チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用可否について②
2025/05/09
相続人である母は、居住継続要件を満たし、
被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた者(同居親族)に該当するとして、
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用が受けられますか?
前提条件
- 被相続人:長男
- 相続人:母
- 被相続人自宅:Y市所在の居住用家屋及びその土地(以下「本件自宅」といいます。)
- 被相続人と母は、被相続人所有の本件自宅に同居
- 母が、本件自宅を相続し、居住継続したが、高齢(90歳)のため、被相続人の相続税の申告期限前(R7.4)に老人ホームへ入居(住民票移転なし)
- 本件自宅は、母が老人ホームへの入所後も、いつでも居住可能な状態のまま

相続人である母は、居住継続要件を満たすものとして、被相続人の居住の用に供されていた1棟の建物に居住していた者に該当すると考えます。
理由
本件自宅は、母が老人ホームから退所した場合、いつでも居住可能な状態のまま維持されており、母にとっては、老人ホームへの入所という特殊事情が解消したときは、起居することになると認められる家屋といえます。
そのため、居住継続要件を満たすものとして、小規模宅地等の特例を適用し得ると考えます。
参考
1. 平成25年度の税制改正の趣旨
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等の場合であっても、①被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと及び②その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等(以下「老人ホーム等」といいます。)に入居又は入所(以下「入居等」といいます。)していたことという要件を満たすときには、その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等(その被相続人の特別養護老人ホーム等に入居等後に、事業の用又は新たに被相続人等(被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた親族をいいます。以下同じです。)以外の者の居住の用に供されている場合を除きます。)については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に当たることとされました。
2.国税庁HP:質疑応答事例 「特定居住用宅地等の要件の一つである「相続開始時から申告期限まで引き続き当該建物に居住していること」の意義」
【照会要旨】
被相続人甲と同居していた相続人Aは、被相続人の居住の用に供されていた宅地を相続しましたが、相続税の申告期限前に海外支店に転勤しました。なお、相続人Aの配偶者及び子は、相続開始前から相続税の申告期限まで引き続き当該宅地の上に存する家屋に居住しています。
この場合、当該宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等に該当しますか。
【回答要旨】
相続人Aの配偶者及び子の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造及び設備の状況からみて、当該建物がAの生活の拠点として利用されている家屋といえる場合、すなわち、転勤という特殊事情が解消したときは、家族と起居を共にすることになると認められる家屋といえる場合については、甲に係る相続開始の直前から申告書の提出期限までAの居住の用に供していた家屋に該当するものとみるのが相当ですから、Aの取得した宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等に該当します。なお、相続人Aの配偶者及び子が、相続税の申告期限前に当該宅地の上に存する家屋に居住しないこととなった場合には、当該宅地は特定居住用宅地等である小規模宅地等に該当しません。
引用:国税庁HP「特定居住用宅地等の要件の一つである「相続開始時から申告期限まで引き続き当該建物に居住していること」の意義」
3.国税庁HP:質疑応答事例 「入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」
【照会要旨】
被相続人は相続開始前に病気治療のために入院しましたが、退院することなく亡くなりました。被相続人が入院前まで居住していた建物は、相続開始直前まで空家となっていましたが、退院後は従前どおり居住の用に供することができる状況にありました。この場合、その建物の敷地は、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当しますか。【回答要旨】
病院の機能等を踏まえれば、被相続人がそれまで居住していた建物で起居しないのは、一時的なものと認められますから、その建物が入院後他の用途に供されたような特段の事情のない限り、被相続人の生活の拠点はなおその建物に置かれていると解するのが実情に合致するものと考えられます。したがって、その建物の敷地は、空家となっていた期間の長短を問わず、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します。
引用:国税庁HP「入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」
4.根拠法令等
租税特別措置法第69条の4第1項、第3項第2号
租税特別措置法施行令第40条の2第2項、第3項
租税特別措置法通達69の4-7の3
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