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平成29年税制改正大綱(資産税関連)の解説
平成29年税制改正大綱(資産税関連)の解説
2016年12月に平成29年度の税制改正大綱が発表されました。この記事では改正大綱項目の中でも相続税や所得税といった資産税関連について解説していきます。なおまだ大綱段階ですので、実際に改正が施行されるかどうかについては2017年春ごろに決定します。その際には改めて決定した税制改正の情報をお届けします。
少し分かりやすくするために、納税者の方にとって「有利」「不利」どちらなの改正なのかも併せて記載していきたいと思います。
■ 1. 非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度の見直し(有利)
概要
非上場株式等に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について改正項目がいくつか挙がっています。ただしさほど大きな改正内容ではありません。
内容
・雇用確保要件について100分の80を乗じた人数が1人未満の場合には切り上げとする
・相続時精算課税制度に係る贈与を、贈与税の納税猶予制度に加える 等々
適用時期
平成29年1月1日以後に発生する相続若しくは遺贈又は贈与により適用開始
■ 2. 相続税又は贈与税の納税義務の見直し(不利)
概要
国外居住者の居住期間についていわゆる「5年ルール」を厳格化し、「10年」とする改正です。
内容
相続税や贈与税について海外の税法を適用するためには、財産を渡す側と受け取る側の双方が5年以上海外に居住して制限納税義務者となると共に、財産を国外に移転することが必要でしたが、現行の5年を10年とするというものです。
適用時期
平成29年4月1日以後に発生する相続若しくは遺贈又は贈与により適用開始
■ 3. 取引相場のない株式の評価見直し(ケースによって有利・不利が分かれるが、有利な人が多い)
概要
取引相場のない株式(いわゆる「非上場株式」)の評価方法の見直しです。大きく3点の改正があります。
内容
・類似業種の上場会社の株価について、現行に課税時期の属する月以前2年間平均額を加える(評価対象期間が広がりますので有利です)
・類似業種の上場会社の配当金額、利益金額、簿価純資産価額について、連結決算を反映させたものとする
・比較する、配当金額、利益金額、簿価純資産価額の比重が1:1:1になる(現行は、1:3:1ですので、利益が出ている会社は有利になります)
適用時期
平成29年1月1日以後に発生する相続より適用開始
■ 4. 広大地評価の方法の見直し(有利不利については現段階では判断できない)
概要
広大地評価の方法について現行の面積に比例的に減額する評価方法から、各土地の形状に応じて適用要件を明確化する。
内容
内容は明確に大綱には記載されていませんが、現行の判断微妙な要件判定を極力なくして、適用要件が明確化される予定です。
適用時期
平成30年1月1日以後に発生する相続より適用開始
■ 5. 株式保有特定会社の判定基準の見直し(不利)
概要
取引相場のない株式の評価にあたり、株式保有特定会社の判定基準に新株予約券付社債が加わる。
内容
株式保有特定会社(通称「かぶとく」)の判定にあたり、これまで除外されていた新株予約権付社債が加わりますので、該当する企業の取引相場のない株式の評価が高くなってしまうため不利です。
適用時期
平成30年1月1日以後に発生する相続より適用開始
■ 6. 居住用超高層建築物に係る課税の見直し(低層階所有者には有利、高層階所有者には不利)
概要
60メートル以上のタワーマンションの固定資産税評価について、階数によってこれまで差が設けられていなかったものに、差をつける改正です。
内容
タワーマンションの1階を100として、階数が1階増すごとに、10/39を加えた階層別占有床面積補正率という補正計算を行って固定資産税を計算します。これにより高層階所有者の固定資産税は増額、低層階所有者の固定資産税は減額されます。
適用時期
平成30年度から新たに課税される建築物から(ただし、平成29年4月1日以後に各部屋の売買契約が開始されるものに限定)
■ 7. 所得税の配偶者控除、配偶者特別控除の見直し(ケースによって有利・不利が分かれる)
概要
所得税の配偶者特別控除について、38万円控除を受けることができる配偶者の給与収入の上限が103万円から150万円に拡大される。
内容
これまで配偶者控除を受けるために年間の給与収入を103万円以内に抑えていた人は、150万円まで拡大されることで有利となります。一方で、配偶者控除に所得制限が設けられるため(合計所得金額が1,000万円以下)不利となる人もいます。
また配偶者控除、配偶者特別控除ともに控除を受ける本人の合計所得が900万円超1000万円以下の場合には、控除額が縮小されるため、世帯主の給与年収が高い世帯は増税になり不利となります。
適用時期
平成30年分の所得税、平成31年分の住民税から適用となります。
※本記事は平成29年度税制改正大綱の解説となっています。実際に改正が施行されているわけではありませんので注意ください。税制改正確定後に再度内容を掲載します。