会社)の経営を支配する同族株主であるかどうか、また、評価会社の業種や規模に応じて、評価の方法は異なります。
1.同族株主とは
同族株主は、次のように定義されます。
・ 株主とその同族関係者(親族のほか、内縁関係にある者、使用人、株主等からの金銭で生計を維持する者、一定の特殊関係にある法人)の議決権割合が50%超の株主グループがある場合は、その50%超のグループに該当する株主
・ 株主とその同族関係者の議決権割合が50%以上の株主グループがない場合において、株主とその同族関係者の議決権割合が30%以上の株主グループがある場合は、その30%超のグループに該当する株主
上記に当てはまらない株主は、同族株主以外の株主になります。
2.同族株主以外の株主等が取得した株式
同族株主以外の株主が保有する取引相場のない株式は、配当還元価額で評価すると定められていますが、次のような場合も配当還元価額で評価します。
・ 中心的な同族株主がいる会社の同族株主であって、議決権割合が5%未満で、中心的な同族株主でなく、かつ、その会社の役員でないか、役員になる予定のない株主。(中心的な同族株主とは、同族株主等のいる会社で株主本人、その株主の配偶者、直系血族、兄弟姉妹、1親等の姻族、一定の特殊関係にある法人の議決権割合が25%以上である場合におけるその株主をいいます。)
会社に同族株主がいない場合、株主は全員同族株主以外の株主になりますが、配当還元価額で評価するのは次の場合に限定されます。
・ 同族株主のいない会社の株主のうち、議決権割合が15%未満の株主グループの株主。
・ 同族株主がおらず、中心的な株主がいる会社の株主のうち、議決権割合が15%以上の株主グループの株主であって、議決権割合が5%未満で、その会社の役員でないか、役員になる予定のない株主。(中心的な株主とは、同族株主のいない会社の株主で、本人と同族関係者の議決権割合が15%以上である株主グループのうち、単独で議決権総数割合10%以上の株式を保有している株主をいいます。)
3.評価会社に種類株式がある場合
平成13年と平成14年の商法改正によって、株式会社はさまざまな種類の株式を発行できるようになりました。会社が異なる種類の株式を発行した場合のそれぞれの株式を種類株式といいます。会社が異なる種類の株式を発行する場合は、普通株式のほかに、無議決権株式、議決権制限株式などのように、議決権に一定の制限を設ける株式を発行するのが一般的です。
評価会社が議決権制限株式を発行している場合、議決権割合を計算するときに、その議決権制限株式の議決権はどのように扱えばよいのでしょうか。財産評価基本通達188-5では、議決権制限株式の議決権の数も含めて議決権割合を計算することと定めています。議決権制限株式は議決権が制限されているものの、その範囲内で株主は総会決議に加わることが可能であるという考えによるものです。
【財産評価基本通達】(同族株主以外の株主等)
(種類株式がある場合の議決権総数等)
188-5 188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)から(4)までにおいて、評価会社が会社法第108条第1項に掲げる事項について内容の異なる種類の株式(以下この項において「種類株式」という。)を発行している場合における議決権の数又は議決権総数の判定に当たっては、種類株式のうち株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数を含めるものとする。(平3直評4外追加、平12課評2-4外・平15課評2-15外・平18課評2-27外改正)