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[相続税]延納の担保ができない8つの財産

延納の場合、延納額が100万円を超えるケースでは、国に担保を提供しなければなりません。

担保物件とは万一、年賦が滞ってしまった場合に、その担保物件を処分して未納額の徴収に充てるためのものです。
当然延納額よりも価値が低いものは担保不足となりますし、処分に差し障りのある財産は許可が下りません。

担保物件は最終的に市場で換価することを前提としているため、売れないような財産では困りますので、国は一定の基準を持っています。

では、どんな物件の場合に国はダメだと言ってくるのでしょうか。今回は延納の場合の担保不適格財産について見ていきます。

延納の担保にできない財産

延納の担保に使えない財産をピックアップしました。

1.法令上、担保権の設定又は処分が禁止されているもの

抵当権を設定できない不動産

不動産の場合、抵当権の設定登記をすることで国は第三者に対して対抗することができます。

また、所有者がその物件を売却しようと考えたときに担保の設定がされていないと、いつ売却されてしまうか国はわかりません。

ですから抵当権を設定することができない不動産や処分が禁止されている財産は担保物件としては不適格となります。

遺族国庫債券などの国債

国債は一般的に最有力な担保物件ですが、国債の中でも遺族国庫債券等一部の国債には担保制限がありますので、不適格となります。注意してください。

2.違法建築や土地の違法利用のための建物除去命令等がされているもの

法治国家において違法に建てられた建物や違法に利用されている不動産は国として看過することはできません。

例えば、建蔽率や容積率が基準を超えている場合がこれに当たります。

また、建物で建築基準法に則って建築されていなかったり、あとで増築した物件等が法令上の制限に抵触している場合がありますので、注意が必要です。

3.共同相続人の間で所有権の争いがあるもの

所有者の間で争いがある財産は権利の帰属に問題がありますので、権利の帰属が確定していない財産は、担保物件として不適格であることは言うまでもありません。

4.共有不動産で共有者全員から担保の承諾が得られないもの

共有不動産の場合には、自分が持っている持分だけを担保に設定することは制度上可能ではありますが、一般にはあまり行われていません。

持分だけを処分することは著しく処分に際して不利益を生じることとなるためです。

延納の担保に提供する予定がある場合には、それが共有である時には共有者全員から承諾を予め取っておく必要があります。

5.売却できる見込みがないもの

例えば道路付がない無道路地などは近隣の所有者以外に買い手がありませんので、流通性に欠けていますので、対象にはなりません。

万一の場合に換価して未納額を回収するために担保を取得するわけですから売却できる見込みがないものは、対象外です。

6.担保価値の少ないもの

担保財産の価格は掛け目を考慮した後の価額が、延納額に一回目の利子税額の3年分に相当する額を加算した金額以上であることが必要です。

例えば、延納額が100万円、利子税額の3年分が10万円だとすると、担保財産額×掛目が110万円以上にならないといけません。

掛け目は後述しますが、8割だとすると、担保財産額×0.8>110万円とならないといけないので、は最低でも担保財産額は137.5万円以上ないといけない計算になります。

上記で3年分の利子税を加算しているのは、換金処分するに必要な期間の延滞税や処分費用等をあらかじめ想定している訳です。

ただし、ここであげた例はあくまでイメージですので、100万円の延納の場合でも利子率がその財産に占める不動産の割合等によって1.2%?6.0%まで何段階にも分かれているため、実質の計算はより複雑です。

この実質の不動産割合から利率を決めて計算する場合はさらに細かくご説明する必要がございますので、別途記事でご説明いたします。

7.担保の存続期間が延納期間よりも短いもの

延納期間は不動産の割合にもよりますが、20年などの長期間に及びます。

ですから、担保物件の存続期間がそれよりも短い期間の場合には途中で担保がなくなってしまいます。

担保の性格上、万一の場合に換価するための財産を提供するわけですから、当然延納最終期日前に価値が無くなってしまうものは対象になりません。

自動車や機械設備など耐用年数が短いものは注意が必要です。

8.第三者又は法定代理人等の同意が必要な場合に、その同意が得られないもの

第三者が所有している物件を担保とする場合には、同意が必要になります。

担保物件の掛け目

担保物件の時価はそれぞれの財産の種類ごとに評価基本通達によって評価した金額になります。

土地でしたら路線価や固定資産税評価額をベースに算定します。

そしてそれぞれの財産によって掛け目がありこれを乗じます。国債のみ額面の100%、その他の財産は時価のおおよそ7?8割が目安です。

  国 債   :額面
  有価証券  :時価の8割以内かつ予想される価格変動を考慮した額
  土 地   :時価の8割以内で適当と認める額
  建 物   :時価の7割以内で担保提供期間中に予想される価値の減耗等を考慮した額
  保証人の保証:滞納となった場合にその保証人から徴収することができると見込まれる額

なお、利付地方債で利払期日未到来の利札を切り取ってしまうと不適格財産になります。

株式については、上場株式は問題ないですが、取引相場のない株式については、相
続等で取得した財産のほとんどが取引相場のない株式であり、その株式以外に適当
な財産がない場合または他の財産が他の債務の担保になっていて延納の担保に適
さない場合に該当することが必要です。

担保提供の仕方

不動産

登記制度がある不動産や工場財団等については法務局で抵当権の設定登記を行うことで担保手続が完了します。

建物や船舶等の場合には、火災保険を付保することが一般です。担保に提供する場合には火災保険の付保が必須となります。火事で消滅したら火災保険で回収することを想定しているため、火災保険の保険請求権について質権(保険証券を占有し優先的に弁済を受ける権利)の設定をすることが必要です。保険の満期が来た場合にはこの手続きを継続する必要があります。

国債・地方債

国債については必要事項を記載した請求書を日本銀行に、地方債については地方債を登録した登録機関に請求書を提出することで担保権登録が行われます。

株式

株式は供託所に供託書を提出し日本銀行に有価証券と併せ提出します。

審査の期間

税務署での延納の審査は通常原則として3か月です。物件が多数ある場合は6か月以内です。(積雪の影響がある場合は別途期間あり)

通常この期間中に税務署からの回答はありますが、もし許可や却下がこの期間に行われなかった時は、許可があったものとみなすこととなっています。

それでは、次回は物納の場合の管理不適格物件について解説していきます。

相続税の納税・延納・物納のすべて

相続税は相続の発生から10ヶ月以内に一括現金での支払いが原則です。

相続した財産が予想以上に多かったり、現金の用意が難しいなど期限内での支払いが難しい場合は、延納・物納を使い、相続税の支払いを先延ばしにする制度があります。

しかし、延納・物納を使うためには”ある”条件を満たしていなければいけません。

あなたが延納・物納を確実に使うために必要な情報や判断方法を全てご紹介しています。

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監修者 荒巻善宏



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