不整形地補正率の計算方法(求め方)と相続の際の注意点

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相続税申告のためには、土地の正しい評価が必要です。

土地にはさまざまな形や特徴がありますが、今回は不整形地の評価をする際に適用される不整形地補正率の求め方をわかりやすく解説します。あわせて、不整形地の評価でよくある疑問にもお答えします。

1.不整形地とは?

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不整形地とは、整形地(正方形や長方形など)ではない、いびつな形をした土地のことです。

不整形地は、建物を建てる際に敷地が有効利用できなかったり、建築方法の制約があったりする場合もあり、評価額は一般的に低くなります。

不整形地の例には、次のようなものがあります。

  • 角地(隅切り地)
  • 三角地
  • 旗竿地(L字型の土地)
  • 台形・平行四辺形の土地
  • 境界がギザギザ(のこぎり刃状)になっている土地

2.土地の評価方法

相続税申告における土地(宅地)の評価方法には、路線価方式倍率方式があります。

主に市街地にある宅地は路線価方式で評価し、それ以外の宅地は倍率方式で評価します。

2-1.路線価方式

路線価方式は、国税庁が定める路線価を使って宅地の価額を評価する方法です。

次の算式で宅地の価額を評価します。

宅地の相続税評価額=路線価×補正率×面積(㎡)

路線価は市街地や住宅地の道路ごとに定められ、その道路に面する宅地の1㎡あたりの価額を表します。国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表で調べることができます。

(参考)
路線価の発表は毎年7月1日-最新の動向と路線価を使う3つの場面とは
路線価と実勢価格の違いを税理士が解説-相続・贈与税の節税ケースも紹介

補正率は、土地の形状によって宅地の価額を調整する割合のことです。

宅地の奥行距離に応じて「奥行価格補正率」で調整するほか、不整形地の評価では「不整形地補正率」を使用します。不整形地補正率の求め方は次の章で解説します。

なお、宅地が二つ以上の道路に面するときは、「側方路線影響加算率」や「二方路線影響加算率」で価額を加算する調整を行います。

(参考)
奥行価格補正率とは?求め方や特殊な土地の事例をわかりやすく紹介
側方路線影響加算率が相続税に与える影響と相続税算出までのステップ
二方路線影響加算率が必要な土地と具体的な計算例を税理士がやさしく解説

2-2.倍率方式

倍率方式は、国税庁が定める一定の倍率を固定資産税評価額にかけて宅地の価額を評価する方法です。

次の算式で宅地の価額を評価します。

宅地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率

倍率は、国税庁ホームページの路線価図・評価倍率表で調べることができます。

土地の形状や接道状況による影響は固定資産税評価額に織り込まれているため、倍率方式では補正率による調整は行いません。

3.不整形地補正率の求め方

不整形地は整形された土地に比べて利用価値が低いため、相続税評価額を減額する調整を行います。

路線価方式で不整形地の価額を評価する場合は、不整形地補正率を使用します。

不整形地補正率は1.00から0.60の範囲で定められ、数値が小さいほど評価額は減少します。

不整形地の評価方法を式で表すと次のようになります。

宅地の相続税評価額=整形地である場合の評価額×不整形地補正率

評価する土地に応じた不整形地補正率は次の手順で求めます。

  • 【STEP1】地積区分表でA~Cを判定
  • 【STEP2】かげ地割合を求める
  • 【STEP3】不整形地補正率表に当てはめる

(参考)不整形地補正率で土地の評価が下がる!土地を引き継ぐ人必見の評価方法と具体例

3-1.【STEP1】地積区分表でA~Cを判定

不整形地補正率は、土地の面積の区分(地積区分)と不整形の程度(かげ地割合)に応じて定められます。

まず、地積区分表を参照して、土地の地区区分と面積から、地積区分がA、B、Cのどれに該当するかを判定します。

【例】普通住宅地区にある300㎡の宅地は、地積区分「A」と判定されます。

3-2.【STEP2】かげ地割合を求める

地積区分が判定できれば、次にかげ地割合を求めます。

不整形地の評価では、下の図の土地Bのように、道路に垂直に交わる直線を含み対象の土地を囲む整形地を想定します。この整形地を「想定整形地」といいます。

想定整形地のうち、対象の不整形地以外の部分を「かげ地」といいます。

かげ地割合とは、想定整形地の面積に対するかげ地の面積の割合のことで、次の算式で求められます。

【例】土地Bの面積が300㎡、想定整形地(赤線の部分)の面積が540㎡の場合、かげ地割合は44%となります((540-300)÷540=0.444…(小数第三位以下は切り捨て))。

3-3.【STEP3】不整形地補正率表に当てはめる

最後に、不整形地補正率表に土地の地区区分と地積区分、かげ地割合を当てはめて、不整形地補正率を求めます。

【例】普通住宅地区にある地積区分「A」の土地で、かげ地割合が44%である場合は、不整形地補正率は0.85となります。

不整形地補正率表

地区区分 高度商業地区、繁華街地区、普通商業・併用住宅地区、中小工場地区 普通住宅地区
地積区分 A B C A B C
かげ地割合
10%以上 0.99 0.99 1.00 0.98 0.99 0.99
15%以上 0.98 0.99 0.99 0.96 0.98 0.99
20%以上 0.97 0.98 0.99 0.94 0.97 0.98
25%以上 0.96 0.98 0.99 0.92 0.95 0.97
30%以上 0.94 0.97 0.98 0.90 0.93 0.96
35%以上 0.92 0.95 0.98 0.88 0.91 0.94
40%以上 0.90 0.93 0.97 0.85 0.88 0.92
45%以上 0.87 0.91 0.95 0.82 0.85 0.90
50%以上 0.84 0.89 0.93 0.79 0.82 0.87
55%以上 0.80 0.87 0.90 0.75 0.78 0.83
60%以上 0.76 0.84 0.86 0.70 0.73 0.78
65%以上 0.70 0.75 0.80 0.60 0.65 0.70

4.不整形地のその他の補正

不整形地の評価では不整形地補正率のほか、土地の形状に応じて間口狭小補正率、奥行長大補正率を適用する場合があります。

4-1.間口狭小補正率

評価する不整形地の間口が狭い場合は、間口狭小補正率による補正も行います。

この場合は、不整形地補正率×間口狭小補正率で求めた数値を不整形地補正率とします。ただし、この数値は0.60を下限とします。

(参考)
間口狭小とは
土地の価格を最大1割減額!絶対に確認したい間口狭小補正率を使った土地評価の3STEP

4-2.奥行長大補正率

評価する不整形地の間口に対して奥行が極端に長い場合は、不整形地補正率を適用せず奥行長大補正率で補正することができます。

この場合は、間口狭小補正率×奥行長大補正率で求めた数値で補正します。

(参考)
奥行長大とは
最大10%まで評価減が可能! 奥行長大補正率を使った土地評価の計算方法

5.不整形地の評価でよくある疑問

最後に、不整形地の評価でよくある疑問についてお答えします。

5-1.不整形地が屈折路に面するとき想定整形地はどのように取るか?

不整形地が「く」の字型に折れ曲がる屈折路に面する場合は、想定整形地の取り方にいくつかの方法があります。

  •  屈折路のいずれかの部分に垂直に交わる直線をもとに想定整形地を定める
    (下の図の左側と中央の例)
  •  不整形地が路線に面する両端を結ぶ直線をもとに想定整形地を定める
    (屈折路の外側に面する場合のみ。下の図の右側の例)

屈折路に面する不整形地の評価では、上記のいずれかの方法で定めた想定整形地のうち、最も面積が小さいものを使用します

上の図の例では、最も面積が小さい「A路線を基礎とした想定整形地」を使用します。

5-2.不整形地の奥行距離の求め方は?

不整形地は奥行の長さが一定ではないため、平均的な奥行距離を求めます。

具体的には、不整形地の面積÷間口距離で求めた数値を奥行距離とします。ただし、想定整形地の奥行距離を限度とします。

次の図のような不整形地(面積500㎡、間口距離20m)では、奥行距離は下記のように判定します。

  • 不整形地の面積÷間口距離で求めた数値:500㎡÷20m=25m
  • 想定整形地の奥行距離:50m

不整形地の面積÷間口距離で求めた数値(25m)は想定整形地の奥行距離(50m)より短いため、この土地の奥行距離は25mとなります。

一方、次の図のような不整形地(面積750㎡、間口距離5m)では、奥行距離は下記のように判定します。

  • 不整形地の面積÷間口距離で求めた数値:750㎡÷5m=150m
  • 想定整形地の奥行距離:50m

不整形地の面積÷間口距離で求めた数値(150m)は想定整形地の奥行距離(50m)より長いため、この土地の奥行距離は50mとなります。

5-3.隅切り(角切)もかげ地になるか?

交差点を通行しやすいように土地の角の部分を削る場合があります。これを隅切りや角切などと呼びます。

隅切りがある土地も不整形地として評価します。この場合は、隅切りで削られた部分がかげ地になります

ただし、不整形地の間口距離は隅切りがない場合の距離とします。

下の図の土地の間口距離は、道路に面しているbの長さではなく、隅切りがない場合のaの長さとなります。

5-4.不整形地補正率で補正しない場合もあるのか?

不整形地であっても次の図のような帯状の部分がある場合は、不整形地補正率による補正は行いません

このような形状の土地は、帯状の部分があることでかげ地割合が過大になります。

不整形地補正率で補正すると、帯状の部分がない場合に比べて面積が増えるにもかかわらず評価額が下がり、不合理な評価になってしまいます。

したがって、帯状の部分とその他の部分に分けて価額を評価し、それらの合計を不整形地の評価額とします。

6.不整形地の評価は相続税専門の税理士に相談を

不整形地の評価では、不整形地補正率によって土地の価額を下げることができます。

ただし、不整形地の評価はかなり複雑で、想定整形地の取り方によって計算結果が大きく変わってしまいます。土地の形状によっては不整形地補正率による補正が認められない場合もあります。

不整形地の評価でお困りの場合は、相続税を専門とする税理士法人チェスターにぜひご相談ください。

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