チェスター相続税実務研究所
夫婦間での居住用不動産の贈与による相続税の生前対策
2026/01/09
私は、現在、自分の持家で妻と2人で暮らしています(婚姻期間は40年)。
知り合いの税理士さんにお願いして私の資産総額を試算してもらいましたら約6,000万円と算出されました。
不動産価格や株式相場が上昇基調にあるため、自分が亡くなった時の相続税が不安です。
私が亡くなり、その後妻が亡くなっても、長男には相続税がかからないようにしてあげたいと思っています。何か良い方法があるでしょうか?
前提条件
- 被相続人:甲(夫)
- 相続人:乙(妻)、丙(長男)(基礎控除額3,000万円+600万円×2人=4,200万円)
- 相続財産:23区内の居住用マンション、上場株式、預貯金等(見込遺産総額:約6千万円)
「おしどり贈与」をしておくと、長男が相続税を支払わずに父母の遺産を相続できる可能性があります。
- あなたが、現在お住まいになっている居住用マンションの持分(2,110万円相当)を妻に贈与し、おしどり贈与(※1)を適用した場合、贈与税額0円で、遺産総額を6,000万円から3,890万円に減らすことが可能となります。
- その上で、あなたに相続が発生した場合(一次相続)、長男が、夫の遺産の大半を相続しますと、遺産総額(約3,890万円、ただし、大幅な地価上昇等がない前提)は、基礎控除額(3,000万円+600万円×2人=4,200万円)を下回りますので、相続税はかかりません(※2)。
- そして、妻に相続が発生した場合(二次相続)、長男が、妻の遺産(贈与された居住用マンションの共有持分と妻の固有財産)をすべて相続したとしても、妻の遺産総額が、相続税の基礎控除額(3,000万円+600万円×1人=3,600万円)を下回れば、結果、長男は相続税を支払うことなく、父と母の遺産を承継することが可能となります。
(※1)婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できる特例(相法21の6①)。
(※2)妻は、夫から生前に贈与された財産がありましたが、おしどり贈与の適用を受けた財産は、夫の相続開始時、夫の相続財産に加算する必要はありません(相続税法19条)。
解説
1. おしどり贈与の概要
婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産または居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、贈与税の申告をすることにより基礎控除額110万円のほかに最高2,000万円まで控除(配偶者控除)できます(相続税法21条の6)。
国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
2.おしどり贈与の要件
(1)夫婦の婚姻期間が20年を過ぎた後に贈与が行われたこと(注1)
(2)配偶者から贈与された財産が、居住用不動産又は居住用不動産(注2)を取得するための金銭であること
(3)贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与により取得した居住用不動産または贈与を受けた金銭で取得した居住用不動産に、贈与を受けた者が現実に住んでおり、その後も引き続き住む見込みであること
(注1)おしどり贈与は同じ配偶者からの贈与については一生に一度しか適用を受けることができません。
(注2)「居住用不動産」とは、専ら居住の用に供する土地もしくは土地の上に存する権利または家屋で国内にあるものをいいます。
参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
3. おしどり贈与の手続き
おしどり贈与の適用を受けるためには、一定の書類(※)を添付して、おしどり贈与の適用を受けるための贈与税の申告をする必要があります。
(※)(1)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の謄本または抄本
(2)財産の贈与を受けた日から10日を経過した日以後に作成された戸籍の附票の写し
(3)居住用不動産の登記事項証明書その他の書類で贈与を受けた人がその居住用不動産を取得したことを証するもの(土地・建物の登記事項証明書については、贈与税の申告書に不動産番号を記載することなどにより、その添付を省略することができます)
参考:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
まとめ
生前対策を工夫することで、親から子への円滑な遺産承継が実現します。
税理士法人チェスターは、お客様に応じた生前対策をご提案できますので、この機会に、まずは初回面談から始めてみませんか。
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