チェスター相続税実務研究所
【未分割の土地に対する小規模宅地等の特例適用について】
2020/05/13
兄弟相続や疎遠となっている相続人等、相続人同士の関係が円満でない場合、遺産分割協議がまとまらず、財産の取得者の決定に時間がかかることがあります。
相続税申告では、申告期限までに財産の取得者が決まらない場合(以下「未分割」)、相続人全員が共有で取得したものとして財産計上します。
また、未分割のまま二次相続が発生し、二次相続の申告期限においても依然として財産の取得者が決まらない場合には、一次相続の未分割財産は、二次相続の相続税申告においても財産計上が必要となります。
上記の未分割財産のうちに、小規模宅地等の特例の適用を受けようとする土地がある場合には、どのような点について注意が必要でしょうか。
1.未分割の場合の小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、その適用の前提として、(1)または(2)に該当する必要があります。
(1)申告期限までに財産の分割が確定していること。
(2) ①申告期限までに未分割の場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」(以下「分割見込書」)の提出すること。
②申告期限から3年以内に、その未分割であった土地が分割されること。
2.特例の適用を受けるための分割の期限
それでは、上記の「申告期限」とは、一次相続と二次相続のいずれを基準に考えるのでしょうか。小規模宅地等の特例については、下記条文の規定があります。
【措法69の4④】
第一項の規定は、同項の相続又は遺贈に係る相続税法第二十七条の規定による申告書の提出期限(以下この項において「申告期限」という。)までに共同相続人又は包括受遺者によつて分割されていない特例対象宅地等については、適用しない。ただし、その分割されていない特例対象宅地等が申告期限から三年以内(当該期間が経過するまでの間に当該特例対象宅地等が分割されなかつたことにつき、当該相続又は遺贈に関し訴えの提起がされたことその他の政令で定めるやむを得ない事情がある場合において、政令で定めるところにより納税地の所轄税務署長の承認を受けたときは、当該特例対象宅地等の分割ができることとなつた日として政令で定める日の翌日から四月以内)に分割された場合(当該相続又は遺贈により財産を取得した者が次条第一項の規定の適用を受けている場合を除く。)には、その分割された当該特例対象宅地等については、この限りでない。
このように、条文上「申告期限から三年以内に分割された場合には、小規模宅地等の特例は適用可能」ということになりますが、その「申告期限」とは、冒頭部分にある通り、「同項(第一項)の相続又は遺贈に係る申告書の提出期限」のことをいうため、小規模宅地等の適用を受ける「二次相続の申告期限」であることがわかります。
したがって、二次相続の申告期限までに一次相続が未分割の場合、当初申告においては小規模宅地等の特例は適用できませんが、上記1(2)の「分割見込書」を二次相続の相続税申告書に添付して申告を行った上で、3年以内に一次相続財産を含め分割することにより、一次相続の際に未分割だった土地について小規模宅地等の特例の適用ができるものと考えられます。
一次相続において未分割のままとなっている土地についても、特例適用の可能性がある場合には「申告期限後3年以内の分割見込書」の提出を失念しないようご留意ください。
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