チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用可否について⑩
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2026/09/03
被相続人(甲)(以下「甲」)が亡くなりました。
甲は、生前、相続人である配偶者と長男と住居Aで同居していましたが、甲の体調がすぐれず、甲は入院しました。
甲の入院後、長男は、甲所有の別の土地に、長男名義で新居(住居B)を新築し、完成後、配偶者と長男は、住居Bに転居しました(住居Aの家具等は老朽化していたため、住居Bには持ち込まず、甲が居住していた時の状態のままです。)。
長男は、住居Bへの転居後も、入院中の甲の身の回りの世話、介護、入院費用の負担を全面的に担っていましたが、甲は、住居A及び住居Bのいずれにも戻ることなく、そのまま入院先で亡くなりました。
この場合、住居A、住居Bの敷地について、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)を適用することはできるでしょうか。
① 住居Aについて
住居Aの敷地を配偶者が取得した場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることが可能と考えます。
② 住居Bについて
住居Bの敷地を長男(生計を一にする親族に該当)が取得した場合、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることが可能と考えます。
〔イメージ〕

基本事項
- 被相続人:甲
- 相続開始日:令和8年5月
- 相続人:配偶者、長男、次男
- 居住状況等の経緯:
- ・従前 :住居Aにて甲、配偶者、長男が同居
- ・令和7年3月:甲が入院
- ・令和7年4月:甲所有土地上に長男名義の住居B新築
- ・令和7年5月:配偶者、長男が住居Bへ転居(住居Aの家具等はそのまま)
- ・令和8年5月:甲は住居Bに一度も居住することなく、入院先で死亡
解説
1. 住居Aの敷地への特例適用
被相続人が相続開始前に病気治療のために入院し、退院することなく亡くなった場合、病院の機能等を踏まえれば、被相続人がそれまで居住していた建物で起居しないのは、一時的なものと認められますから、その建物が入院後他の用途に供されたような特段の事情のない限り、被相続人の生活の拠点はなおその建物に置かれていたと解するのが実情に合致するものと考えられます。
したがって、その建物の敷地は、空家となっていた期間の長短を問わず、相続開始直前において被相続人の居住の用に供されていた宅地等に該当します。
参考:国税庁「入院により空家となっていた建物の敷地についての小規模宅地等の特例」
ご質問によれば、甲は、相続開始前に病気治療のために入院し、入院前まで居住していた建物は、退院後も従前どおり居住の用に供することができる状況にあったといえますので、住居Aの敷地は、甲の特定居住用宅地等に該当すると考えられます。
配偶者には、居住継続要件や保有継続要件が課されておりませんので、配偶者が住居Aの敷地を相続した場合は、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることが可能と考えます。
2.住居Bの敷地への特例適用
住居Bの敷地は、甲の特定居住用宅地等には該当しませんが、住居Bには、甲と生計を一にする長男が居住していましたので、生計を一にする親族の特定居住用宅地等に該当すると考えられます。
したがって、長男が、住居Bの敷地を相続した場合で、居住継続要件や保有継続要件を満たすときは、小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受けることが可能と考えます。
3.実務上の留意点
本特例を適用できる面積は、特定居住用宅地等全体で330㎡が限度です。
本件のように2か所の敷地が特例の要件を満たした場合には、税負担の面から相続税の節税効果が最大となるよう、有利な宅地を選択することが重要です。
根拠法令
- 租税特別措置法第69条の4第1項
- 租税特別措置法第69条の4第3項第2号
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