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[相続税]物納が認められない財産
物納の要件は、金銭での納付が困難であること、物納財産の順位が定められた順位のものであること、管理処分不適格財産でないこと、所定の期日までに物納の申請がなされていること、だということを前回解説しました。
今回はこの中で管理処分不適格財産とはどういうものかということを中心に説明致します。
管理処分不適格財産
国は金銭に替えて物納を許可しますと、納められた物納財産を換価する手続きに入ります。その際売却に支障がある物件や管理にあたり国に負担が生じるものや公の秩序に反するものは受付しないとの方針があります。
これら処分に支障がある物件を総称して管理処分不適格財産と言っています。不動産を中心に管理処分不適格財産について見ていきましょう。
担保権が設定されていることその他これに準ずる事情がある不動産
不動産に担保が付いていると売却する際支障が生じます。物納を考えている場合にはあらかじめ担保を解除するか別な物件に差し替えてもらうなどしてきれいな状態にしておく必要があります。当然差押登記がされていたり、譲渡担保の目的となっている物件も対象外になります。
権利の帰属について争いがある不動産
権利を主張する者が複数いたり、真の所有者が誰なのか係争中である場合、真の所有者が確定していない恐れがあります。国は係争を嫌いますので賃借権等についての係争を含む争いがある物件は対象外です。
境界が明らかでない土地
隣地との境界が明らかでない土地は対象外ですので注意が必要です。したがって、物納する土地は隣地との境界確認や境界標の設置等生前から予め準備を進めておくことが必要となります。契約面積と登記面積や実測面積が異なっていないことも確認しておきましょう。
隣接する不動産の所有者その他の者との争訟によらなければ通常の使用ができないと見込まれる不動産
隣地の所有者との間で境界の合意がとれていない物件は国が取得してもその隣地との間の境界争いは解決しませんので、このような物件は除かれます。
他の土地に囲まれて公道に通じない土地で民法第210条の規定による通行権の内容が
明確でないもの
道路付けがない土地や建築基準法に基づいての建て替えが出来ない土地については市場価値がありませんので国も換金することができません。隣地所有者等特定の方以外に売却対象にならない資産も対象外になります。
借地権の目的となっている土地で、その借地権を有する者が不明であることその他これに類する事情があるもの
地主さんが土地を借地人に賃貸借している不動産で、借地人の所在が不明の場合借地料の請求や契約の引継ぎ等管理処分に問題が生じますので対象外です。
借地契約は昔からの口約束で契約書がないというケースも多いと思います。契約書は借地面積や借地期間、地代の確認資料となりますので更新時等の機会を通じて整えておきましょう。
他の不動産(他の不動産の上に存する権利を含みます。)と社会通念上一体として利用されている不動産若しくは利用されるべき不動産又は二以上の者の共有に属する不動産
宅地を利用するために必要な私道だけとか著しく狭小で利用価値のない土地、共有
不動産の一部など社会通念上一体として利用されている不動産のうち一部のみという場合も対象外となります。
耐用年数(所得税法の規定に基づいて定められている耐用年数をいいます。)を経過している建物(通常の使用ができるものを除きます。)
固定資産の場合、土地等を除いて時の経過とともに価値が減価していきます。
予めその物件ごとに耐用年数が決められており、耐用期間を超えてしまった物は原則として対象外です。
敷金の返還に係る債務その他の債務を国が負担することとなる不動産
敷金の返還を国が負うこととなる場合対象外になります。預り金、敷金等を精算しておくことが必要です。地代が近隣相場と比べ著しく低い場合や地代の延滞がある場合など国に不利益が及びますので不適格になります。
その管理又は処分を行うために要する費用の額がその収納価額と比較して過大となると見込まれる不動産
土止め対策や土壌汚染などの整備撤去に費用が掛かり国にとって多くの負担が生
じる不動産も対象外です。
公の秩序又は善良の風俗を害するおそれのある目的に使用されている不動産その他社会通念上適切でないと認められる目的に使用されている不動産
風俗営業の目的となっている不動産を国が所有するわけにはいきません。対象外
であることは常識的な範疇かと思います。
引渡しに際して通常必要とされる行為がされていない不動産
すでに取り壊されているのに登記が滅失されていなかったり、廃棄物等の除去が なされていないなど引渡しの要件を具備していないもの。
地上権、永小作権、賃借権その他の使用及び収益を目的とする権利が設定されている不動産で次に掲げる者がその権利を有しているもの
暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第2条第6号に規定する暴力団員又は暴力団員でなくなった日から5年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)暴力団員等によりその事業活動を支配されている者法人で暴力団員等を役員等(取締役、執行役、会計参与、監査役、理事及び監事並びにこれら以外の者で当該法人の経営に従事している者並びに支配人をいう。)とするもの
以上今回は管理処分不適格財産について解説しました。次回は物納の撤回につい
て解説していきます。
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