チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用可否について③
2025/05/20
1階部分は被相続人の居住用、2階部分は別の親族の居住用(使用貸借)として使われており、この建物は区分所有登記済みです。
敷地については、2階の居住者が庭(敷地の一部)を使用できないことが前提です。
そのうえで、敷地全体を建物の床面積割合で按分せず、庭部分すべてを被相続人の居住用宅地等とみなして、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用することはできますか?
前提条件
- 被相続人:父
- 相続人 :長女
- 被相続人は建物(1階及び2階)及びその敷地をすべて所有、当該建物及びその敷地は、相続により同居親族の要件を満たす長女が取得
- 被相続人は自宅1階で長女と同居、2階には別の親族が居住(家賃の支払いなし)
- 1階と2階とは内部で行き来ができない構造となっており、区分所有登記済
- 敷地内には1階居住者のみが使用する庭がある
(外階段から直接敷地外に出る建物構造となっているため、2階居住者は庭を使用できない)

庭部分が、すべて被相続人の居住用宅地等に該当するものとして、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用することはできません。
庭部分を含む土地全体の面積に、建物全体の床面積に占める2階部分を除いた床面積の割合を乗じて算出した被相続人の居住用宅地等に該当する部分につき、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用することになります。
理由
措置法69条の4第1項では、以下のように規定されています。
当該相続の開始の直前において、当該相続に係る被相続人の居住の用に供されていた宅地等で財務省令で定める建物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの
参考:措置法69条の4第1項|e-Gov 法令検索
そのため、特例の対象となる宅地等は、本件建物の敷地のうち、措置令40条の2第4項に規定する、下記の部分になります。
これらの宅地等のうちに当該被相続人等の法第六十九条の四第一項に規定する事業の用及び居住の用以外の用に供されていた部分があるときは、当該被相続人等の同項に規定する事業の用又は居住の用に供されていた部分(当該居住の用に供されていた部分が被相続人の居住の用に供されていた一棟の建物(建物の区分所有等に関する法律第一条の規定に該当する建物を除く。)に係るものである場合には、当該一棟の建物の敷地の用に供されていた宅地等のうち当該被相続人の親族の居住の用に供されていた部分を含む。)に限る
参考:措置令40条の2第4項|e-Gov 法令検索
上記規定からして、庭部分の面積のすべてを特例の対象となる宅地等とすることはできません。
参考
第六十九条の四 個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族(第三項において「被相続人等」という。)の事業(事業に準ずるものとして政令で定めるものを含む。同項において同じ。)の用又は居住の用(居住の用に供することができない事由として政令で定める事由により相続の開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていなかつた場合(政令で定める用途に供されている場合を除く。)における当該事由により居住の用に供されなくなる直前の当該被相続人の居住の用を含む。同項第二号において同じ。)に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいう。同項及び次条第五項において同じ。)で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるもの(特定事業用宅地等、特定居住用宅地等、特定同族会社事業用宅地等及び貸付事業用宅地等に限る。以下この条において「特例対象宅地等」という。)がある場合には、当該相続又は遺贈により財産を取得した者に係る全ての特例対象宅地等のうち、当該個人が取得をした特例対象宅地等又はその一部でこの項の規定の適用を受けるものとして政令で定めるところにより選択をしたもの(以下この項及び次項において「選択特例対象宅地等」という。)については、限度面積要件を満たす場合の当該選択特例対象宅地等(以下この項において「小規模宅地等」という。)に限り、相続税法第十一条の二に規定する相続税の課税価格に算入すべき価額は、当該小規模宅地等の価額に次の各号に掲げる小規模宅地等の区分に応じ当該各号に定める割合を乗じて計算した金額とする。
※下線は税理士法人チェスターによる
根拠法令等
租税特別措置法69条の4➀
租税特別措置法施行令40条の2④
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