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夫婦ともに老人ホームへ入所していた場合の「空き家譲渡特例」や「特定居住用宅地等の特例」の適用可否について

2023/09/06

近年、核家族化や高齢化社会のもと、夫婦が相次いで老人ホーム等へ入所し、そこで相次いで死亡した場合、子が相続した自宅を譲渡した際に、いわゆる「空き家譲渡特例(措法35③)」は使えるのでしょうか。夫婦が老人ホームへ入居した順番によっては頭を悩ませるところだと思いますので、小規模宅地の特例とともに整理してみました。

【前提事実】

  • 家族関係:夫、妻、子一人(別居・別生計・賃貸住宅居住)
  • 自宅土地建物は夫が単独所有。
  • 自宅建物の建築・登記状況については「被相続人居住用家屋等」の条件を満たす。
  • 自宅は夫婦が老人ホームに入所して以降、空き家となっていたが、子が一定の維持管理を行っていた(措令23⑦)
  • 夫婦が入所した老人ホームについては一定施設の要件を満たす(措令23⑥)

【ケース1】配偶者→被相続人 の順に老人ホームへ入所した場合

時系列整理:

R2.1夫婦二人暮らし
R2.1妻がA施設入所(入所時要介護3)
R2.1R3.5夫が一人暮らし
R3.5夫がB施設入所(入所時要介護3)
R4.6.1夫が死去(相続開始時要介護5) 一次相続
R5.2.1妻が死去(相続開始時要介護4) 二次相続

※夫婦ともに施設入所後は一度も自宅に戻っていない

(一次相続)

①一次相続で、自宅土地建物を配偶者又は子が相続して売却する場合、空き家譲渡特例(措法35③)は使えるか

回答:空き家譲渡特例を適用できる

解説:妻はR2.1月から一定施設に入所し、生活の拠点は施設に移転しているため、夫が一定施設に入所した直前(R3.5月)においては、夫以外に自宅に居住をしていた者がなく、かつ夫は施設入所時において要介護認定を受けているため、空き家特例の条件を満たし適用可である。

②自宅土地に対し、特定居住用宅地として小規模宅地等の特例が使えるか

回答:自宅土地建物を配偶者が相続により取得した場合は使えるが、子が相続により取得した場合は使えない

解説:夫は相続開始の直前において、要介護認定を受け、一定の施設に入所しているため、自宅は特定居住用宅地等に該当する(措令40の2②)。夫の居住用宅地については、配偶者は無条件で特例が適用できる。子については、相続開始時に被相続人の配偶者がいることから、いわゆる家なき子特例(措法69の4➂ロ)の適用は不可である。

➂妻が相続により取得した自宅土地建物を売却した場合、居住用3000万円特別控除(措法35①)が使えるか

回答:使えない

解説:配偶者が取得し、自己の居住用財産として住まなくなってから3年以内に譲渡をした場合であっても、配偶者は自宅の所有者として居住した期間が無いため居住用財産の特別控除の適用は不可である(平成元年3月28日最高裁判決(税資169号1260頁))

(二次相続)

① 一次相続で自宅土地建物を配偶者が取得し、その後、二次相続で子が取得して売却する場合、空き家譲渡特例は使えるか

回答:使えない

解説;妻は夫から相続により自宅土地建物を取得しているが、その時点で妻はすでに老人ホームに入所しており、その後、一度もその家屋に居住していない。すなわち妻は自宅土地建物の「所有者として居住」していないことから、二次相続における「被相続人の居住用家屋」には該当しない。

なお、このことは条文に規定されているものではないが、上記「平成元年3月28日最高裁判決」において、措法35①の適用判断がなされており、空き家譲渡特例(措法35③)は同じ35条の規定であるため、この最高裁判決の判断に依ることになろう。

また、妻は一定施設に入所した直前において、本人以外に夫が自宅土地建物に居住をしていたことからも適用不可である。

② 自宅土地に対し、子は特定居住用宅地として小規模宅地等の特例が使えるか

回答:子が家なき子特例(措法69の④ロ)の要件を満たしていれば使える

解説:妻は相続開始直前において一定の施設に入所し、かつ要介護認定を受けているため、自宅は特定居住用宅地等に該当する。なお、施設入居前の所有要件はない。かつ、相続開始時において同居していた法定相続人がいないため、子が他の賃貸住宅居住要件を満たせば家なき子特例の適用が可能である。

【ケース2】被相続人→配偶者 の順に老人ホームへ入所した場合

時系列整理:

時系列整理:

R2.1夫婦二人暮らし
R2.1夫がA施設入所(入所時要介護3)
R2.1R3.5妻が一人暮らし
R3.5妻がB施設入所(入所時要介護3)
R4.6.1夫が死去(相続開始時要介護5) 一次相続
R5.2.1妻が死去(相続開始時要介護4) 二次相続

※夫婦ともに施設入所後は一度も自宅に戻っていない

(一次相続)

①一次相続で自宅土地建物を配偶者又は子が相続し、その後売却する場合、空き家譲渡特例は使えるか

回答:使えない

解説;相続開始時においては空き家ではあるものの、夫が一定施設に入所した直前において、妻が自宅土地建物に居住していたことから適用不可である。

【ケース2】(一次相続)②以降の状況と回答については、【ケース1】と同じ

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