チェスター相続税実務研究所
障害者控除の適用可否について
2026/02/10
私の父が亡くなりました。
私の母(特別障害者に該当)は、父の相続により生命保険金(生命保険金の非課税枠の範囲内)のみを取得、遺産分割協議により相続財産は何も取得しないことになりました。
このような場合に、母の障害者控除の引き切れない部分の金額を、私(長男)の相続税額(200万円)から差し引くことができますか。
生命保険金(生命保険金の非課税枠の範囲内)のみを取得した場合であっても、母は、相続又は遺贈により財産を取得した者に該当しますので、障害者控除の適用を受けることが可能となります。
したがって、母の障害者控除の引き切れない部分の金額を、あなた(長男)の相続税額から差し引くことができます。
〔イメージ〕

前提条件
- 被相続人:父
- 相続人:母及び長男
- 相続開始日:R7.12
- 母は身体障害者1級、相続開始日時点で74歳(過去の相続で障害者控除の適用なし)
解説
(1)制度の概要
障害者控除は、昭和47年6月法律第78号により障害者福祉の増進のために設けられた制度です。
障害者控除は、相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の相続税法19条の3第1項に規定する相続人に該当し、かつ、障害者である場合には、その者については、第15条から前条までの規定により算出した金額から10万円(その者が特別障害者である場合には20万円)にその者が85歳に達するまでの年数(当該年数が1年未満であるとき、又はこれに1年未満の端数があるときは、これを1年とする。)を乗じて算出した金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする旨規定されております(相法19の4①)。
(2)適用要件
障害者控除の適用を受けられる者は、次の要件に該当する者となります(相法19の4①)。
- 相続又は遺贈により財産を取得した個人で,その財産を取得した時においてこの法律の施行地に住所を有するものであること
- 相続税法19条の3第1項に規定する相続人(非居住無制限納税義務者を除く。以下同じ。)であること
- 相続又は遺贈により財産を取得した時に障害者であること
- 85歳未満であること
(3)相続又は遺贈により財産を取得した者
相続税法3条1項は、「次の各号のいずれかに該当する場合においては、当該各号に掲げる者が、当該各号に掲げる財産を相続又は遺贈により取得したものとみなす」とありますので、同項1号に規定する死亡保険金のみを取得した者も「相続又は遺贈により財産を取得した者」(相法19の4①)に含まれます。
したがって、本件の母の取得財産は、みなし相続財産である生命保険金のみで、かつ、受け取った生命保険金も相続税法12条1項5号に規定する保険金の非課税限度額の範囲内ということでしたが、生命保険金のみを取得した母も、相続又は遺贈により財産を取得した者に該当しますので、障害者控除の適用が可能ということになります。
(4)相続税法19条の3第1項に規定する相続人
相続税法19条の3第1項に規定する相続人とは、相続を放棄した者があった場合には、その放棄がなかったものとした場合の相続人とされています。
したがって、相続を放棄した者にも、この障害者控除は適用されます。
(5)扶養義務者の相続税額から控除できる障害者控除額
障害者控除額が、その障害者の算出相続税額(贈与税額控除、配偶者の税額軽減又は未成年者控除がある場合は、その控除後の税額)より多くなり、その障害者の算出相続税から控除しきれない場合には、その控除しきれない部分の金額は、その障害者の扶養義務者で、同一の被相続人から相続や遺贈によって財産を取得した者の相続税額から控除できます(相法19の4③)。
この場合の扶養義務者とは、その障害者の親族で、次に掲げる者とされています(相基通1の2-1)。
- 配偶者並びに民法第877条の規定による直系血族及び兄弟姉妹
- 家庭裁判所の審判を受けて扶養義務者となつた三親等内の親族
- これらの者のほか、家庭裁判所の審判を受けてはいないが、その障害者と生計を一にしている三親等内の親族
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