被相続人が、財産だけではなく借金(債務)を持っていた場合、その債務だけ相続しないという選択はできません。そのため、相続を受けるのであれば、借金も負うことになります。
ただ、借金も合わせて相続することは、マイナスばかりではありません。相続税を計算するにあたっては、その課税対象額から、借金の金額を控除することができるのです。
ここでは、相続税の計算時に、相続財産から控除することができる債務について解説いたします。
債務の相続
相続放棄せずに債務も相続した場合、財産と債務を合わせた形で相続税を納めることになります。なお、ここで言う「合わせる」というのは、財産の合計金額から債務の合計金額を差し引くという意味です。つまり、債務の金額は相続税を計算する上で控除金額として働くのです。
しかし、すべての債務が控除にあたる訳ではありません。債務の内容によっては、控除できるものとできないものがあるのです。
(1)相続税の計算において相続財産から控除できる債務
相続税計算時に控除できる債務は、以下のものです。
・被相続人が死亡したときにあった債務で、確定しているもの
住宅ローンや医療費、クレジットカードの支払いや消費者金融からの借り入れなど、債務の種類は問いませんが、被相続人が借金していることを証明できる明細書などがあるものです。ただし、相続税基本通達第14条1において、「必ずしも書面の証拠があることを必要としない」と規定されており、債務の金額が確定しなくても、債務の存在が確実だと認められるものであれば、確実と認められる範囲の金額だけ控除することが認められています。
・相続開始後に課税される所得税や消費税などの公租公課
そもそもの課税対象が被相続人の事業などによるものであり、本来であれば被相続人に課せられる税金であることから、被相続人の債務と同じ扱いになります。
・葬式費用
(2)相続税の計算において相続財産から控除できない債務
次の債務については控除することができませんので、注意が必要です。特に被相続人が生前に購入した非課税財産については、購入品目による切り分けが必要ですので、きちんと確認しておかなければいけないでしょう。
・被相続人が生前に購入した非課税財産の債務
被相続人がお墓や仏壇などの相続税非課税財産を生前に購入して、その支払いが相続開始後に始まる場合、その債務は、相続税算出時の控除とすることはできません。そのお墓や仏壇自体が非課税になっているため、その債務を控除すると二重の控除にあたるためです。
・保証人や連帯保証人のいる債務
保証人がいる債務は、基本的に控除できません。ただし、保証人が弁済して被相続人に対してその返還請求をしている場合の債務については、控除することができます。
連帯保証人のいる債務については、債務を負担する金額な明確でなければ控除することはできません。
・相続人の責任において納付が必要な公租公課
相続人が相続した所得税や消費税などを納付する期限に遅れるなどして発生した遅延税や加算税については、相続人の責任で発生したものですので、控除とすることはできません。
【参考】
国税庁 タックスアンサー No.4126 相続財産から控除できる債務