チェスター相続税実務研究所
相続人間で相続分譲渡(有償)があった場合の未分割申告の方法について
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2026/06/12
相続人間で相続分譲渡(有償)が行われた場合で、申告期限までに遺産分割協議が成立しなかったときは、当初の相続税申告(未分割申告)をどのようにしたら良いか教えてください。
共同相続人間で相続分譲渡(有償)が行われた場合、相続分を譲り受けた相続人の相続分は、「自らの相続分」に「譲り受けた相続分」を加えた相続分が、相続税法第55条に規定する「民法の規定による相続分」となります。
また、相続分を有償譲渡して譲渡代金を取得した相続人は、代償金を取得した場合と実質的に変わらないため、相続分を譲渡した相続人は代償金を取得し、相続分を譲り受けた相続人は代償金を支払った場合と同様に相続税申告を行うことになります。
前提条件
- 被相続人甲の相続人は、配偶者乙、兄弟姉妹の代襲相続人9名(合計10名)
- 代襲相続人の多くが遠方に居住していたこと、相続人の人数が多く全員が集まって遺産分割協議を行うことが困難であったこと、代襲相続人丙が遺産分割協議の内容に難色を示したことから、代襲相続人丙以外の代襲相続人(8名)は、配偶者乙へ相続分を法定相続分相当額で有償譲渡
- 相続分譲渡に係る譲渡代金は、預金の解約等が可能となった時点で支払うことで合意
- 配偶者乙と代襲相続人丙との間で遺産分割協議を継続するも、申告期限までに遺産分割協議は成立せず、当初申告は未分割申告
【イメージ】

解説
相続税法第55条は、
相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によつてまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第九百四条の二(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従つて当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。
引用:e-GOV法令検索「相続税法 第五十五条」
と規定しています。
この規定の趣旨は、遺産の分割が行われない限り、相続税の課税ができないとすると、遺産の分割を恣意的に遅延して相続税の課税を遅らせることができることになり、遺産分割を早期に行った者とそうでない者との間で相続税の負担について不公平が生ずることになるからと説明されています(DHCコンメンタール相続税法)。
また、最高裁平成5年5月28日第三小法廷判決は、「民法の規定による相続分」について、「原審の判断は、相続税法五五条本文にいう「相続分」には共同相続人間の譲渡に係る相続分が含まれるとした点を含め、正当として是認することができる。」と判示しておりますので、共同相続人間で相続分の譲渡があった場合には、譲り受けた相続分が相続税法第55条に規定する「民法の規定による相続分」に含まれると解されます。
したがって、本件において遺産分割は未了ですが、相続人乙は、譲り受けた相続分を含む相続分の割合に基づき相続税申告を行うことが可能です。
また、具体的な計算においては、有償譲渡の対価を「代償金」と同様に取り扱い、譲渡人は「対価の額」を取得、配偶者は「譲渡を受けた相続分に相当する財産の価額から対価の額を差し引いた額」を取得したものとして当初の相続税申告(未分割申告)を行うことになります。
参考
相続税法第55条
最高裁判決(平成5年5月28日第三小法廷判決)
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