チェスター相続税実務研究所
特別受益がある場合の全部未分割の相続税申告
2016/07/13
相続税の当初申告期限までに遺産分割が間に合わない場合は、全部もしくは一部の財産について、法定相続分で申告することになります。
このような全部未分割の相続税申告をする場合に、一部の相続人が被相続人より特別受益に該当するような贈与を受けていた場合の相続税法55条の相続分の計算にあたっては次の2つの方法が考えられます。
①特別受益を含まない金額を遺産総額とし、法定相続分の割合を乗じて計算した金額に特別受益を加算した金額を相続分とする。
②特別受益を遺産総額に含め、法定相続分の割合を乗じて計算した金額から特別受益を控除した金額を相続分とする。
①の計算方法は「積上方式」、②の計算方法は「穴埋め方式」と呼ばれています。
相続法55条では、「相続若しくは包括遺贈により取得した財産に係る相続税について申告書を提出する場合又は当該財産に係る相続税について更正若しくは決定をする場合において、当該相続又は包括遺贈により取得した財産の全部又は一部が共同相続人又は包括受遺者によってまだ分割されていないときは、その分割されていない財産については、各共同相続人又は包括受遺者が民法(第942条の2(寄与分)を除く。)の規定による相続分又は包括遺贈の割合に従って当該財産を取得したものとしてその課税価格を計算するものとする。」と規定されています。
また、民法第903条第1項(特別受益者の相続分)では特別受益者がいる場合の相続税の計算方法について「共同相続人中に、被相続人から、遺贈を受け、又は婚姻若しくは養子縁組のため若しくは生計の資本として贈与を受けた者があるときは、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与の価額を加えたものを相続財産とみなし、前三条の規定により算定した相続分の中からその遺贈又は贈与の価額を控除した残額をもってその者の相続分とする。」と定めており、②の計算方法によって計算することが分かります。
下記は具体的な計算例になります。
事例
被相続人Aの財産:5億円
相続人の人数:子B、子C、の2人
特別受益:相続人Cが1億円の特別受益を受けていた。
各相続人の相続分の計算
Bの相続分:(5億円+1億円)×1/2-0円(特別受益なし)=3億円
Cの相続分:(5億円+1億円)×1/2-1億円(特別受益)=2億円
2億円+1億円=3億円
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。