納税義務者の区分において国籍の判定も重要な要素となります。国籍の決定については、国際法上の原則として、各国の国内管轄事項に属するものとされています。そのため、どの国も自国民としないために、どの国の国籍ももたない無国籍の状態になったり、二つ以上の国が自国民とするために、二つ以上の国籍を同時にもつ重国籍の状態になったりすることがあります。
日本の国籍法は、「父母両血統主義(父又は母のどちらかがその国の国籍をもっていれば、その子もその国の国籍を取得できるという主義)」を採用しています。その他には、「生地主義(その国の領土のなかで生れた者はその国の国籍を取得できるという主義)」があります。
日本と同様に「父母両血統主義」を採用する国の男性と日本人の女性とが結婚して生まれた子供や、「生地主義」を採用する国で生まれた日本人の子供は、その者が一定の年齢に達するまでにいずれかの国籍を選択することになります。それまでの間は日本国籍と外国国籍をもつ重国籍者となります。
ただし、重国籍者の場合であっても、相続税法に規定する「日本国籍を有する者」に該当することになり、納税義務者の判定でも日本国籍を有するものとして判断します。国籍法では重国籍を減らすための制度を設けているものの、それを排除しているわけではないため、重国籍者であっても当然に「日本国籍を有する者」に含まれることになります。
- 父母両血統主義を採用する国
ドイツ、スイス、デンマーク、ノルウェー、ポルトガル、スペイン、オーストリア、イタリア、ギリシア、タイなど - 生地主義を採用する国
アメリカ合衆国、アルゼンチン、オーストラリア、カナダ、イギリスなど