特許庁は、毎年の特許出願件数を個人、法人、官公庁の別に発表しています。2014年の特許出願件数は約32万6,000件あり、そのうち個人による出願は約8,900件でした。ここ10年間、個人による出願は年間9,000件から1万3,000件程度で推移しています。したがって、特許権を相続するという場面は、個人にとっても無縁のものではありません。また、亡くなった人が会社を経営していた場合は、株式の価額を評価するときに特許権の評価が必要となることがあります。
~目次~
1.特許権とは
特許権は、産業上利用できる発明で特許を受けたものを保護するものです。特許権は設定の登録により発生し、特許権者(特許権を持つ者)は、業として特許発明を実施する権利を専有します。
特許権の存続期間は出願の日から20年とされています。その期間内であれば、特許権を相続することができます。特許権を相続した場合は、特許権を相続した旨を特許庁長官に対して遅滞なく届け出なければなりません。
2.実用新案権、意匠権及びそれらの実施権の評価方法
特許権の経済的価値は、特許権を行使することで特許権者が得られる利益の額によって定まります。利益を得る方法としては、他人に特許発明を実施させて相当の金額を受け取る方法と、特許権者が自ら特許発明を実施する場合があります。
特許権はこれまでになかった発明に価値を見いだしているものであるため、売買実例や取得に要した費用などをもとにして価額を評価する方法は適していません。したがって、将来に得られる収益を見積もり、それを基本として収益還元方式で評価することになります。
特許権の相続税法上の評価方法は、財産評価基本通達で定められており、次のように評価します。
(1)特許発明を他人に実施させている場合
特許発明の実施によって将来受ける補償金(収益)の額を、基準年利率による複利計算で現在の価値に割り引いた価額で評価します。具体的には、次のように計算します。
A=第1年目の補償金年額×1年後の基準年利率による複利現価率
B=第2年目の補償金年額×2年後の基準年利率による複利現価率
…
N=第n年目の補償金年額×n年後の基準年利率による複利現価率
上記のAからNまでの合計額を特許権の評価額とします。なお、第n年目のnは課税時期から特許法に規定する特許権の存続期間(20年)が終了するまでの範囲内において推算した年数とし、1年未満の端数は切り捨てます。
将来受ける補償金の額が確定していない場合は、課税時期より前に取得した補償金の額で経常的な部分の金額をもとにして、その特許権の需要や持続性等を考慮して推算した金額を将来受ける補償金の額とします。
(2)特許発明を自ら実施している場合
特許権またはその実施権を得て自ら特許発明を実施している場合は、その特許権や実施権の価額は自らの事業の営業権の価額に含めて評価します。営業権の価額はその事業の収益をもとに計算しますが、収益には特許権や実施権によってあげるものも含まれているという考えから、このような評価方法をとっています。
(3)将来受ける補償金が少額である場合
特許発明を他人に実施させているか自ら実施しているかにかかわらず、将来受ける補償金の額の合計が50万円に満たない場合は、特許権は評価しません。これは、将来受ける補償金が見込みどおりに受けられるとは限らず、将来の不確実性を考慮したことによるものです。
3.特許権の評価方法が準用される場合
これまで述べた評価方法は、実用新案権・意匠権及びそれらの実施権、商標権及びその使用権の価額を評価するときにも準用されます。
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