チェスター相続税実務研究所
贈与契約書に記載されている日と現金が移動した日が異なる場合の贈与成立日について
2017/02/28
質問内容
以前、父(贈与者)から贈与で現金を受け取りました。贈与にあたって贈与契約書を作成し、平成26年1月1日に父の実家に赴き、話合いのもとで私と父はその契約書に自署押印をしました(契約日は平成26年1月1日と記載しています)。
今回の贈与契約書では、平成26年12月31日までに父が私(受贈者)の指定口座に300万円を振り込むものとする、という内容になっています。現金は平成26年12月31日までに3回(1月31日、4月30日、9月30日)に分けて100万円ずつ振り込まれています。
この場合、例えば平成29年5月1日に相続が発生した場合に、生前贈与加算(相法19)の対象となる贈与の範囲はどうなりますか。
検討と回答
民法第549条において「贈与」は下記のように定められています。
贈与は、当事者の一方が自己の財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。
つまり、贈与は諾成契約に該当します。諾成契約とは当事者間の合意だけで成立し書面の作成や目的物の引き渡しを必要としない契約をいいます。現代の民法は諾成契約が基本となっています。これに対して要物契約という形態があります。要物契約とは、当事者間の合意だけでは成立せず、契約にあたっての目的物の引き渡しをもって成立する契約をいいます。
また、相続税法基本通達1の3・1の4共-8(財産取得の時期の原則)では、以下のように定められています。
相続若しくは遺贈又は贈与による財産取得の時期は、次に掲げる場合の区分に応じ、それぞれ次によるものとする。
(1) 相続又は遺贈の場合:相続の開始の時(失踪の宣告を相続開始原因とする相続については、民法第31条((失踪の宣告の効力))に規定する期間満了の時又は危難の去りたる時)
(2) 贈与の場合:書面によるものについてはその契約の効力の発生した時、書面によらないものについてはその履行の時
本件の場合、贈与者と受贈者との間で贈与の合意があると認められます。また、贈与は契約書面で行われており、その契約内容は履行されていることから、父から子への300万円の金銭贈与は契約日である平成26年1月1日に成立しているものと考えられます。
よって、当該贈与は平成29年5月1日の3年前の応当日(平成26年5月1日)よりも以前の贈与となり、生前贈与加算の対象となる生前贈与には含まれないと考えられます。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。