チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例の適用の可否について(配偶者居住権が設定された場合の有利選択)
見つけやすくなります
2026/10/30
父が亡くなりました。
父は、公正証書遺言により、①配偶者居住権を設定し、②配偶者居住権と配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地等を使用する権利(以下「配偶者居住権に基づく敷地利用権」といいます。)を母(配偶者)に、③配偶者居住権の目的となっている建物(所有権)と配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(所有権)を子(同居)に相続させることとしました。
相続税の申告において小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用を受ける場合に注意すべき点があれば教えてください。
小規模宅地等の特例は、要件を満たす複数の宅地等がある場合、特例を適用可能な宅地等を相続等により取得した相続人等の合意により選択適用することが可能です。
したがって、小規模宅地等の特例の適用に当たっては、限度面積要件を満たす範囲で、選択により、配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(所有権)部分を優先適用することも、配偶者居住権に基づく敷地利用権を優先適用することも可能です。
〔イメージ〕

前提条件
- 被相続人:父
- 相続人:母(配偶者)および子(同居)の2名
- 被相続人の自宅(土地・建物)の状況
⇒ 敷地全体の面積が限度面積(330㎡)を超過しており、小規模宅地等の特例の適用に当たっては、取得者間での適用面積の調整が必要 - その他:母(配偶者)および子は、いずれも小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用要件を満たしている
解説
1.小規模宅地等の特例(措置法69の4)の概要
個人が、相続や遺贈によって取得した財産のうち、その相続開始の直前において被相続人又は被相続人と生計を一にしていた被相続人の親族(以下「被相続人等」といいます。)の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等(土地又は土地の上に存する権利をいいます。以下同じです。)のうち一定のものがある場合には、その宅地等のうち一定の面積までの部分(以下「小規模宅地等」といいます。)については、相続税の課税価格に算入すべき価額の計算上、次の表に掲げる区分ごとにそれぞれに掲げる割合を減額します。

2.配偶者居住権が設定されている場合の小規模宅地等の特例(措置法69の4)の適用
小規模宅地等の特例(措置法69の4)の適用対象となる特定居住用宅地等には、配偶者居住権に基づく敷地利用権と配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(所有権)の両方が含まれます(措置法通達69の4-1の2)。
この場合、特定居住用宅地等の限度面積要件(措置法69の4②二)の判定に当たっては、次の算式に基づき計算された面積により判定を行うこととされています。
引用:国税庁「措置法通達69の4-1の2」
3.本件への当てはめ
上記2.のとおり配偶者居住権が設定されていた場合、配偶者居住権に基づく敷地利用権と配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(所有権)は、それぞれ別個の特例対象宅地等として扱うこととされています。
したがって、配偶者居住権が設定されていた場合の小規模宅地等の特例(特定居住用宅地等)の適用に当たり、「配偶者居住権に基づく敷地利用権」と「配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供される土地(所有権)」のどちらを優先して適用面積を割り振るかは、通常の特例適用宅地等(限度面積)の選択と同様、特例適用宅地等を取得した相続人等の合意により選択することが可能です。
実務上の留意点
本件のように特例適用宅地等が複数あり、また宅地等の面積が限度面積を超過しているような場合、誰が取得したどの宅地等(何㎡分)に対し小規模宅地等の特例を適用させるのかは、納付すべき税額に直接影響する重要な事項です。
したがって、土地の評価を適正に行うことはもちろんですが、按分割合による限度面積の算定や有利選択を誤らないよう、事前のシミュレーションが重要となりますので、この点についてもご注意いただくと良いと考えます。
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