チェスター相続税実務研究所
二棟の家屋が内部で繋がっている場合の、小規模宅地等の特例の適用可否
2017/10/26
小規模宅地等の特例(特定居住用)の適用については、
①被相続人の居住の用に供されていた宅地等
②被相続人と生計を一にする被相続人の親族の居住の用に供されていた宅地等
につき、適用が考えられますが、例えば以下の事例の場合、特例の適用可否は如何でしょうか。
【事例】
土地:被相続人所有
家屋:被相続人自宅(被相続人所有)、長男自宅(長男と被相続人とで共有)
上記二棟の家屋は同一敷地内に建っており、内部で行き来できるよう、渡り廊下繋がっています。
家屋の利用状況としては、被相続人は寝起きや普段の生活は自身の自宅家屋で行っており、食事は長男自宅でとっていました。被相続人の世話をしていたのは長男の妻であり、互いに頻繁に行き来をしていました。公共料金や固定資産税は各人の口座から引き落とされており、食費として被相続人から長男へ10万/月渡していましたが、地代や家賃のやりとりはありません。
【検討】
①について
被相続人自宅敷地部分については、区分所有建物と類似した状況であり、被相続人と長男は独立した各部分に居住しており、同居親族ではないと考えられるため、特例の適用は難しいです。
②について
長男自宅敷地部分については、家屋の構造が内部で繋がっており、一般的な概念からは同居を考えられます。同居している場合には、明らかにお互いに独立した生活を営んでいると認められる場合を除き、一般に「生計を一にしていた」ものと推認されますが、今回の事例では明らかにお互いに独立した生活を営んでいる、とは考えづらいため、長男は生計一に該当し、特例の適用が可能かと思われます。
ここでいう、①の「同居」の概念と、②の生計一の判定においての「同居」の概念とは異なることに留意が必要です。また、特例の適用可否、特に同居の判定や生計一の判定にあたっては、様々な状況を総合的に勘案して判断する必要があるため、一概に適用が可能、不可能、とは判定できないところが悩ましいところではあります。
※この記事は専門家監修のもと慎重に執筆を行っておりますが、万が一記事内容に誤りがあり読者に損害が生じた場合でも当法人は一切責任を負いません。なお、ご指摘がある場合にはお手数おかけ致しますが、「お問合せフォーム→掲載記事に関するご指摘等」よりお問合せ下さい。但し、記事内容に関するご質問にはお答えできませんので予めご了承下さい。