チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用可否について
2025/04/30
相続人である丙は、
被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた者(同居親族)に該当するとして、
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用が受けられますか?
前提条件
- 被相続人:甲(夫)
- 相続人:乙(妻)、丙(長女)
- 相続開始日:令和7年1月
- 被相続人自宅:A市B町1丁目100番の土地及び家屋番号100-1の家屋(すべて被相続人所有、以下「本件自宅」といいます)
- 本件自宅と同一敷地内にある家屋番号100-2(丙及び丙の夫が居住)には、玄関、キッチン、浴室及び洗濯機がなく、トイレのみ設置あり(丙及び丙の夫は、本件自宅のキッチン、浴室及び洗濯機を使用)
- 被相続人と丙は、生活費、水道光熱費をそれぞれで拠出(生計を一にするとは認められません)
昭和49年3月:被相続人が本件自宅取得
(被相続人、乙、丙が居住開始(後に丙の夫も同居))
平成19年3月:丙の夫が、本件自宅敷地内に家屋番号100-2を新築
(丙の夫から被相続人に地代の支払いなし)
(以後、丙及び丙の夫は家屋番号100-2に居住)

丙は、被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた者(同居親族)に該当し、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用が受けられると考えます。
なお、被相続人は、家屋番号100-2を居住の用に供していたとは認められませんので(加えて、丙は、生計一親族に該当しないため)、本件における特例対象宅地等は、被相続人の居住の用に供されていた本件自宅の敷地部分のみに限られます(家屋番号100-2の敷地部分は対象外)。
理由
本件自宅及び家屋番号100-2の使用状況を総合勘案しますと、以下のようにいえます。
- 丙は、平成19年3月以降、家屋番号100-2で起居(寝食のうちの「寝」の部分)していますが、その他の生活基盤(寝食のうちの「食」、「洗面」、「入浴」及び「洗濯」の部分)は引き続き本件自宅の設備を使用
- 丙の生活基盤の多くの部分は、本件自宅にあったとみることが相当
したがって、丙は、措置法69条の4第3項2号イに規定する同居親族に当たり、その他の要件を満たす限り、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けられると考えます。
根拠法令等
租税特別措置法69条の4①、③
租税特別措置法施行令40条の2④
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