相続税の課税価額が減額される小規模宅地等の特例は、二世帯住宅の相続にも適用されます。ただ、区分所有登記の有無により、小規模宅地等の特例が適用されないケースもあるため気をつけなければなりません。二世帯住宅をパターン別に分け、小規模宅地等の特例について解説します。
1.二世帯住宅でも小規模宅地等の特例が適用可能
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!小規模宅地等の特例とは、事業用や居住用の宅地等を相続した場合に、限度面積までの部分について相続税の課税価額から一定の割合を減額するというものです。この特例は、相続開始前から3年以内に贈与された場合や相続時精算課税に係る贈与で得た宅地等には適用されません。
相続税の課税価額は区分によって減額される割合が異なります。平成27年1月1日以降に相続の開始があった場合、特定居住用宅地等に該当する限度面積330㎡までの宅地等の減額割合は80%です。それ以前に相続の開始があった宅地等は、限度面積が240㎡で減額割合は80%になります。
小規模宅地等の特例は、二世帯住宅にも適用されます。平成25年度の税制改正により、1棟の建物で二世帯住宅として同居している場合は構造にかかわらず、一定の条件を満たせば敷地全体が特例の対象となりました。
尚、二世帯住宅とはただの同居ではなく、キッチンやリビングなどが親世帯と子世帯で別々になっていて、その部分だけで生活ができる構造の住宅を指しています。
2.区分所有登記のケースは注意が必要
平成25年度の税制改正前は、構造上分かれていて建物内で行き来ができない二世帯住宅は、それぞれ独立した住宅とみなされ同居にはあたらないとして、小規模宅地等の特例は適用されませんでした。
税制改正後は、構造上分けられている二世帯住宅も小規模宅地等の特例が適用されるようになりましたが、同じ二世帯住宅でも区分所有建物登記をしている場合は小規模宅地等の特例が適用されないため注意が必要です。
区分所有建物とは、2つ以上の部屋に区切られた1棟の建物で、各部屋が別々の人の所有権になっているものを指します。マンションなどがこれにあたりますが、二世帯住宅でも、親世帯と子世帯の住宅を親と子がそれぞれ所有し登記上もそのようになっている場合は区分所有建物登記にあたります。
3.パターン別・二世帯住宅の小規模宅地等の特例解説
二世帯住宅はいくつかのパターンに分けられます。比較しやすいように、親と子世帯の生計が別、土地所有者は親(父)、土地と建物を子が相続する場合で考えてみます。
①分離型の区分所有登記でない二世帯住宅
非分離型とは、建物内で行き来ができる構造の住宅です。区分登記でないこのタイプの二世帯住宅は、小規模宅地等の特例が適用されます。
②完全分離型の区分所有登記でない二世帯住宅
完全分離型とは、建物内で行き来ができない構造の住宅です。この場合も小規模宅地等の特例が適用されます。増築による完全分離型の区分所有登記でない二世帯住宅も含みます。
③完全分離型で区分所有登記の二世帯住宅
親の住居部分と子の住居部分がそれぞれの所有権で登記されている場合は、小規模宅地等の特例が適用されません。
④非分離型で区分所有登記の二世帯住宅
建物内で行き来ができる構造の二世帯住宅で区分所有登記になっている場合です。増改築などによって建物内で行き来ができるようにしたものなどが含まれます。この場合、原則的に小規模宅地等の特例は適用されませんが、キッチンが一か所で親世帯と子世帯が食事を共にするなど、同居と認められる場合は適用されることもあります。
⑤非分離型で別棟登記になっている二世帯住宅
玄関が別でも建物内でつながっているような構造で同居とみなされる二世帯住宅は、登記が別でも区分所有登記にあたらないため、小規模宅地等の特例が適用されます。
ただし、1棟ずつ別の建物とされた場合は適用されないため注意が必要です。例えば、2棟の住宅を渡り廊下でつなげただけの別棟登記の二世帯住宅では同居とみなされず、小規模宅地の特例は適用できません。
⑥完全分離型で区分所有登記でない三世帯住宅
三世帯住宅でも区分所有登記されていない場合は、小規模宅地等の特例が適用されます。適用には親族が住んでいることが原則です。
⑦未登記の二世帯住宅
未登記の場合は、小規模宅地等の特例が適用されます。
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