根抵当権が設定されている不動産がある場合

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一般的に相続財産といえば不動産・現金・有価証券などですが、これら以外に財産上の権利を相続する場合があります。ここでは根抵当権を相続した場合について解説します。

1.根抵当権とは

根抵当権とは、一定範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保する抵当権のことで、反復継続的の行われる取引のために利用されます。

例えば、会社は事業を行っていくのに土地などを担保に金融機関から融資を受けます。もし借りたお金を返済できなければ、担保となっている土地を競売するという抵当権を設定します。返済期日までに金融機関にお金を返すと会社は抵当権を抹消しますが、継続的な取引のために金融機関からまた融資を受けて抵当権を設定します。

ところが、この抵当権を設定したり抹消したりというのは手間隙がかかります。そこで、予め融資額の上限を設定しておいて、金融機関からの借り入れや返済を繰り返す期間に限りそのまま抵当権を設定したままにして事務処理を簡単にしました。これが根抵当権というものです。

不動産に根抵当権が設定されているかどうかは、その不動産の登記簿謄本を閲覧すれば確認することができます。

2.相続税の税務調査ではどんなことを指摘されるのか?

では、根抵当権でお金を借りている人に相続が発生したら、その根抵当権はどうなるのでしょうか。

原則として、根抵当権の債務者が死亡した場合には、その人が死亡した日から6ヶ月以内にそれを引き継ぐ債務者を定める合意の登記をしなければ、相続が開始した時に元本は確定したものとみなされると民法で規定されています。ここで「元本が確定する」とは、反復継続して行う取引が終了して、それまで融資を受けていた債務の金額がはっきりと確定することを意味します。つまり、元本が確定した後の根抵当権は、一般の抵当権と同じ性質の債権へと変わるのです。

もし相続人が以前と同じように反復継続的な取引をして根抵当権を利用し続けたい場合は、6ヶ月以内に根抵当権を引き継ぐ債務者を定める合意の登記をする必要があります。これを指定債務者合意の登記といい、手続きの手順は次のようになります。

【指定債務者合意の登記までの手順】
(1)まず、指定債務者が債務者でありかつ設定者でもある場合は、相続による所有権移転の登記を行います。
(2)次に、根抵当権についての債務者の登記は、すべての相続人の名義にします
(3)最後に、根抵当権について、既に登記してあるすべての相続人の中から指定債務者の合意の登記を行います。

以上の手順で登記を行うことにより、根抵当権は以前と同じように継続して利用できます。なお、指定債務者合意の登記を行う場合に、金融機関に伺いを立てる必要はなく、相続人だけで登記を行うことができます。

3.相続から6か月が経過した根抵当権はどうなる?

相続が開始してから6ヶ月が経過すると自動的に元本確定すると、根抵当権は一般の抵当権と同じ性質の権利へと変わります。そうすると、金融機関はすべての共同相続人に対して、根抵当権が担保している債務を弁済するように請求することができます。

通常は根抵当権が設定された不動産について遺産分割協議を行い、相続する者を決定します。もちろん根抵当権で担保されている債務もその者が相続すると決めるのですが、いったん元本が確定してしまうと金融機関に対して遺産分割協議の内容を主張することはできません。遺産分割協議の内容より元本確定の効果の方が優先されるということは、知っておきましょう。

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