チェスター相続税実務研究所
貸家の使用貸借
2014/09/15
【事実関係】
① 個人間の使用貸借について
土地建物ともに子名義の貸家について、母の不動産所得に収支を計上しておりました。
子が母に貸家を使用貸借(無償)で貸して、母が収益を受け取っているという状況で母に相続が発生しました。
この場合に、そもそも貸家の使用貸借は認められるものなのでしょうか。
また、当該不動産所得は母に帰属するものとして、贈与税等の問題は生じないでしょうか。
② 個人法人間の使用貸借について
土地建物ともに個人(社長)所有の貸家を同族会社に使用貸借(無償)で貸している場合に、この使用貸借は認められるのでしょうか(賃貸契約書上の貸主は法人名義)。
また、この社長に相続が発生しておりますが、土地建物は自用地評価となりますでしょうか。
【取扱い】
① 個人間の使用貸借について
所得税法第12条の実質課税の原則に基づく収益の帰属者の判定は、不動産所得等の資産から生ずる収益を享受する者が誰であるかは、その収益の起因となる資産の真実の権利者(所有権者)が誰であるかにより判定するのを原則とし、それが明らかでない場合にはその資産の名義人が真実の権利者(所有権者)であるものと推定することに取り扱われております(所基通12-1)。
従いまして、当該土地建物の真実の所有権者が母親であるということを具体的証拠に基づいて客観的に証明された場合を除き、当該土地建物の賃貸に係る収益は当該土地建物の所有名義人である子に帰属するものとして取り扱われ、当該子の不動産所得の収入金額に該当することになります。
そして、この場合において当該母親が当該土地建物の賃貸料相当額の金銭等を当該土地建物の賃借人等から得ていた時には、当該金銭等は子からの贈与として贈与税の課税対象となることも考えられます。
② 個人法人間の使用貸借について
個人所有の土地建物を無償で法人(同族会社等)に貸付けたとしても、無償による用役の提供については所得税法上は当該個人に対するみなす所得課税はありません。ただし、所得税法第157条の同族会社等の行為又は計算の否認等の規定により所得税課税が行われる可能性がございます。
また、当該土地建物を無償で借り受けた法人については、無償による役務の譲受を益金の額に算入する旨の規定が法人税法上存在しないため、法人税課税は生じないと考えられます。
他方、使用貸借契約に基づいて貸付けられている土地建物についての相続税又は贈与税の課税価格計算上の評価額については、当該使用貸借に係る権利の価額はゼロとして取り扱われます。
従いまして、当該土地建物等を使用貸借契約に基づいて借り受けた法人が、その後当該土地建物を賃貸(賃貸契約に基づく賃貸)して賃貸料を得ていたとしても、当該土地建物に係る相続税又は贈与税の課税価格計算上の評価額は、自用地としての評価になるものと考えます。
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