亡くなった被相続人が加害者となる交通事故によって怪我をした相手方に対して、被相続人の相続人が治療費等の損害賠償金を支払った場合、その相続人が支払った賠償金は、相続人の相続税の課税価額から控除できるのか否かという問題があります。
以下では、この問題について解説します。
加害者が死亡した場合における損害賠償金についての債務控除とは
例えば、被相続人が運転する自動車が交通事故を起こし、被相続人が亡くなり、交通事故の相手方は大けがを負いました。そこで、被相続人の相続人が、事故の相手方に対して、
治療費や見舞金として、金銭を支払った場合には、その金銭は、相続人が相続税の課税価額を計算する際に、その価額から控除できるのでしょうか。
この問題に対して、国税庁では、被相続人が起こした交通事故が被害者の過失に基づくものであれば、相続人が支払った治療費や見舞金は、被相続人の損害賠償財務の履行に当たるので、債務控除として、相続人の相続税の課税価額から控除できると回答しました。
この質疑応答のことを「加害者が死亡した場合における損害賠償金についての債務控除」
といいます。これにより、交通事故の加害者が亡くなった場合に、その相続人が加害者に代わって被害者に支払う損害賠償金等は、債務控除の対象となるという考え方が示されました。
債務控除ができるのは、被相続人の過失による交通事故に係るものに限られる
国税庁の回答では、交通事故が被相続人の過失に基づくものであれば、という条件がついておりますから、例えば、交通事故の過失割合が、亡くなった被相続人よりも怪我を負った相手方の方が大きい場合に、被相続人の相続人が相手方に対して支払った見舞金等は、損害賠償として性格を有しないので債務控除はできません。
また、損害賠償債務の履行としての性格を有するものであっても、債務控除ができるのは、
続に開始があったことを知った日から10か月以内に実際に支払ったものか、支払額が客観的に見積り可能なものに限られます。
債務控除とは
以下では、上記の質疑応答のテーマの1つである債務控除について説明します。これは、相続税を計算する際に、相続人が被相続人の被相続人の債務、葬式費用などを負担した場合には、その価額を相続税の課税価額から控除できるというものです。
例えば、被相続人の相続人が、被相続人から現金1,000万円、不動産1,000万円を相続によって取得した場合に、同時に、被相続人の債務500万円を引き継ぎ、また、被相続人の葬式費用として100万円を支出した場合には、この相続人の相続税の課税価額は1,000万円+1,000万円-500万円-100万円=1,400万円となるというのが債務控除です。
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