借地権の相続税評価にあたっては、借地契約の締結時に権利金の支払いがあったのか、または通常の地代を支払っているのか、相当の地代を支払っているのかなどにより評価方法が変わってきます。ここでは、これらの言葉の意味とともに、借地権の相続税評価についてご説明します。
~目次~
1.通常の地代
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!1-1.通常の地代とは
通常の地代について説明する前に、借地契約を締結する際の権利金について見てみましょう。
一般に、借地契約の締結を行う際、借主から貸主(地主)に対して一時金を支払います。この一時金は権利金と呼ばれ、「土地の時価×借地権割合」で計算できます。例えば、時価が5,000万円、借地権割合が70%の土地であれば、権利金は3,500万円となります。権利金を支払うことで借主は借地権を得ることができます。
この状況で借地権を設定した土地は、借地権と底地から構成されていることになります。借地権は借主に、底地は貸主に権利がある部分になります。借主はこの土地を利用するにあたって、底地に対応する地代を支払う必要があります。これが通常の地代です。
1-2.通常の地代の計算方法
通常の地代は土地の価額の6%程度といわれています。底地の使用に対して支払う地代であるので、以下のように計算することができます。
通常の地代=土地の価額×(1-借地権割合)×6%
このように計算した通常の地代を支払うことで、土地の借主はその土地全体を使うことができるようになります。
2.相当の地代
2-1.相当の地代とは
一般的な借地契約では、上記のように権利金と通常の地代を支払います。しかし、親族や親族が関係する会社が土地を借りる場合など同族関係者間の取引では、権利金の授受が行われない場合があります。借主は権利金を支払っていないので、通常の地代よりも高い地代を支払う必要がありますし、底地の部分だけでなく借地権の部分の地代をも含めて支払わなくてはなりません。これが相当の地代です。
2-2.相当の地代の計算方法
相当の地代は、土地の価額の6%となります。土地の価額は時価(取引価格)ですが、周辺の公示価格もしくは基準地価から算出した相続税評価額を使うことも認められています。この場合の相続税評価額は借地権設定時または過去3年間の平均となります。
通常の地代は時価の約1%なので、相当の地代は比較してかなり高めの価格です。
相当の地代は権利金の授受がない場合に支払うものです。相当の地代を「借地権設定の対価」と考えることもでき、相当の地代を支払うことで借地権価格をなくすことができるという考え方もできます。
2-2-1.借地権の設定に際して権利金等を一切収受していない場合
借地契約を締結したにも関わらず、適正な権利金のやり取りがなく相当の地代の支払いもない場合、権利金があったとみなして課税されてしまいます。これを借地権の認定課税といいます。認定課税は貸主が個人、法人の場合と借主が個人、法人の場合で異なりますが、ほとんどの場合、貸主は権利金収入の額に対して、借主は借地権の額に対して認定課税が行われます。権利金の授受がなくても相当の地代の支払いがある場合には権利金の認定課税は行われません。
権利金の授受がなく相当の地代を支払っていない場合でも「無償返還の届け出」を行うことで認定課税を回避することができます。「無償返還の届け出」とは、将来その土地を無償で返還することを貸主と借主の連名で税務署に届けるもので、借地契約を締結した後、遅滞なく行う必要があります。「無償返還の届け出」を行うことで権利金の認定課税は行われませんが、相当の地代の支払いがない場合は相当の地代についても認定課税が行われてしまいます。通常の地代を支払っている場合でも認定課税が行われるため、これを避けるには「無償返還の届出書」の提出が必要です。
3.土地の相続税評価
3-1.通常の地代未満(使用貸借)のとき
その土地を使用貸借により使用している場合、土地の上に建っている建物が自用もしくは貸付用に係らず、相続税評価は自用地としての評価となります。
借地契約の締結にあたって権利金を支払っておらず、相当の地代も支払っていない場合は相続税評価にあたって使用貸借とみなされてしまいます。
3-2.通常の地代以上、相当の地代未満のとき
支払っている地代が通常の地代以上で相当の地代未満の場合、借地権の相続税評価額は以下のようになります。
借地権の相続税評価額=自用地の価額×借地権割合×比率(※)
※比率は支払っている地代に応じて借地権割合を調整するものです。
3-3.相当の地代以上のとき
実際に支払っている地代が相当の地代または相当の地代以上の場合、権利金を支払っていないまたは特別の経済的利益を供与していない等の要件を満たすことで、相続税評価額はゼロになります。
4.まとめ
借地権の相続税評価は、権利金の授受があったか、通常の地代または相当の地代を支払っているかによって、評価方法が違います。相続税額に大きく差が出てしまう場合もあるので、「無償返還の届け出」の提出も含めて扱いを間違えないようにしましょう。