チェスター相続税実務研究所
被相続人が米国で働いていた場合は要注意! 米国遺族年金(ソーシャルセキュリティ)受給権は相続税の課税財産となります!!
2022/12/07
〇課税財産か、非課税財産か
生前、被相続人は会社員として米国で働いていたことがあり、日本と米国の両国から公的年金を受給していました。死亡後、相続人は米国から遺族年金を受給することになりますが、この遺族年金を受給する権利は相続税の課税対象になるのでしょうか?
この問いについては、次のように考える方が多いのではないでしょうか。
『日本の遺族年金の受給権に対して、相続税は非課税。そして、アメリカの年金は日本とアメリカとの協定で日本の年金と同じように扱うのでは?それなら、アメリカの遺族年金も同じく、非課税でしょう。』
ここで日本の遺族年金の受給権がなぜ非課税財産となるのかをおさらいします。
日本における遺族年金の受給権は、相続税法3条1項第六号の『契約に基づかない権利』に該当します。
この『契約に基づかない権利』は、相続税法では非課税財産の対象とはされていませんが、厚生年金保険法等の規定により非課税財産となります。
次に米国からの遺族年金について検討します。
「日本と米国は協定があって、米国の年金は日本の年金と同じなのでは?」と思われる方がいらっしゃるかもしれません。
確かに、所得税法では、外国の法令に基づく社会保険又は共済に関する制度により支給される年金は、公的年金等となり(所法35③三、所令82の2②一、同令72③九)、遺族がその年金を受ける場合には、所得税は非課税となります(所法9①三、所基通9-2)。
しかし、相続税法では所得税法と同様な規定はなく、米国遺族年金は相続税の非課税財産の対象とはなっていません。
したがって、米国からの遺族年金の受給権については、相続財産となります。
〇計算方法
米国遺族年金が、『契約に基づかない定期金に関する権利』であり、課税財産となることはわかりましたが、どのように評価額を計算すれば良いのでしょうか。
米国から受給する遺族年金の受給権の評価方法は、次の終身定期金の評価方法によります。
● 終身定期金は、次に掲げる金額のうちいずれか多い金額により評価します(相法24①三)。
① 当該契約に関する権利を取得した時において当該契約を解約するとしたならば支払われるべき解約返戻金の金額
② 定期金に代えて一時金の給付を受けることができる場合には、当該契約に関する権利を取得した時において当該一時金の給付を受けるとしたならば給付されるべき当該一時金の金額
③ 当該契約に関する権利を取得した時におけるその目的とされた者に係る余命年数として政令で定めるもの に応じ、当該契約に基づき給付を受けるべき金額の1年当たりの平均額 に、当該契約に係る予定利率 による複利年金現価率を乗じて得た金額
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- 相続開始日時点の完全生命表より計算
- 米国年金は毎年の物価により毎年の受けとり額が変動するため、相続開始日時点での受取額で1年あたりの平均額を計算(換算はTTB)
- 予定利率は、以下のサイトで相続開始日時点のレートを確認します。
レートは「Effective」を採用
https://www.ssa.gov/oact/progdata/annualinterestrates.html
※相続開始年がまだない場合は直近のもので計算
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