農地を相続し農業を続けた場合、一定の要件を満たせば、相続税の納税猶予、相続税の納税免除などの優遇措置を受けることができます。ただし、納税猶予の継続や納税免除を受けるためには、3年ごとに「継続届出書」を提出し続けることが必要です。ここでは、農地の相続税の納税猶予の特例と継続届出書についてご説明します。
~目次~
1.農地の相続税の納税猶予については継続届出書の提出が重要
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.農地の納税猶予の特例とは
農業を営んでいた人から、相続などにより農地を受け継いだ相続人が、相続税の支払いのために農地を売却しなければならず、農業を続けられなくなることがあります。そこで農地に対する相続税の支払いを猶予し、農業経営を続けられるように設けられた特例が「農地の相続税の納税猶予の特例」です。
1-2.納税猶予の特例が適用になる要件
「農地の相続税の納税猶予の特例」の適用を受けるには、農業委員会の「適格者証明」が必要です。なお、納税猶予を受け続けたい場合、税務署へ3年ごとに「継続届出書」の提出が必要になります。
<被相続人の要件>
次のどれかに該当する人
- ?死亡の日まで農業を営んでいたこと
- 農地などの生前一括贈与をしたこと
- 死亡の日まで、農業経営基盤強化促進法にもとづく特定貸付けを行っていたこと
<相続人の要件>
次のどれかに該当することを農業委員会が証明した人
- 相続税の申告期限までに、相続などで取得した農地で農業を始め、その後も農業を続けると認められること
- 相続税の申告期限までに上記(3)の特定貸付けを行ったこと
1-3.相続税の納税が免除される場合もあります
相続税の納税猶予特例を受けた相続税は、次のいずれかを満たせば免除されます。
- 農業相続人が死亡した場合(次の相続人に相続税が課税される)
- 相続人が、子供などに農業を任せるために、農地を一括贈与して贈与税納税猶予の適用を受けた場合
- 相続税の申告期限後、20年間農業を続けた場合(市街化区域内農地等に対応する農地等納税猶予税額の部分に限る)
つまり、相続人が農業を一生続けたり、相続人の後継者が農業を引き継いだりする場合には、相続税を払わなくてもいいことになります。
1-4.納税猶予が打ち切られる場合
なお、以下のどれかに該当した場合は、納税猶予が打ち切りとなります。その場合には、猶予された税額と利子税を納付しなくてはなりません。
- 農地を譲渡したり、貸したり、転用したりした場合
- 3年ごとに「継続届出書」の提出をしなかった場合
- 納税猶予された相続税について、納税免除になる前に相続人が農業をやめた場合など
農地の相続の際には、将来相続税の納付が免除される可能性があるため、相続人がずっと農業を続けたいと思うなら利用しない手はありません。一方で、この特例の継続には3年ごとに「継続届出書」の提出をしなければ、納税猶予が打ち切られたり、納税の免除を受けられなくなったりします。「継続届出書」の提出は忘れないように注意しましょう。
2.参考様式は国税庁サイトや各自治体サイトにも
農地の相続税の納税猶予の特例を継続するためには、上述のように3年ごとに税務署に「継続届出書」と添付書類を提出することが必要です。この届け出に必要な書類の参考様式は、国税庁のサイトや各自治体のサイトにも掲載されています。それでは、参考様式の例をご紹介します。
- 「相続税の納税猶予の継続届出書」(国税庁の公式サイト)
- 「引き続き農業経営を行っている等の証明書」(農業委員会に申請して発行してもらいます)
(大阪府岸和田市公式サイトの例) - 「特例農地等の異動明細書」(国税庁の公式サイト)
- 「特定農地等に係る農業経営に関する明細書」(国税庁の公式サイト)
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