会社の形態は株式会社だけでなく、合資会社、合名会社、合同会社などがあります。ここでは、無限責任社員から構成される合名会社に出資していた人が亡くなった場合の相続税評価について、3つのパターンに分けて詳しくご説明します。
~目次~
1.合名会社と株式会社の違い
>>無料会員に入会すると、実務で使えるオリジナル書式をプレゼント!!会社形態には株式会社だけでなく、合資会社、合名会社、合同会社などがあります。株式会社以外は持分会社と総称されます。持分会社のひとつである合名会社は、無限責任社員のみから構成される会社形態です。
合名会社のイメージとしては、個人事業主が複数人集まり共同事業に発展した形態です。合名会社の社員とは出資者のことをいい、業務の執行者である地位であるとともに会社の意思決定を行う構成員でもあります。株式会社の株主が有限責任であるのに対して、合名会社の社員は無限責任なので、会社が負った負債に対する弁済の責任は出資した額にとどまらず個人財産全体に及びます。この点では個人事業主と同様です。
株式会社が所有と経営が分離しているのに対し、合名会社などの持分会社は所有と経営が分離しておらず、人的信頼関係を基本に構成されている特徴があります。
2.合名会社の出資の相続税評価は大きく3パターンある
合名会社に出資している社員は死亡により退社したこととなり、出資分は相続財産として相続税の課税対象になります。合名会社の出資(持分)の相続税評価は取引相場のない株式の評価方法に準ずることとされます。しかし、合名会社は無限責任社員で構成されていることから、実務上は異なった方法で評価されるケースもあります。ここでは、大きく3つのパターンに分けて説明します。
2-1.定款に出資持分の相続についての定めがある場合で、出資持分を承継するケース
定款に出資持分の相続についての定めがある場合で、出資持分を承継するケースでは、取引相場のない株式の相続税評価に準ずる方法で相続税評価を行います。評価の方法は、類似業種比準方式もしくは純資産価額方式となります。
下記が定款における出資持分についての相続の定めの例です。
(例)定款
(社員の相続人)
第〇条 社員が死亡した場合においては、その相続人あるいはその他の承継人は、他の社員全員の承諾を得て、持分を承継して社員となることができる。
2-2.定款に出資持分の相続についての定めがなく、持分払戻請求権を相続するケース
定款に出資持分の相続についての定めがない場合は、持分の払い戻しを受け、持分払戻請求権を相続するものとして相続税評価を行います。その場合は、合名会社の課税時期の資産を相続税評価した額の合計額から課税時期の負債を控除した額に持分割合を乗じて計算します。
合名会社の課税時期の相続税評価は、会社法611条において「持分の払戻しは、社員の退職時における会社の財産の状況に従ってしなければならない」と定められており、一般には純資産価額方式で評価します。
2-3.評価会社が債務超過のケース
評価会社が債務超過である場合、超過部分の債務は無限責任社員の連帯債務として、相続財産から債務控除することができます。
債務超過の株式会社の株式評価は0円ですが、合名会社の社員は無限責任社員であるため、個人の財産である相続財産から債務控除することができるのです。
例えば、合名会社が5,000万円の銀行借り入れをしていて、合名会社の資産の相続税評価が3,000万円である時、2,000万円の債務超過となります。このような状態で無限責任社員が死亡した場合、債務超過額の2,000万円のうち死亡した無限責任社員の負担すべき持分に応ずる部分を被相続人の債務として、相続財産の評価額から債務控除することができます。
3.死亡退社による持分の払い戻しは「みなし配当課税」に注意!
定款に出資持分の相続についての定めがない場合、無限責任社員が死亡したことによる退社において、相続人や一般の承継人はその持分を相続することができません。死亡した社員の持分払戻請求権を相続し、その後、社員全員の同意を得て持分払戻請求権を出資として合名会社に参加することになります。
この時に気を付けなくてはいけないことは、死亡した社員の持分が持分払戻請求権に転換された時点で、みなし配当が発生するということです。みなし配当は課税の対象となるため、合名会社はみなし配当に対して源泉徴収をしなければなりません。
持分払戻請求権の相続税評価は、実際に払い戻しを受けた金額からみなし配当に係る源泉徴収税額を控除した額となります。
4.まとめ
合名会社の出資の方法は、定款に出資持分の相続の定めがあるかないかで評価の方法が異なります。合名会社の社員は無限責任社員であるため、債務超過の場合は、超過分を被相続人の相続財産の価格から債務控除することができます。一定の相続税対策にもなる方法なので、上手に利用したいところですね。
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