チェスター相続税実務研究所
贈与税の期限後申告における加算税・延滞税の計算は?
2024/05/30
子に対して現金の贈与を行ったが、子は贈与税の申告と納税を失念しているということも少なからずあります。このような場合、税務当局に指摘される前に申告と納税を行いましょう。
本稿では、贈与税の期限後申告における付帯税について整理します。
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【前提】
- 父から子(22歳)に対し令和2年(2020年)12月1日に現金1,000万円を贈与しました。
- この現金贈与について贈与契約は有効に成立しています。
- 令和6年(2024年)年5月において、子が贈与税の申告をしていないことが分かったため、上記現金贈与に関して期限後申告を行うように伝えました。
【質問】
今回の質問は贈与税にかかる延滞税の利率に関してです。
上記前提の場合、令和2年に受けた贈与の申告期限及び納期限は令和3年(2021年)4月15日(※)であり、贈与税額本税に対して無申告加算税及び延滞税が課せられると思いますが、令和6年(2024年)6月30日に申告と納税を行う場合の計算方法等について教えてください。
※令和2年分においては、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を踏まえ、申告期限及び納期限が令和3年(2021年)4月15日(木)まで延長されています。
【回答】
1.贈与税額等の計算
(1)贈与税本税額の計算
本事例において、贈与税額の計算は次のとおりとなります(相法21の7、措法70の2の5)。
1,770,000円=(10,000,000円-1,100,000円)×30%-900,000円
(注)贈与税の税率は特例税率を適用
(2)無申告加算税の計算
① 税務調査の事前通知を受ける前に自主的に申告した場合
88,500円:贈与税本税額の5%が課税されます(通法66⑦)。
② 税務調査の事前通知を受けてから更正・決定予知前に申告した場合
240,500円:贈与税本税額のうち50万円以下の部分は10%、50万円を超え300万円以下の部分は15%が課税されます。
③ 税務調査を受け、調査に基づく期限後申告の勧奨により申告した場合
329,000円:贈与税本税額のうち50万円以下の部分は15%、50万円を超え300万円以下の部分は20%が課税されます。
※ 隠ぺい・仮装行為の指摘があり、重加算税の賦課決定処分がされる場合、その税率は贈与税本税額の40%となります。
(3)延滞税の計算
① 令和6年(2024年)6月30日に納税する場合
申告期限(2021-04-15)の翌日から納付する日(2024-06-30)までの期間が延滞日数となります。
Ⓐ期間(2021-04-16~2021-12-31)
→1,770,000円×260日×年2.5%÷365日=31,520円
Ⓑ期間(2022-01-01~2024-06-30)
→1,770,000円×912日×年2.4%÷365日=106,141円
延滞税は31,520円+106,141円≒137,600円(100円未満切捨て)となります。
② 令和6年(2024年)9月30日に納税する場合
申告期限(2021-04-15)の翌日から納付する日(2024-09-30)までの期間が延滞日数となります。
Ⓐ期間(2021-04-16~2021-12-31)
→1,770,000円×260日×年2.5%÷365日=31,520円
Ⓑ期間(2022-01-01~2024-08-30)
→1,770,000円×973日×年2.4%÷365日=113,241円
Ⓒ期間(2024-08-31~2024-09-30)
→1,770,000円×31日×年8.7%÷365日=13,078円
延滞税は31,520円+113,241+13,078円≒157,800円(100円未満切捨て)となります。
令和3年1月1日以後の割合は下記となります。
(1) 納期限(注1)の翌日から2か月を経過する日まで
原則として年「7.3%」
ただし、令和3年1月1日以後の期間は、年「7.3%」と「延滞税特例基準割合(注2)+1%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
令和4年1月1日から令和6年12月31日までの期間は、年2.4%
令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間は、年2.5%
(注1) 納期限は次のとおりです。
期限内に申告された場合には、法定納期限
期限後申告または修正申告の場合には、申告書を提出した日
更正・決定の場合には、更正通知書を発した日から1か月後の日
(注2) 延滞税特例基準割合とは、各年の前々年の9月から前年の8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として各年の前年の11月30日までに財務大臣が告示する割合に、年1%の割合を加算した割合をいいます。
(2) 納期限の翌日から2か月を経過した日以後
ただし、令和3年1月1日以後の期間は、年「14.6%」と「延滞税特例基準割合+7.3%」のいずれか低い割合となります。なお、具体的な割合は、次のとおりとなります。
令和4年1月1日から令和6年12月31日までの期間は、年8.7%
令和3年1月1日から令和3年12月31日までの期間は、年8.8%
【解説】
国税の納期限には2種類あります。
「法定納期限」と「(具体的)納期限」です。
■法定納期限(国通法2八)
→法律で税目ごとに定められた、基本的な納期限のこと
(例)
所得税・贈与税 → 翌年3月15日
相続税 → 相続開始後10か月以内
■(具体的)納期限(国通法35②一二)
→期限後申告書や修正申告書を提出した場合(その提出した日が納期限)、更正・決定により税額が確定した場合(通知から1か月以内が納期限)など、法定納期限後に税額が確定した場合の納期限のこと
本件において、上記延滞税の適用利率の判定の基準となる納期限は、令和3年4月15日の「法定納期限」ではなく、「(具体的)納期限」となりますので、令和6年6月30日の翌日から2ヵ月を経過する日までは2.4%(令和3年度は、年2.5%)、2か月を経過した日以後は8.7%が適用されます。
2.留意事項
子が申告したものの納税資金がないため、滞納となった場合、贈与した親は子の贈与税額のうち、贈与した財産の価額に対応する部分の金額について、その財産を限度として連帯納付義務を負います(相法34④)。
納税資金が不足すると見込まれる場合は、贈与税額相当額も併せて贈与するとよいでしょう。
(計算例)
本事例において、子に正味10,000,000円を贈与するためには贈与税相当額の3,600,000円を併せて贈与します。
贈与税額の計算
3,600,000円
=(10,000,000円+3,600,000円-1,100,000円)×40%-1,400,000円
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