市区町村の水田活性化計画に従って設けられる調整水田を、一定の要件を満たす相続人が相続又は遺贈によって取得した場合に、農地等に係る相続税の納税猶予特例は適用されるのでしょうか。以下で解説します。
調整水田に対する納税猶予の特例の適用について
ある質問者から、国税庁に対して、以下のような質問がなされました。
それは、米の生産調整のための調整水田を、農業を営む被相続人から一定の相続人が相続又は遺贈によって取得し、かつ、被相続人が営んでいた農業を承継する場合には、当該調整水田には、農地等の納税猶予の特例が適用されるのか否か、というものです。
なお、ここでいう調整水田とは、米の生産調整のために、各年ごとに市町村水田活性化計画により、農地である水田の全部又は一部について、農家の選択により「水を張ることにより、常に、水稲の生産力が維持される状態に管理」するが、耕作をしていない水田のことをいいます。
この質問に対し、国税庁は、次のように回答しています。
農地法上の農地は、農地法第2条第1項において「耕作の目的に供される土地」と定義されていますが、耕作の目的に供される農地とは、現に耕作されている土地のほか、現に耕作されていない土地のうち現状が耕作し得る状態にあり、通常であれば、耕作されていると認められるものも含まれると解されています。
よって、調整水田についても、それが客観的に見て、現状が耕作し得る状態にあり、かつ、通常であれば耕作されていると認められる場合には、農地等に係る相続税の納税猶予特例の対象となる農地に該当する、というものです。
上記の質問及びそれに対する国税庁の回答が、国税庁の質疑応答「調整水田に対する納税猶予の適用」となります。
農地等に係る相続税の納税猶予特例の適用を受けるための要件
農地等に係る相続税の納税猶予特例の適用を受けるためには、特例対象者が取得した農地が、農地法上の農地に該当しなくてはなりませんが、その他にも、(1)及び(2)の要件を満たしていなくてはなりません。
(1)相続税の申告書に、この特例を受ける旨を記載し、かつ、相続税の申告期限内に、管轄の税務署に提出すること
(2)以下の(イ)~(ホ)のいずれかに該当すること
(イ)被相続人が農業の用に供していた農地等で、相続税の申告期限内までに遺産分割されたもの
(ロ)被相続人が特定貸付を行っていた農地等で、相続税の申告期限内までに遺産分割されたもの
(ハ)被相続人が営農困難時貸付を行っていた農地又は採草牧草地で、相続税の申告期限までに遺産分割されたもの
(ニ)被相続人から生前一括贈与により取得した農地等で、被相続人の死亡の時まで贈与税の納税猶予又は納期限の延長の特例を受けていたもの
(ホ)相続や遺贈によって財産を取得した人が、相続開始の年に被相続人から生前一括贈与を受けていたもの
いずれにしても、本特例の適用を受けるためには、相続人が相続の開始を知った日の翌日から起算して10か月の期限内に、必ず、相続税の申告書を管轄の税務署に提出する必要があります。