子が親から何かを借りたとき、使い終わったらそのまま返す場合は、対価を払わないことがほとんどではないでしょうか?
もちろん、そもそも子供は何も所有していないのが一般的ですから、これは当たり前の感覚です。しかし、税制上の見地から考えると、子供はなんの対価も支払うことなく利益を得ている状態と言えます。この場合に関わってくるのが、みなし贈与でしょう。
例えば、市価よりも著しく低い価額で財産を売却した場合、財産の買い手には市価との差額分に贈与税が課せられます。また、親が子に利息無しでお金を貸した場合も、利息相当を贈与したものとみなされます。
では、子供が親の土地に家を建てた場合はどうなるのでしょうか? また、その親の土地が借地だった場合は、どう扱われるのでしょうか?
1.賃貸借と使用貸借
ものの貸し借りというものは、税制法上「賃貸借」と「使用貸借」の2種類が存在しています。
「賃貸借」は一般的に第三者間で行われる貸し借りです。
例えば、レンタルビデオやレンタカーなど、借り手から貸し手に対して一定の賃料を支払うことで、ものを借りる契約です。もちろん、この場合に関わってくる税は所得税になるでしょう。もし、この賃料が著しく低ければ、贈与とみなされて贈与税が課せられるかもしれません。
もう一方の「使用貸借」というのは、「友達にDVDを貸し、観終わったら返してもらう」「子が親の車を借りる」などといった、無償で借りて使用後速やかに返す契約のことです。
こういった無償で借りる契約に名称があるということは、無償での貸し借りが税制法上認められているということになります。
2.親の土地に子供が家を建てたとき
上述しているように、無償での貸し借りというものが税制法上存在していますので、親の土地に子供が自分の家を建てることも贈与にはならないということになります。
ただし、使用貸借であることが条件ですので、「気持ち程度」でも賃料を支払うと、著しく低い価額での贈与とみなされる可能性がありますので、気を付けなければいけません。
またこの場合、相続時にも注意しなければならないことがあります。
それは、「使用貸借によって子供が建てた家については、相続税の計算に影響を及ぼさない」という点です。
本来、第三者に貸し付けている土地は、相続税の評価をするときに一定の減額を受けることができます。しかし、使用貸借として貸している場合は、まったく影響を及ぼしません。そのため、その土地の相続税評価は、更地と同等とみなされます。つまり、相続税が減額されることはありません。
3.親の借地に子供が家を建てたとき
もし、親の土地が借地だった場合は、どう考えるべきでしょうか?
この場合でも、親の土地には借地権という財産がありますので、親から子へその権利を又貸しすることになります。つまり、無償の場合は権利の使用貸借という解釈になるのです。
しかし、借地だった場合は、土地の貸し主である第三者がいますので、ただ使用貸借を主張するだけでは後々困ったことになりかねません。
そのため、借地権について無償での貸し借りが行われる場合には、「借地権の使用貸借に関する確認書」というものを作成して住所地の所轄税務署長へ提出しておく必要があります。これは、土地の所有者と借地権の権利者(親)、借地権の使用貸借を受ける者(子)とで、土地が使用貸借契約にて又貸しされていることを確認するものです。
なお、借地権の使用貸借契約の場合でも、相続時の評価額計算については、使用貸借はまったく考慮されることはありませんので、相続税が減額されることはありません。
【参考】
国税庁 タックスアンサー No.4555 親の借地に子供が家を建てたとき