チェスター相続税実務研究所
境界未確定の測量図の地積が公簿よりも大きい場合
2019/01/18
財産評価基本通達8(地積)は、以下のように定められています。
地積は、課税時期における実際の面積による。
だからといって、あらゆる土地について、実測をした上で申告しなければならないわけではなく、公簿の地積と相違があることが申告までに判明しており、その相違する地積の方が信頼性がより高い場合には、そちらを採用することになります。
(参考)国税庁質疑応答事例「「実際の地積」によることの意義」
それでは、申告する上で公簿の地積を離脱するのは、どのようなケースでしょうか。
❶登記簿作製後に作製された「境界確定が取り交わされた測量図」がある場合
この場合には、近隣の同意が得られていることから、当該測量図に拠るべきでしょうが、通常は、その段階に至る測量図があれば、地積更正までされているはずであり、このケースはあまりないでしょう。
❷登記簿作製後に作製された「境界確定が取り交わされていない測量図」がある場合
「❷-A:境界確定をしようとしたが妥結できずに測量図が残っている場合」「❷-B:売却を検討して現状の地積を試算するために簡易測量した場合」などが考えられます。
この場合は、登記簿記載時点の地積に地積測量図の裏付けがあれば、❷-A・❷-Bがたとえ登記簿作製時点より最近のものであったとしても、公簿の地積を優先するのが妥当でしょう。
これは、「境界確定が取り交わされている」という地積の確度の高さが、課税時期の近接性よりも重視されると考えられるからです。
しかし、登記簿記載の地積が、地積測量図の裏付けのないもの、又は、過去の尺貫法の名残を残すものであれば、たとえ❷-A・❷-Bが境界確定されていないものであったとしても、むしろ、課税時期により近い時点で実際に測量された事実が重視されるのが自然な判断です。
❸建築計画概要書に公簿地積とは異なる地積が記載されている場合
建ぺい率・容積率の算定の必要性から簡易測量がなされ、その地積が建築計画概要書に記載されますが、これが、登記簿作製時点よりも最近のものであれば、上記❷と同様に、建築計画概要書記載の地積を採用しておく方が、税務リスクは最小化すると考えられます。
疑問としては、税務署が、あらゆる宅地について、市町村の建築指導関係部署に臨場して建築計画概要書を閲覧するかという点です。
弊社が市町村の建築指導関係部署に臨場して財産調査する際に、別の事案を調査する税務署の担当官が居合わせる場面は殆どなく、余程、公簿と現況との差に疑問を抱かない限り、少なくとも全件について建築計画概要書の記載地積を確認することは、税務執行の効率性の観点からは考えづらいと考えられます(ちなみに、税務署は固定資産税課税台帳との整合は行っています)。
しかし、税務署が一旦建築計画概要書の閲覧をして、公簿よりも大きい地積が記載されていることを把握すれば、他の調査項目の重要性との比較考量になるものの、議論の余地がない指摘事項になる可能性が高くなりますので、税理士の当初申告段階のあるべき対応としては、建築計画概要書の閲覧は可能な限り実施しておくのが賢明ではないかと考えられます。
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