自社株納税猶予制度の再整理

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自社株納税猶予制度の再整理 -2017/12/12-

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近年、中小企業の事業承継に注目が集まっており、税制面からもそれをサポートする動きが出てきています。

この記事では、税理士が知っておくべき事業承継税制の再整理と注意点を解説していきます。

1.自社株納税猶予の特例の概要

事業承継税制という言葉からはイメージがしにくいかもしれませんが、その内容は自社株式を後継者に移転した際に係る相続税・贈与税の税負担の軽減及び免除のことを指します。

ざっくりというと、同族会社を経営する父親が代表をし、かつ株式を保有していた場合、その後継者である子供に事業を引き継がせようとする場合、代表という地位だけではなく、その株式も移転を行います。

しかし株式の移転する場合には、生前における移転であれば贈与税、相続による移転であれば相続税が生じ、事業会社の価値次第では莫大な贈与税・相続税の負担が生じてしまい、次世代への円滑な事業移転の妨げとなってしまいます。

この税負担を軽減し、次世代への事業の移転を進めようというのが事業承継税制の概要です。

事業承継税制は、自社株を相続したまたは贈与された後継者に対して、自社株にかかる相続税または贈与税の納税を猶予する制度です。この特例の適用は、先代経営者、後継者、対象会社、事業継続性などの要件を満たすことが必要となります。

(1)「納税猶予」だが納税は事実上免除される

はじめにお伝えしたいのが、「納税猶予」という言葉の意味です。

猶予というと税金を納めるのが先延ばしになるだけのイメージがあると思いますが、実際には「納税免除」と同じ意味と考えていただいて問題ありません。最初に納税猶予を受けることができれば、そのまま納税免除となることが出来る制度設計となっています。

納税猶予を考える上では、

①最初の申告で納税猶予を受ける要件に該当すること
②納税猶予が取り消される要件に該当しないこと

二点が重要になります。このあとそれぞれの要件について解説しますので、注意してください。

また贈与税の納税猶予はその納めるべき贈与税の全額が猶予されますが、相続税の納税猶予は納めるべき相続税の全額が猶予されるわけではありません。

相続税では、後継者が相続により取得したの株式に係る相続税の80%が納税猶予されます。

ただし、相続開始前から後継者が既に保有していた株式を含めてその会社の発行済議決権株式の3分の2が上限です。

少しわかりづらいので、計算式で表すと下記のようになります。

後継者が相続により取得する株式数をA、相続開始直前での後継者保有株式数をB、発行済株式数をCとすると、

納税猶予の対象となる株数

【ケース1】 A+B≧C×2/3の場合 ⇒ C×2/3
【ケース2】 A+B<C×2/3の場合 ⇒ A

となります。

(2)贈与税と相続税をトータルして軽減

自社株の納税猶予には、贈与税に対する特例と相続税に対する特例がありますが、これらの特例は次のような考えのもとで一体の制度になっています。

①基本として相続税の納税猶予の特例がある。(措法第70条の7の2)
②次世代への事業の早期移転を促進するため贈与税の納税猶予の特例がある。(措法第70条の7)
③後継者の死亡又は実際に相続が起こることにより、贈与税の納税猶予が解消され相続税の納税猶予が開始する。(措法第70条の7の3及び4)

相続税の納税猶予の特例は、後継者の事業経営を保護育成する目的から、一定額以外の部分について納税を猶予・免除しています。

さらに、次世代への株式の早期移転を促す目的から、贈与税についても納税猶予の特例が定められています。

先代経営者である贈与者が死亡したときは、贈与税の納税は免除され、引き続き相続税の納税猶予の特例の対象になります。

制度を一体のものにすることで、自社株式を相続で引き継いだか生前贈与で引き継いだかにかかわらず、納税の猶予・免除が受けられることになります。

2.自社株式の贈与税の納税猶予の特例

 生前に後継者を定めて自社株式を贈与する場合には、贈与税の納税猶予の特例が適用できます。自社株式の贈与にかかる贈与税は、贈与者が亡くなるまで納税が全額猶予されます。

ただし、相続税と同様に特例の対象となる株数は、贈与前から後継者が既に保有していたが株数を含めて、発行済株式数の3分の2が上限となります。

(1)贈与税の納税猶予の特例を適用するための要件

贈与税の納税猶予の特例を適用するためには、贈与者、受贈者、自社株式の発行会社のそれぞれに要件があります。

▲贈与者(先代経営者)の要件▲

先代後継者が下記の要件に該当すること
①過去に代表権を有していた
②贈与時において代表権を有していない
③贈与前に先代(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

▲受贈者(後継者)の要件▲

贈与時において、後継者が下記の要件に該当すること
①代表権を有している
②20歳以上
③役員経験が3年以上
④贈与後に後継者(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

▲会社の要件▲

会社が下記の要件に該当すること
①都道府県知事の認定を受けた中小企業者
②非上場会社(特定特別関係会社も同様)
③従業員が1人以上(一定の外国株式等を保有している場合には5人以上)
④風俗営業会社以外の会社(特定特別関係会社も同様)
⑤資産管理会社以外の会社
⑥特定特別関係会社が中小企業者に該当する会社
⑦売上がゼロを超える、黄金株を発行していないなどの会社

▲事業継続要件▲

贈与税の申告期限から5年間は以下の要件を満たすこと
①非上場株式を譲渡等しないこと
②後継者が代表権を有していること
③後継者が筆頭株主であること
④雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
⑤上場企業、風俗営業会社に該当しないこと
⑥資産保有型会社等に該当しないこと

▲そのほかの要件▲

①贈与税の申告期限までに上記①から③の要件につき経済作業大臣の認定を受けていること
②納税猶予税額及びその利子税相当の担保を提供すること

(2)贈与者・受贈者のどちらかの死亡で納税は免除される

贈与税の納税猶予の特例では、贈与者・受贈者のどちらかが亡くなった場合には猶予されていた税額が免除され、贈与税を納めなくてもよくなります。

贈与者が死亡したときは、自社株式を相続したとみなして、相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

3.自社株式の相続税の納税猶予の特例

自社株式の贈与税の納税猶予を受けていて贈与者が亡くなった場合は、贈与された自社株式は相続したとみなされ、相続税の課税対象になります。この場合は、相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

自社株式の贈与税の納税猶予を受けていなくても、自社株式を相続して事業を引き継げば相続税の納税猶予の特例を適用することができます。

(1)相続税の納税猶予の特例を適用するための要件

相続税の納税猶予の特例を適用するためには、被相続人、相続人、自社株式の発行会社のそれぞれに要件があります。

 ▲被相続人(先代経営者)の要件▲

先代経営者の要件
①過去に代表権を有していた
②相続直前に先代(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

 ▲相続人(後継者)の要件▲

後継者の要件
①死亡日の翌日から5年間、代表権を有している
②相続後に後継者(筆頭株主)とその特別関係者が50%超の議決権を有している

 ▲会社の要件▲

会社が下記の要件に該当すること
①都道府県知事の認定を受けた中小企業者
②非上場会社(特定特別関係会社も同様)
③従業員が1人以上(一定の外国株式等を保有している場合には5人以上)
④風俗営業会社以外の会社(特定特別関係会社も同様)
⑤資産管理会社以外の会社
⑥特定特別関係会社が中小企業社に該当する会社
⑦売上がゼロを超える、黄金株を発行していないなどの会社

▲事業継続要件▲

相続税の申告期限から5年間は以下の要件を満たすこと
①非上場株式を譲渡等しないこと
②後継者が代表権を有していること
③後継者が筆頭株主であること
④雇用の8割以上を5年間平均で維持すること
⑤上場企業、風俗営業会社に該当しないこと
⑥資産管理会社に該当しないこと

▲そのほかの要件▲

①相続開始後8ヶ月以内に申請をし、経済作業大臣の認定を受けていること
②納税猶予税額及びその利子税相当の担保を提供すること
③都道府県庁へ継続要件を維持していることなどを報告する「年次報告書」の提出(相続後5年間)
④税務署へ年次報告書の確認書等を添付した「継続届出書」を提出(相続後5年間は年1回、5年経過後は3年に1回)

(2)相続人が死亡すれば納税は免除される

自社株式の納税猶予の特例では、次の場合に猶予されていた税額が免除され、相続税を納めなくてもよくなります。

①相続人(後継者)が死亡したとき
②5年経過後に、会社が破産又は特別精算したとき
③5年経過後に、後継者が次世代の後継者に自社株式を贈与したとき

③のように、自社株式を相続した相続人が更に次世代の後継者に生前一括贈与したときは、その後継者が贈与税の納税猶予を受けることができます。

 4.自社株式の納税猶予の特例についての注意点

この章では、自社株式の納税猶予の特例に関して、主に注意しなければいけない点をご紹介します。

(1)相続税の納税猶予の特例を適用するための注意点

⑴相続による場合のスケジュールの確認

相続税の納税猶予を受けるためには、申告期限である10ヶ月のみを意識してはいけません。

具体的には下記の期日にも注意しましょう。

①相続発生時;後継者が取締役に就任していること
②相続開始から5ヶ月目;後継者が代表者に就任及び中小企業経営承継円滑化法による相続認定申請基準日(相続開始時と比べて従業員数が20%以上減少しないこと)
③相続開始からは8ヶ月目;都道府県知事による中小企業経営承継円滑化法に基づく認定期限
④相続開始から10ヶ月目;相続税の申告期限

(2)贈与税の納税猶予の特例を適用するための注意点

⑴贈与税の納税猶予を受けた場合の打ち切りリスク

上記で説明したとおり、納税猶予の適用を受けるためには、さまざまな要件がありますが、特に注意しなければならないのが、事業継続要件です。

もし、これらの要件に該当しないことになった場合には納税猶予が打ち切られ、贈与税の本税及び利子税の納付が必要となります。自社株式の評価額次第では、税負担が多額となることもあります。

しかし雇用確保などは、将来における経営環境の変化も影響しますので確実性を持つことは難しいでしょう。

なお、平成29年の税制改正において猶予税額の計算を相続時精算課税にて行うことが可能となりました。要件に不確定要素がある以上、打切りリスクを考慮して相続時精算課税も検討してみましょう。

⑵贈与におけるスケジュールの確認

贈与におけるスケジュールでは都道府県知事への認定申請期限に注意しましょう。期限は贈与年の翌年1月15日となります。

なお、申請書類作成上の基準日は、原則として贈与年の10月15日なのですが、同日後の贈与については贈与日が基準日となりますので注意しましょう。

(3)税理士として事業承継税制を顧問先に適用するための注意点

 ⑴納税猶予制度は、申告後も継続届出書の提出など、継続的な関与が必須です。申告書提出後も会社のモニタリングが必要となり、税理士の負担も大きいものになります。制度の途中で顧問先が税理士を変えてしまい継続届出書の提出が漏れてしまったといったことがないように、関与先には報酬面でも納得していただいたうえで継続的に関与していく覚悟が税理士にも求められます。

 5.まとめ

 以上、自社株式の納税猶予の特例についてお伝えしました。自社株式の納税猶予の特例は、相続人が引き続き事業を行うことを前提に、相続税と贈与税が事実上免除される制度です。

上記でご説明したとおり、自社株式の納税猶予制度は、次世代へ移転する全発行済み株式の3分の2を対象に、贈与の場合には全額、相続税額の8割までを納税猶予の対象としていることとなります。つまり相続の場合には相続した株式全体にかかる相続税のうち53%しか猶予されないこととなります。

しかし2017年12月2日の日本経済新聞にて、集中的に世代交代を促すことを目的として今後10年間に事業承継した場合には、上記が制限を「全株式を対象として100%の納税猶予」されると報道がありました。

実際にどのように税制改正に盛り込まれるかは未定ですが、国として事業承継を税制面からバックアップする方針であることは間違いありません。

税理士としては、継続的なモニタリングが必要になることや適用要件の判断ミスにより納税猶予が打ち切られてしまうなど税理士側の責任リスクが多い制度ではありますが、中小企業の事業承継が社会問題となっている昨今、事業承継税制の知識が税理士に必須になることは間違いなさそうです。

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