この記事では、人材採用をおこなう会計事務所が、求人を行う際に具体的にどういったことに気をつけて活動すれば良い人材が採用できるかということについて、3ステップで解説していきたいと思います。
~目次~
STEP1 “どんな人材を採用したいか明確にする”
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!まずは、今のあなたの事務所にどういったスペックの人材が必要かということを明確にしましょう。
おおよそ考えるべきことは以下の点になるでしょう。
- 会計事務所の経験は?
- 年齢は?
- 性別は?
- 税理士?科目合格者?
- 特殊スキルの経験値(資産税・国際税務など)は必要?
- 前職の役職は?
- 年収は?
- 専門職?バックオフィス業務?
採用する際には、性格や人柄、マインドといった内面も非常に重要かとは思いますが、そういったところは実際に面接してみないと分かりませんので、まずは上記のような条件面を考え、書類選考の参考にすると良いでしょう。
絶対譲れない条件とそれ以外わけて考えておくと良いでしょう。例えば以下のような感じです。
【絶対条件】
・年収は500万円以下
・年齢は40歳未満
・会計事務所経験は3年以上
【できれば条件】
・前職で3名以上の部下のマネジメント経験あり
・相続税の申告経験が10件以上
どんな人材を採用したいかというイメージが決まったら、具体的にどうやって採用活動をすれば良いかを、次のステップで見ていきましょう。
STEP2 “職種に応じて募集媒体を決める”
採用したい人材像に応じて、それぞれお勧めの求人媒体があります。
以下、具体的に順番にご紹介したいと思います。
専門職の中途採用なら『人材ドラフト』
まず、専門職の中途採用なら『人材ドラフト』をお勧めします。
1ヶ月単位でWEBサービスを利用することができ、必要条件をこちらで絞り込んで求職者に能動的にアプローチできるドラフトメールという機能が期間内であれば使い放題です。
税理士法人チェスターでは、開業以来何十名も、この人材ドラフトのサービスで採用をさせて頂いています。アクティブユーザー数は不明ですが、登録者数は4万人を超えるようでこの手のサービスではダントツNo1と言えるでしょう。
ただし、1ヶ月20万円程度の費用がかかり、仮に1人も採用できなかった場合には損になってしまいますが、成功報酬でも年収の30%近くも払う人材紹介会社と比べると割安な手数料と言えます。
▼採用ご担当者様へ|人材ドラフト
https://www.jinzai-draft.com/company-contact
ハイスペック専門職の中途採用なら『MS-JAPAN』
例えば、ある程度大手の税理士事務所の役職付きの税理士などを採用したい場合には、人材紹介会社のMS-JAPANがお勧めです。
コンサルタントに直接要望を伝えることで、ニーズにマッチした人材の紹介を受けることができ、また成功報酬制ですので、採用にいたらなかった場合には費用は一切かかりません。
理論年収の30%という高額な報酬が発生しますが、ハイスペックな人材を多く紹介できる実力があるという印象です。
▼求人企業の皆様へ|MS-JAPAN
http://www.jmsc.co.jp/corporate/
新卒採用なら『TAC』『大原』
新卒の未経験者を安く採用したいのであれば、TACか大原をお勧めします。
資格の勉強をしている受験生の求職者情報を一番多く保有しているのは、この2社だと思います。採用システムの利用料金も他の人材紹介会社と比較するとリーズナブルで10万円以下で利用が可能です。ただし、何度か利用をさせてもらった経験上、経験者やハイスペック人材の採用は難しいと思います。
▼求人広告のシステム|TACキャリアナビ
http://tacnavi.com/recruiting.htmll
▼大原キャリアナビ
http://www.o-hara-cs.jp/service/
バックオフィス業務の採用なら『ハローワーク』
最後に専門職以外の間接業務の募集であれば、間違いなくハローワークがお勧めです。
手数料は無料ですし、非常に多くの求職者情報があります。
仮に一度募集してみて応募がなくても、条件や時期、アピール文などを変えて何度でもチャレンジすることが可能です。
注意点は、他の媒体と異なり募集要項を視覚的に訴えかけることができず文字情報の条件面のみですので、募集要項の条件には最大限の注意を払う必要があります。
同地域の同業種の募集要項を分析し、見劣りしない条件を設定しましょう。
▼事業主の方へ|ハローワークインターネットサービス
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/enterprise/ent_top.html
STEP3“経験値やスペックに応じた選考方法を決める”
実際に募集を開始し、応募が来出したら、次は選考方法を決める必要があります。
通常、履歴書・職務経歴書での書類選考 → 筆記試験・面接という大きく分けて2段階の選考になると思いますが、それぞれ実際に見るべきポイントを解説していきたいと思います。
税理士法人チェスターの採用選考で実際に行っていることです。
書類選考で見るべきポイント
・写真の印象
写真の印象は重要だと思います。性格は顔に出るといいますし、写真である程度の人柄は予測することが可能でしょう。単純に“良い面構え”だから会ってみようという、“フィーリング”でも良いと思います。
・志望動機
“なぜ、この事務所で働きたいのか”という志望動機の欄はやはり一番重要だと思います。
明確な志望動機があれば理想的ですが、同じ内容の履歴書をいろんな会計事務所に送りまくっているような内容の志望動機は論外ですね…。
・写真の切り方、貼り方
履歴書に写真を貼る際に、写真を切るという作業が必要です。
自分の一生を左右する大事な転職活動の入り口で使用するもっとも重要な書類である履歴書を丁寧に作れない人は、仕事も丁寧にできないと容易に想像できます。
履歴書に貼ってる写真が枠からはみ出ていたり、切り口がゲコゲコだったら、確実にマイナスポイントです。同じような理由で、誤字脱字の有無や字の丁寧さなども見ておくと良いでしょう。
・学歴や職歴
学歴は、加点にのみ使用し減点には使わないようにしています。学歴がなくても優秀な人材はいっぱいいます。ただ、学歴が良いと優秀である確率は高くなるとは思います。
ですので、良い学歴であれば加点ポイントとしますが、学歴がないからといってそれだけで書類選考を落とすことはしません。
筆記試験は“実務問題”と“CUBIC”の2つでOK
書類選考を終えて、次は事務所に来てもらい、同日に筆記テストと面接を済ませてしまいましょう。筆記試験でお勧めするのは、“実務問題”と適性検査の“CUBIC”の2つです。
まず実務問題ですが、これはあなたの会計事務所で普段行っている業務にかかわる実際の問題をオリジナルで制作することをお勧めします。この程度の問題は最低限といてほしいという問題を用意しましょう。ちなみに、税理士法人チェスターでは土地評価などの相続税申告実務の問題をいくつか用意しています。
またできれば、履歴書の職務経験を見て、それに応じて問題の難易度を変えるというのもありだと思います。例えば、部下をかかえて案件をチェック経験があるような人には、実際の業務資料のチェックを制限時間内で行ってもらうのもひとつの方法かと思います。
次にCUBICですが、これは提供している会社がいくつかありますが、1人あたり2,000円程度で問題の提供・採点をしてもらうことができます。
適性テストでは、有名で圧倒的シェアを誇るものですので、他のものは検討する必要はないと思います。仕事に関する適性が面白い程よくわかり、参考になります。
初めて実施する前に、ぜひご自身やすでにいる事務所の職員に受けてもらって結果を照らし合わせて確認してみると良いでしょう。
▼CUBIC適性試験|by GDL
http://www.gdl-cubic.com/
面接試験で聞くべきこと
税理士法人チェスターで面接を行う際は、面接質問事項一覧シートを使用し、定型の質問群からその場に応じて質問を行っています。なお、必ずするしないではなく、あくまで話の流れやその人の特性に応じて柔軟に質問内容は変えていますがその一例をご紹介します。
- 弊社への志望動機は?
- 前職を辞められた理由は?
- 同僚や上司、部下から自分はどのように評価されていると思いますか?
- 仕事にやりがいを感じる瞬間はどんな時ですか?
- 今までで一番印象に残っている仕事のエピソードを教えてください。
- ストレスは溜まりやすい方ですか?またその解消方法は?
- 前職で不満はありましたか?具体的に教えてください。
- 転職先に望むこと3つを教えてください。
など、こういった項目がA4用紙1枚にびっしりと書かれています。
また、自分から積極的に話をするタイプでない人や、緊張していそうな場合にはあえて趣味や休日の過ごし方を聞いて、リラックスさせるために雑談をするときもあります。
実は、面接は座って話をする前の段階からも、見極めポイントがいくつもあります。例えば、名刺交換の仕方、初めましての挨拶の仕方、椅子の座り方、などなど、転職であれば社会人としての当然のマナーがきちんとできているかも見るべきです。
(参考)会計事務所の採用活動におけるQ&A
採用専門のHPは作ったほうがよいでしょうか?
結論から申し上げると、良い人材を採用したければ必ず作った方が良いでしょう。
お金をたくさんかけて、見た目が立派なHPを作る必要は必ずしもなく、ブログでも良いと思います。要は、自分が求職者の身になってその事務所がどんな事務所なのかを知れるような状態にしておく必要があります。
- どんな仕事内容か?
- どんなキャリアプランがあるのか?
- 有給は?残業は?給料は?福利厚生は?
- 所長の考え方、経営理念
- どんな雰囲気か?どんな人がいるのか?
最低限、上記のようなことがわかる状態にしておけば良いでしょう。
ヘッドハンティング会社の利用はどうでしょうか?
特定の会社から特定の人材を引き抜きたい場合には有効だと思います。
ただし、かなり高額なので覚悟が必要です。成功してもしなくても着手金100万円、さらに成功したら理論年収の30%から40%というのがイメージです。
それだけの手数料をはらってもほしい人材がいる場合には良いと思います。ただ、税理士業界という狭い業界内であまり同業者からの引き抜き行為はすべきではないと個人的には思います。
ちなみに、税理士法人チェスターも過去に同業他社から社員の引き抜き未遂をされたことがあります。社員が報告してくれたことにより発覚しましたが。
まとめ
この記事を読んで、会計事務所が人材採用をするおおよその流れは掴めたと思います。
ただ、採用活動は実際やってみるとなかなか大変です。さらに正解がなく、採用してしばらくしないと正解か失敗かもわかりません。
この記事を読んだあなたの採用活動の一助になればと思います。
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