チェスター相続税実務研究所
更正の請求はできるのに減額更正してもらえない場合
2019/07/10
平成29年7月、国税庁から「歩道状空地の用に供されている宅地」の取扱いを変更する情報が公表されました。
財産評価基本通達24((私道の用に供されている宅地の評価))における「歩道状空地」の用に供されている宅地の取扱いについて
これは、最高裁判所平成29年2月28日判決が、従来の国税庁の取扱いと異なる判断をしたことに起因します。
本件情報において、国税庁は、以下のとおり更正の請求が可能であることを教示しています。
「上記2の取扱いは、過去に遡って適用されますので、これにより、過去の相続税又は贈与税(以下「相続税等」といいます。)の申告の内容に異動が生じ、相続税等が納めすぎになる場合には、国税通則法の規定に基づき所轄の税務署に更正の請求をすることにより、当該納めすぎとなっている相続税等の還付を受けることができます。 」
ここでいう「国税通則法の規定」とは、同法23条2項3号→国税通則法施行令6条1項5号であり、その理由が生じた日(本件情報が発遣された日)の翌日から起算して2か月以内であれば更正の請求が可能でした。
しかし、先ほどの教示のなお書きとして以下の説明があり、たとえ上記の期限内に更正の請求をしたとしても、減額更正処分を受けることができないケースがあります。
なお、法定申告期限等から既に5年(贈与税の場合は6年)を経過している相続税等については、法令上、減額できないこととされていますのでご注意ください。
ここでいう「法令上、減額できない」とは、法定申告期限から5年を経過してしまうと、国税通則法70条1項による更正処分を受けることができず、同法71条1項2号の「その他これらに準ずる政令で定める理由」について規定する国税通則法施行令30条及び同令24条4項が、同令6条1項5号を除外していることを意味します。
つまり、納税者は、法定申告期限から5年を経過しても後発的事由による更正の請求をすることは可能ですが、税務署長はそれを受けて減額更正処分をすることができないのです。
納税者は、他の事案の最高裁判決がいつのタイミングで言い渡されるかをコントロールできず、たまたま法定申告期限から5年を経過したタイミングであったにもかかわらず、減額更正処分を受けることができないというのは酷なようにも思えます。
これについて、大阪地裁平成28年8月26日判決は、「国税通則法施行令6条1項5号は、同項の他の号と異なり、課税標準等又は税額等の計算の基礎となった事実に変動は生じていないこと」を理由に、同令30条及び同令24条4項が、同令6条1項5号を除外していることを適法と判断しました。
上記のなお書きは、歩道状空地の取扱いに限らず、国税通則法施行令6条1項5号の規定によって更正の請求が可能となる場面が今後発生した場合においても納税者を拘束することになり、法定申告期限から5年を経過していると、納税者に落ち度がなくても救済されないことになります。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。