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チェスター相続税実務研究所

老人ホームの入居一時金の返還時の課税関係

2015/11/02

以前、「有料老人ホームの入居一時金」にて、入居一時金の返還時の課税関係についてご説明しましたが、入居一時金に係る最近の係争事例をご紹介します。

(事例)
被相続人甲は、甲死亡時の入居一時金の返還金受取人を相続人乙に指定し、乙は、甲の預金口座から資金を引き出して支払いました。
甲の死亡後、乙に返還金が振り込まれましたが、甲の相続税申告に当たり、乙は入居一時金の原資を乙自身が貸し付けたもので甲の相続財産ではないとして相続財産に計上しませんでした。
しかし、これについては否認され、それでは、甲が支弁した解約金の課税関係をどのように整理すべきかが争われました。

(平成25年2月12日国税不服審判所裁決)
審判所は、返還金は甲の民法上の相続財産ではなく、甲から入居一時金返還請求権という経済的利益を享受したというべきであり、「みなし贈与財産」であると裁決しました。
そして、「みなし贈与」の時期が相続開始前3年以内であるため、いわゆる生前贈与加算の規定により、相続税の課税対象としました。

(平成27年7月2日東京地方裁判所判決・平成28年1月31日東京高等裁判所判決)
裁判所は、返還金を本来受領すべき者は契約者(甲)であるところ、甲が死亡しているために、返還事務の便宜のために契約上受取人が乙に指定されているのであって、被相続人甲に本来的に帰属する財産(民法上の相続財産)であると判断しました。

最終的には、相続税法上の課税財産であるとの結論に変わりありませんが、入居一時金の返還金の法的性質について裁判所が積極的に判示した係争事例であり、税理士実務において参考になるものと考えられます。

※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。

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