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小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用可否について⑥

2025/11/17

私の父(以下「被相続人」といいます)は、介護保険法に規定する要介護認定を受け、居住していた自宅を離れて特別養護老人ホーム(老人福祉法第20条の5)に入所しました。
被相続人が施設に入所した後、長男である私とその家族は、空き家となった被相続人の自宅(以下「本件自宅」といいます。)に入居しました(それ以前は、長男の所有家屋に居住していたが、本件自宅への入居後、所有家屋は譲渡)。
その後、父は施設から病院に転院し、更に他の病院に転院した先で亡くなりました。
私は、本件自宅を相続しますが、この場合に小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることができますか?

前提条件

  • 被相続人:甲(父)
  • 相続人:長男
  • 相続開始日:R6.9
  • 被相続人の配偶者は以前に死亡しており、被相続人は独居であった
  • R3.5から長男家族が本件自宅へ入居、居住を開始したが、長男が本件自宅において被相続人と同居した期間はない

(時系列)

  • H25年05月~  被相続人が本件自宅から施設に入所
  • H27年10月~  被相続人が施設から病院に入院
  • R03年05月~  長男家族が本件自宅に入居
  • R03年09月    長男が元の自宅を処分
  • R05年09月〜 被相続人が病院を転院(自宅には戻らず)
  • R06年09月    被相続人が病院にて死亡

〔イメージ〕 事例説明図

被相続人の施設への入所後、本件自宅は、一旦、空き家となった後、別居していた長男及びその家族の居住の用に供されたことから、本件自宅の敷地は、被相続人の居住の用に供されていた特例対象宅地等に該当しないことになります。
したがって、あなたは、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることができません。

判断理由

本件自宅は、相続の開始の直前において、被相続人ではなく、長男及びその家族の居住の用に供されていたことになります。

小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の要件の一つとして、被相続人が所有していた建物の敷地が、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することが求められます(措法69の4①)。

ただし、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等の場合であっても、①被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと(注1)及び②その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等(以下「老人ホーム等」といいます。)に入居又は入所(以下「入居等」といいます。)していたことという要件を満たすときには、その被相続人が老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当するものとみなされます。

ただし、被相続人が老人ホーム等に入居等した後に、被相続人と生計を一にしていた親族以外の者が、「その被相続人が老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供していた宅地等」を居住の用に供してしまった場合には、その適用はありません。

参考

『老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例』

【照会要旨】
被相続人は、介護保険法に規定する要介護認定を受け、居住していた建物を離れて特別養護老人ホーム(老人福祉法第20条の5)に入所しましたが、一度も退所することなく亡くなりました。

被相続人が特別養護老人ホームへの入所前まで居住していた建物は、相続の開始の直前まで空家となっていましたが、この建物の敷地は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当しますか。

【回答要旨】
照会のケースにおける、被相続人が所有していた建物の敷地は、相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。

(理由)
相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていなかった宅地等の場合であっても、①被相続人が、相続の開始の直前において介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたこと(注1)及び②その被相続人が老人福祉法等に規定する特別養護老人ホーム等(以下「老人ホーム等」といいます。)に入居又は入所(以下「入居等」といいます。)していたことという要件を満たすときには、その被相続人により老人ホーム等に入居等をする直前まで居住の用に供されていた宅地等(その被相続人の老人ホーム等に入居等後に、事業の用又は新たに被相続人等(被相続人又はその被相続人と生計を一にしていた親族をいいます。以下同じです。)(注2)以外の者の居住の用に供されている場合を除きます。)については、被相続人等の居住の用に供されていた宅地等に該当します。

(注1)被相続人が介護保険法等に規定する要介護認定等を受けていたかどうかは、その被相続人が、その被相続人の相続の開始の直前において要介護認定等を受けていたかにより判定します。
したがって、老人ホーム等に入居等をする時点において要介護認定等を受けていない場合であっても、その被相続人が相続の開始の直前において要介護認定等を受けていれば、老人ホーム等に入居等をする直前まで被相続人の居住の用に供されていた建物の敷地は、相続の開始の直前においてその被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当することになります。

(注2)被相続人と入居等の直前において生計を一にし、かつ、その宅地等の上に存する建物に引き続き居住している被相続人の親族を含みます。

引用:国税庁「老人ホームへの入所により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」〔質疑応答事例〕
※下線等は筆者による

【関係法令通達】
租税特別措置法第69条の4第1項
租税特別措置法施行令第40条の2第2項、第3項
租税特別措置法通達69の4-7の3

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