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チェスター相続税実務研究所

庭園設備の現実的な評価アプローチ

2019/09/11

税理士が財産評価において頭を悩まされる物のひとつに「庭園設備」があります。
庭園設備は、評価通達92(3)に定めがあり、「調達価額(課税時期においてその財産をその財産の現況により取得する場合の価額をいう。)の100分の70に相当する価額によって評価する」とありますが、この調達価額の算定が実務上困難です。

庭園設備といっても、庭であれば何でも評価対象というものではなく、観覧料を徴収できるほどに手入れがなされたものであれば、計上はやむを得ません。
しかし、観覧料を徴収してはいない(公開していない)ものの、かつて事業で成功して財をなした方が造営し、剪定等の維持費用を掛けている庭園設備も見られます。

こういった場合に「評価ゼロ」として良いのかというところが税理士の悩みどころです。
維持費用を掛けるということは、それに価値があることの裏返しであり、税務調査における課税漏れの指摘の根拠事実にもなり得ます。
「庭園設備」として相続税申告書11表に計上するとしても、納税者の納得性が得られ、税務署による否認が難しい評価方針を立てることが難しいのです。

評価通達における「調達価額」を見極めることができるのは、その筋のプロだろうということで、いろんな税理士事務所のホームページに「造園業者に見積もりを取るなどの対応を採ることをお勧めします」という趣旨の記載がありますが、それは、「私たち(税理士)が現実的に用いることができる評価方針が思いつかない」と言っているのと同じです。

また、見積もりを依頼するにしても、仕事にならないのに見積書だけ作らされる業者が、まともに評価すると税務署は考えないかもしれませんし、同時に、「できるだけ安く評価してくれと言われて作成した見積書ではないか」と懐疑的に見ることも考えられます。

弊社において、過去に、以下の前提が成立する前提で、
「直近の年間維持費用(A)×税務上の耐用年数(例:構築物-その他の緑化施設及び庭園:20年)×1/2×70%」
をもって評価したことがあります。

❶課税時期の時点で税務上の耐用年数を経過している。
❷剪定等の維持費用が毎年発生し、その費用が大きく変動することはない。
❸名勝・文化財指定などがされていない(減価償却資産と考えて良い)。

理由としては、

・初期費用については、たとえどれだけつぎ込んだとしても、税務上の耐用年数を経過していれば、課税時期の価値としてはゼロと考え得る(評価通達92(3)は売却価値ではなく取得原価主義ベースで考えている)。

・維持費用を資本的支出と考えても、税務上の耐用年数20年の場合、調達価額は以下に推算される価額を上回ることはない。
A×(19.5/20+18.5/20+・・・・+0.5/20)=A×20×1/2

上記の考え方も、所定の前提に基づく仮定計算でしかないのですが、Aについて過去数年分の数字を精緻に拾うことができれば、納税者が申告によって提示した根拠を覆す(より精度の高い)根拠を税務署が作ることは至難の業ではないでしょうか。

これが最もふさわしい評価方法であるとは限りませんが、評価通達における庭園設備が「取得原価主義ベース」の評価方法であることからすれば、これまで連年の維持費用を掛けてこられたお客様の納得も得やすいでしょう。

もっとも、上記算定プロセスについては、税理士法上の添付書面において詳細に説明することにより、仮定計算とはいえ検討の精緻さを「見える化」するテクニックも必要です。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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