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松本特定評価会社(株特)回避事件判決(東京高裁)について

2025/09/05

東京高裁は、令和7年6月19日、原処分庁が、国税庁長官の指示(財産評価基本通達 総則6項適用)を受けた価額で本件法人(資産管理会社)の株式(非上場)(以下「本件株式」)を評価し、課税処分を行ったことの適否が争われた事件において、本件課税処分を適法とする判決(以下「本判決」)を下しました(納税者側敗訴、上告及び上告受理申立て)。
(参考:TAINS Z888-2742)
本判決は、専門誌などでは「松本特定評価会社(株特)回避事件」と呼ばれているようですが、本判決の内容を読みますと、裁判所は、相続人等が行った本件株式について株式等保有特定会社の株式の評価(評価通達189)が適用されないようにするための行為のみを問題視したのではないように思えますが、この点どうなのでしょうか?

〔事実関係(イメージ)〕

松本特定評価会社(株特)回避事件の事実関係

裁判所は、相続人等が行った本件株式について株式等保有特定会社の株式の評価(評価通達189)が適用されないようにするための行為のみを問題視したのではないと考えます。

理由

裁判所は、被相続人が保有していた約40億円の資金が、本件法人(資産管理会社)が行った増資により本件法人に移転したことを前提に、本件法人の株式の評価上、当該約40億円の資金が、評価通達の定める評価方法によっては適切に評価されないこと等を問題視しました。

その上で、被控訴人らの相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件新株発行等のような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と被控訴人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるということができると判断されたと考えます。

なお、そのことは、裁判所が、本件相続開始時の本件株式の時価を純資産価額方式(※)によって評価した価額とすることを相当としたことからも明らかと考えます。

(※)純資産価額方式とは、会社の総資産や負債を原則として相続税の評価に洗い替えて、その評価した総資産の価額から負債や評価差額に対する法人税額等相当額を差し引いた残りの金額により評価する方法です。
(参考:国税庁「No.4638 取引相場のない株式の評価」)

裁判所の判断等

1.本判決における裁判所が行った事実認定

証拠(乙8)によれば、被控訴人■■は、本件相続開始の約3か月前である平成25年7月12日、本件証券会社を訪れ、もうすぐ■■歳になる本件被相続人が株式売却により約40億円の預金を有しているとして、本件被相続人に係る相続税の節税対策の相談をし、同月19日には、被控訴人■■の自宅を訪れた本件証券会社の担当者に対し、①節税したい、②子世代よりは孫や被控訴人■■の妻に相続又は贈与したいとの基本的な希望を表明し、担当者が■■■■を活用した節税対策を説明したのに対して強い関心を示し、同月29日には、本件証券会社を再訪し、担当者から、同社が作成した資料に基づき、■■■■に対して20億円又は40億円の増資を行った場合には、相続税額が概算で約16億円又は10億円となる旨の説明を受け、その後も、■■■■が「株式保有特定会社」〔評価通達189(2)〕及び「比準要素数1の会社」〔評価通達189(1)〕に該当しないための方策を含め、本件新株発行等を用いた相続税減税スキーム及び相続における相続人による本件株式の現金化について、担当者と電話や電子メールを通じて連日のように協議を重ね、同年8月9日に同スキームを実行した事実が認められる。本件新株発行等に至る上記認定の経過によれば、被控訴人■■が、本件新株発行等が近い将来発生することが予想される被相続人からの相続において被控訴人らの相続税の負担を減じさせるものであることを知り、かつ、これを期待して、あえて本件新株発行等を行ったことは明らかというべきである。

そして、証拠(乙8、17)及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人■■を除く被控訴人らは、本件被相続人に係る相続税対策を被控訴人■■に任せていたものと認められるから、本件新株発行等は、被控訴人■■を除く被控訴人らの少なくとも黙示的な承諾の下で行われたものというべきであり、被控訴人らは、租税負担の軽減をも意図して本件新株発行等を行ったといえる。

これに対し、被控訴人らは、本件新株発行等は、■■■■の経営支配権を維持するために、■■■■創業家の資産管理会社である■■■■において資金をプールすること等を構想・計画して行われたもので、租税回避を主な目的とするものではないと主張する。

しかし、被控訴人■■と本件証券会社の担当者との間の相談内容(乙8)を占めているのは、本件被相続人に係る相続税の節税対策がほとんどであって、その中には、■■■■の経営支配権を維持するために■■■■において資金をプールするなどという計画の存在は見受けられない一方、相続における相続人による本件株式の現金化の方策が含まれているから、被控訴人らの主張は採用できない。仮に、被控訴人■■が内心においてそのような計画を有していたとしても、そのことは、被控訴人らが租税負担の軽減をも意図して本件新株発行等を行ったとの判断を左右するものではない。

2.本判決における裁判所の判断

以上によれば、本件においては、被控訴人らの相続税の課税価格に算入される財産の価額について、評価通達の定める方法による画一的な評価を行うことは、本件新株発行等のような行為をせず、又はすることのできない他の納税者と被控訴人らとの間に看過し難い不均衡を生じさせ、実質的な租税負担の公平に反するというべき事情があるということができる。

したがって、本件において、被控訴人らの相続税の課税価格に算入される財産の価額を評価通達の定める方法により評価した価額を上回る価額によるものとすることには、合理的理由があると認められるから、それが租税法の一般原則としての平等原則に違反するということはできない。

引用:TAINS Z888-2742

参考

財産評価基本通達(抄)

(この通達の定めにより難い場合の評価)
6 この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。

(純資産価額)
185 179((取引相場のない株式の評価の原則))の「1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)」は、課税時期における各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額(この場合、評価会社が課税時期前3年以内に取得又は新築した土地及び土地の上に存する権利(以下「土地等」という。)並びに家屋及びその附属設備又は構築物(以下「家屋等」という。)の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によって評価するものとし、当該土地等又は当該家屋等に係る帳簿価額が課税時期における通常の取引価額に相当すると認められる場合には、当該帳簿価額に相当する金額によって評価することができるものとする。以下同じ。)の合計額から課税時期における各負債の金額の合計額及び186-2((評価差額に対する法人税額等に相当する金額))により計算した評価差額に対する法人税額等に相当する金額を控除した金額を課税時期における発行済株式数で除して計算した金額とする。ただし、179((取引相場のない株式の評価の原則))の(2)の算式及び(3)の1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)については、株式の取得者とその同族関係者(188((同族株主以外の株主等が取得した株式))の(1)に定める同族関係者をいう。)の有する議決権の合計数が評価会社の議決権総数の50%以下である場合においては、上記により計算した1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)に100 分の80を乗じて計算した金額とする。

(注)

  1. 1株当たりの純資産価額(相続税評価額によって計算した金額)の計算を行う場合の「発行済株式数」は、直前期末ではなく、課税時期における発行済株式数であることに留意する。
  2. 上記の「議決権の合計数」及び「議決権総数」には、188-5((種類株式がある場合の議決権総数等))の「株主総会の一部の事項について議決権を行使できない株式に係る議決権の数」を含めるものとする。

(特定の評価会社の株式)
189 178((取引相場のない株式の評価上の区分))の「特定の評価会社の株式」とは、評価会社の資産の保有状況、営業の状態等に応じて定めた次に掲げる評価会社の株式をいい、その株式の価額は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。

 なお、評価会社が、次の(2)又は(3)に該当する評価会社かどうかを判定する場合において、課税時期前において合理的な理由もなく評価会社の資産構成に変動があり、その変動が次の(2)又は(3)に該当する評価会社と判定されることを免れるためのものと認められるときは、その変動はなかったものとして当該判定を行うものとする。

(1)(省略)

(2)株式等保有特定会社の株式

課税時期において評価会社の有する各資産をこの通達に定めるところにより評価した価額の合計額のうちに占める株式、出資及び新株予約権付社債(会社法第2条((定義))第22号に規定する新株予約権付社債をいう。)(189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))において、これらを「株式等」という。)の価額の合計額(189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))において「株式等の価額の合計額(相続税評価額によって計算した金額)」という。)の割合が50%以上である評価会社(次の(3)から(6)までのいずれかに該当するものを除く。以下「株式等保有特定会社」という。)の株式の価額は、189-3((株式等保有特定会社の株式の評価))の定めによる。

(以下省略)

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