チェスター相続税実務研究所
相続税の2割加算の対象範囲について(相続税の計算)
2025/07/10
私の曾祖父(甲)は令和7年に亡くなりました。
私(A)は、亡くなった曾祖父(甲)のひ孫であり、祖父(乙)の養子となっておりました。
祖父(乙)は、曾祖父(甲)の相続開始日以前に死亡しておりますので、祖父(乙)の養子である私(A)は、乙の代襲相続人となります。
この場合、私(A)は、曾祖父(甲)の相続税申告において相続税額の加算(相法18)の適用対象となりますか?
前提条件
- 被相続人:甲(曾祖父)、令和7年死亡
- 被相続人(甲)の相続開始以前に死亡した子:乙(甲の子、Aの養親)
- 相続人:丙(甲の子)、丁(甲の子)、戊(乙の子(代襲相続人))、A(乙の養子(代襲相続人))
- Aは乙との間で令和元年に養子縁組
Aは、曾祖父(甲)の相続税申告において相続税額の加算(相続税法18)の適用対象になりません。

解説
被相続人甲の相続開始時、相続人である子乙は既に死亡していたため、被相続人甲の相続人は、子丙、子丁、代襲相続人戊及び代襲相続人Aとなります。
なお、Aは、被相続人甲のひ孫の地位に基づけば被相続人甲の三親等の血族となりますが、子乙の養子の地位に基づけば、被相続人甲の二親等の血族となり、子乙の代襲相続人にもなります。
相続税法18条1項によれば、被相続人の一親等の血族には、「当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡したため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含む」とされております。
これを本件に当てはめますと、「被相続人甲の直系卑属(乙)が被相続人の相続開始以前に死亡した」ため、「代襲して相続人となった被相続人の直系卑属(戊及びA)」は、「被相続人の一親等の血族」に含まれることとなります。
したがって、ご照会のAは、「被相続人の一親等の血族」に含まれることとなりますので、曾祖父(甲)の相続税申告において相続税額の加算(相続税法18)の適用対象にならないと考えられます。
根拠法令等
相続税法(抄)
(相続税額の加算)
第十八条 相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人となった当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその百分の二十に相当する金額を加算した金額とする。2 前項の一親等の血族には、同項の被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となっている場合を含まないものとする。ただし、当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人となっている場合は、この限りでない。
相続税法基本通達(抄)
(養子、養親の場合)
18-3 養子又は養親が相続又は遺贈により被相続人たる養親又は養子の財産を取得した場合においては、これらの者は被相続人の一親等の法定血族であるので、これらの者については法第18条の相続税額の加算の規定の適用がないのであるから留意する。ただし、被相続人の直系卑属が当該被相続人の養子となっている場合(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失ったため、代襲して相続人になっている場合を除く。)の当該直系卑属については、相続税額の加算の規定が適用されるのであるから留意する。
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