チェスター相続税実務研究所
固定資産税評価の減額要因は相続税評価に反映できるのか Ⅱ
2016/03/07
路線価地域の土地の相続税評価額は概ね固定資産税評価額の1.14倍程度になることから、相続税評価額と固定資産税評価額を1.14倍したものを比較し、大きな差異がある場合には、何か減額要因を発見することが出来ることがあるケースを前回のⅠでご紹介しました。
前回のⅠのケースでは、固定資産税評価額と相続税評価額の双方に同様の減額要因があったので、相続税評価額の減額要因の発見につながりましたが、必ずしも固定資産税評価額の減額要因をもって相続税評価額を減額出来るとは限りません。
今回は、固定資産税評価額の減額要因が相続税評価額の減額要因とはならない例をご紹介します。
《ケースⅡ》「緑地補正」により固定資産税評価額が減額されていたケース
このケースでも、算出した相続税評価額は、固定資産税評価額の1.14倍と比較して高かったので、何か評価減できる要素があるのではないかと思われました。
役所調査で、評価対象地が「緑地補正」として30%評価減されていることがわかりました。
「緑地補正」とは、評価対象地が、都市計画緑地(優先整備地区には該当しない・都市計画法に基づく)に該当するための補正です。
都市計画緑地は、緑地保全等を目的としており、これに該当する場合は、一定の建築制限が設けられます。例えば、地下を作れない、2階を超える建物は作れない、などです。
緑地を保全するため、又、理想的な住空間を維持するために、オープンスペースの確保等の一定の制限を設けています。これらの制限があることから、固定資産税評価額は30%減額されています。
では、相続税評価においてはどうでしょうか。
都市計画緑地の建築制限は、「再建築不可」といった厳しいものではないので時価に減価は生じないと考えられるため、評価減はありません。
従って、このケースでは、固定資産税評価における減額要因が相続税評価においては減額要因とはならないため、固定資産税評価額を1.14倍しても相続税評価額とは一致しないことになります。
上記のほか、固定資産税評価上は無道路地とされていた評価対象地について、相続税評価においては、建築基準法上の道路に接している前面宅地を相続人が保有しているために無道路地とはならないケースなどもあります。
とは言え、減額要因が一致するケースも多く、何より簡単に出来る検算方法ですから、やはり相続税評価額を計算した後にそれが固定資産税評価額の概ね1.14倍になっているか、は必ず確認して見ることをおすすめします。
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