チェスター相続税実務研究所
小規模宅地等の特例の添付書類について
見つけやすくなります
2026/10/16
母が亡くなりました。
相続人は子供3人で、現在、3人とも海外に居住しております。
母の自宅(土地・建物)は、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例(以下「特例」といいます。)における被相続人の居住用宅地等に該当するとともに、相続人3人は、いずれも特例における「家なき子」の要件を満たします。
相続人3人は、母の自宅(土地・建物)を法定相続分(各3分の1)で共有取得することとし、既に相続登記を完了しました。
相続税の申告において、特例(特定居住用宅地等)の適用を受けるには「財産の分割の協議に関する書類(遺産分割協議書など)」(以下「分割協議書」といいます。)の添付が求められますが、相続人3人は全員違う国に居住しているため、分割協議書の代わりに相続人3人の名前が反映された登記事項証明書を提出することは認められますか?
登記事項証明書を分割協議書の代用とすることはできませんので、別途、分割協議書を作成・添付してください。
〔イメージ〕

基本事項
- 被相続人:母
- 相続人:子A、子B、子C
- 相続開始日:令和8年2月
※相続人は3人とも「家なき子特例」の適用要件を満たす
解説
1.特例(措法69条の4)の適用を受けるための手続き
特例の適用を受けるためには、相続税の申告書に特例の適用を受けようとする旨を記載するとともに、財務省令で定める各種書類を添付して提出しなければなりません(措法69条の4⑦)。
この財務省令で定められた添付書類の一つとして、「財産の分割の協議に関する書類(当該書類に当該相続に係る全ての共同相続人及び包括受遺者が自署し、自己の印を押しているものに限る。)の写し(当該自己の印に係る印鑑証明書が添付されているものに限る。)」が掲げられています(措規23条の2⑧)。
なお、相続人が国外に居住している場合、印鑑証明書を発行してもらうことができませんので、このような場合は、居住している国の日本大使館又は日本領事館において「署名(及び拇印(ぼいん))証明書」(いわゆる「サイン証明書」)を発行してもらい、印鑑証明書の代わりに添付することになります。
2.相続登記
相続登記には、大きく分けて、民法で定められた法定相続分のとおりに登記する「法定相続登記」、話し合いにより遺産の分配方法を決めて登記する「遺産分割による相続登記」、遺言がある場合の「遺言に基づく相続登記」の3つがあります。
このうち、「法定相続登記」においては、他の相続人の同意や協力を得なくても、相続人のうち1人から申請することが可能であるため、新しい所有者である相続人3人の名前が反映された登記事項証明書は、分割協議書の代わりになりません。
参考:保存行為として行う相続登記を解説!相続人の1人からの申請、死者名義にする場合も
3.押印義務の廃止
令和3年度税制改正において、令和3年4月1日以降の税務関係書類の押印義務が廃止されておりますが、「財産の分割の協議に関する書類」については、押印義務の廃止の対象となる税務関係書類から除かれています。
このことからも、同特例の適用に当たっては、相続人全員が確実に合意して財産を取得したことが重視されていることが分かります。
参考:国税庁「税務署窓口における押印の取扱いについて」
まとめ
以上のことから、本件は、既に法定相続分での相続登記が完了しておりますが、特例の適用を受けるためには、分割協議書を作成し、相続税の申告書に添付する必要があります。
なお、相続人の中に国外に居住されている方がいる場合、同じ1枚の分割協議書に全員が連名で署名、押印(サイン)するのは時間がかかり、効率的ではありません。
したがって、このような場合には、同一内容の分割協議書を相続人の人数分作成し、各相続人が個別に署名、押印(サイン)する形式で作成することもご検討されると良いと思います。
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