被相続人等の住居用や事業用に使われていた宅地を相続する際には「小規模宅地の特例」を適用し、相続税を減額できます。しかし、遺産分割はデリケートな課題であり、問題なく分割が行われるとは限りません。ここでは、対象の宅地が一部未分割の場合、どのように扱うかを紹介します。
1.小規模宅地の特例を適用するには特例対象宅地を取得したすべての相続人の同意が必要
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!小規模宅地の特例の適用には、面積の上限や相続前の用途(被相続人か被相続人と生計を一にしていた家族の住居や事業に用いられていたか否か)が主な要件となっていますが、他にも留意事項があります。
租税特別措置法施行令第40条の2第5項で「小規模宅地の特例を適用するためには、適用対象宅地を取得するすべての相続人からの同意が必要」という旨が定められています。そのため、小規模宅地の特例を受けるためには、相続税の申告の際に、小規模宅地等についての課税価格の計算明細書に、特例対象宅地を相続するすべての相続人氏名を記載して提出し、同意を証明する必要があります。
2.特例対象宅地が一部未分割の場合には相続人全員の同意が必要
実際には円滑に遺産分割を行えず、遺産が未分割のまま申告書の提出期限に至ってしまうケースもあります。租税特別措置法第69条の4第4項では「小規模宅地の特例は申告書の提出期限までに分割されていない特例対象宅地については適用しない」という旨が定められています。
しかし、同条文にて「特例対象宅地が申告書の提出期限から3年以内に分割された場合にはこの限りではない」とも定められています。すなわち、申告期限時点で未分割の宅地でも、申告期限から3年以内に分割すれば、後から小規模宅地の特例を受けることが可能です。後から小規模宅地の特例を受ける場合でも、相続人全員の同意が必要です。
また、一部未分割であっても、申告書の提出期限内に「特例対象宅地の分割済みの部分」に特例を適用することは可能です。その場合も、分割済みの部分を取得した相続人のみではなく、未分割の部分を共有している状態にあるすべての相続人にも同意を得る必要があります。これは厳格な決まりであり、たとえ特例対象宅地の分割済みの部分が遺言書の指定によるものであっても同様です。
租税特別措置法で定められた特例である小規模宅地の特例は、政策上の意図に基づいて、本来課されるはずの税を減額するものであり、租税の原則である公平性には反するものです。そうした性質のものである以上、租税特別措置法は事例毎の個別事情を考慮することなく、条文に忠実に扱います。そのため、いかなるケースでも「特例対象宅地の未分割部分を共有している相続人を含めた全相続人の同意が必要」という決まりは厳格に守られています。