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令和2(2020)年度税制改正大綱(資産税関連)
令和1(2019)年12月12日に、自由民主党及び公明党から令和2(2020)年度の税制改正大綱が公表されました。
本稿では、特に資産税関連の項目について解説します。
なお、下記の内容を織り込んだ税制改正法は令和2(2020)年の3月下旬に成立し、その後、政令・省令によって具体化されますが、本稿は、その確定前の段階の解説であることにご留意ください。
金融・証券税制関係
■ 1. 非課税口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置
〔一般NISA・つみたてNISA〕〈租税特別措置法(以下、単に「措置法」)9の8、同37の14〉
内容
- ・〔一般NISA(非課税上場株式等管理契約)〕の勘定設定期間の終了(2023(令和5)年12月31日)に合わせて、〔つみたてNISA〕と別枠(選択適用)で、特定非課税累積投資契約(仮称)に係る非課税措置※が創設されます。
※上場株式等を受け入れる特定非課税管理勘定(仮称)と特定の公募等株式投資信託の受益権のみを受け入れる特定累積投資勘定(仮称)が
同時に設けられます。 - ・〔つみたてNISA(非課税累積投資契約)〕の勘定設定期間が2042(令和24)年12月31日まで5年延長されます。
■ 2. 未成年者口座内の少額上場株式等に係る配当所得及び譲渡所得等の非課税措置
〔ジュニアNISA〕〈措置法9の9、同37の14の2〉
内容
勘定設定期間は延長されずに終了(2023(令和5)年12月31日)されます。
■ 3. 〔エンジェル税制〕
① 特定中小会社が発行した株式の取得に要した金額の控除等の特例〈措置法37の13〉
② 特定中小会社が発行した株式に係る譲渡損失の繰越控除等〈同37の13の2〉
③ 特定新規中小会社が発行した株式を取得した場合の課税の特例〈同41の19〉
内容
- ・特定中小会社(①②)に、設立後10年未満の中小企業者で金融商品取引法の第一種少額電子募集取扱業者を通じて投資される等の要件を満たす株式会社が加わります。
*適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
- ・特定新規中小会社(③)に、次の株式会社が加わります。
- (a) 設立後3年以上5年未満の特定新規中小企業者で前事業年度までの営業活動によるキャッシュ・フローが赤字である等の要件を満たすもの
- (b) 設立後5年未満の中小企業者で投資事業有限責任組合を通じて投資される等の要件を満たすもの
- (c) 設立後5年未満の中小企業者で金融商品取引法の第一種少額電子募集取扱業者を通じて投資される等の要件を満たすもの
*適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
- ・③の控除対象限度額が、2021(令和3)年1月1日以後は800万円(現行1,000万円)に引き下げられます。
■ 4. 特定口座内保管上場株式等の譲渡等に係る所得計算等の特例〈措置法37の11の3〉
内容
- ・特定口座に受け入れることができる上場株式等に次のものが加わります。
- (a) 取得請求権付株式、取得条項付株式又は全部取得条項付種類株式であって上場株式等以外の株式に該当するものの請求権の行使等により取得するもの
- (b) 発行法人等に役務の提供等をした場合にその発行法人等から取得する上場株式等でその上場株式等と引換えにする払込み又は給付を要しないもの
- (c) 設定の時から非課税口座に該当しないこととされた口座で管理されている上場株式等で、その該当しないこととされた日に、非課税口座簡易開設届出書を提出した営業所に開設されている特定口座に一定の方法で移管されるもの
- ・特定口座源泉徴収選択届出書」などの書類の提出に代えて、記載すべき事項に係る電磁的記録を電磁的方法により提供することができます。
- ・適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
土地・住宅税制関係
■ 1. 低未利用土地等を譲渡した場合の長期譲渡所得の特別控除【創設】
内容
- ・①譲渡年の1月1日において所有期間が5年を超える、②都市計画区域内にある③低未利用土地等であることについての市区町村長の確認がされたものを、④「土地基本法等の一部を改正する法律(仮称)」の施行日又は2020(令和2)年7月1日のいずれか遅い日から2022(令和4)年12月31日までの間に譲渡(注)して、⑤譲渡後の低未利用土地等の利用についての市区町村長の確認がされた場合には、低未利用土地等の譲渡所得の金額から100万円までの控除をすることができることになります。
(注) (a)配偶者等特別の関係がある者に対してするものと(b)その上にある建物等を含む譲渡の対価として一定の額が500万円を超えるものは除かれますのでご注意ください。
- ・適用を受けようとする低未利用土地等と一筆の土地から分筆された土地等について、その年の前年又は前々年にこの特例の適用を受けている場合には、その低未利用土地等についてこの特例の適用はでないこととされます。
(POINT!)
上記(注)(b)の500万円以下となるように分筆譲渡・特例適用した場合には、分筆元の低未利用土地等については連年等の特例適用ができないことなるようです。
■ 2. (短期所有)土地の譲渡等に係る事業所得等の課税の特例〈措置法28の4〉
内容
適用停止措置の期限(2020(令和2)年3月31日)が3年延長されます。
■ 3. 配偶者居住権〈民法1028等〉及び配偶者敷地利用権※に係る措置
※ 配偶者居住権の目的となっている建物の敷地の用に供されている土地等を配偶者居住権に基づき使用する権利
内容
- ・配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の消滅等の対価として支払を受ける金額に係る譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、被相続人に係る居住建物等※1の取得費に配偶者居住権等割合※2を乗じて計算した金額から、その配偶者居住権の設定から消滅等までの期間に係る減価の額を控除した金額とされます。
※1 配偶者居住権の目的となっている建物又はその建物の敷地の用に供されている土地等
※2 その配偶者居住権の設定の時における、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の価額に相当する金額の居住建物等の価額に相当する金額に対する割合
- ・配偶者居住権及び配偶者敷地利用権の消滅する前に、相続人が居住建物等を譲渡した場合の譲渡所得の金額の計算上控除する取得費は、その居住建物等の取得費から配偶者居住権又は配偶者敷地利用権の取得費を控除した金額とされます。
- ・居住建物等が収用等をされた場合で、配偶者居住権又は配偶者敷地利用権が消滅等して一定の補償金を取得するときは、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例〈措置法33〉等の適用ができることとされます。
- ・第一種市街地再開発事業等が施行された場合で、居住建物等に係る権利変換により施設建築物の一部等に配偶者居住権が与えれられたときを、換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例〈措置法33の3〉の適用対象とされます。
(POINT!)
配偶者居住権の施行日は、2020(令和2)年4月1日です。
■ 4. 農地保有の合理化等のために農地等を譲渡した場合の譲渡所得の特別控除〈措置法31の2〉
内容
- ・次の譲渡が適用対象から除かれます。
- (a) 都市再生特別措置法の認定整備事業計画に係る一定の都市再生整備事業の認定整備事業者に対する土地の譲渡
- (b) 都市計画区域内において行われる一定の要件を満たす一団の宅地の造成を行う者に対する土地等の譲渡
- ・適用期限(2019(令和元)年12月31日)が3年延長されます。
■ 5. 居住用財産の譲渡の特例と住宅借入金等の特別控除の特例【不利改正】
内容
- ・新規住宅を居住の用に供した日の属する年から3年目の年中に、従前住宅等※1を譲渡して居住用財産の譲渡の特例※2の適用を受けるときは、新規住宅について、①(特定増 改築等)住宅借入金等特別控除〈措置法41、同41の3の2〉又は②認定住宅新築等特別税額控除〈同41の19の4〉の適用を受けることができないことになります。
※1 新規住宅及びその敷地の用に供されている土地等以外の資産
- ※2 (a) 居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例〈措置法31の3〉
- (b) 居住用財産の譲渡所得の特別控除〈同35(除3項)〉
- (c) 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例〈既出〉
- (d) 既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例〈同37の5〉
- ・2020(令和2)年4月1日以後に従前住宅等の譲渡をする場合について適用されます。
■ 6. 国外中古建物を譲渡した場合の取得費
内容
国外中古建物の不動産所得に係る損益通算等の特例※の対象である国外中古建物を譲渡した場合の譲渡所得の計算上、当該特例により生じなかったものとみなされる償却費に相当する部分の金額は、取得費から控除される償却費の額の累計額から除かれます。
※ 国外不動産所得の損失の金額がある場合、その損失の金額のうち国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は
生じなかったものとみなされる特例【新設】
*適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
(POINT!)
国外中古建物の償却費に相当する部分の金額は不動産所得の必要経費にはなりませんが、譲渡所得の取得費になります。
■ 7. 国等(公益法人等)に対して財産を寄附した場合の譲渡所得等の非課税〈措置法40〉
内容
- ・みなす特例※の対象範囲に、認定NPO法人又は特例認定NPO法人に対するこれらの法人の役員等及び社員(これらの者の親族を含む。)以外の者からの贈与又は遺贈で、贈与等財産が一定の手続下で特定非営利活動に充てるための基金に組み込まれるものが加わります。
※ 申請書提出日から1月以内に国税庁長官の承認をしないことの決定がなかった場合にその承認があったものとみなす特例
- ・贈与等財産を公益目的事業の用に直接供した日から2年以内に買い換える場合であっても、当該財産が基金に組み入れる方法により管理されている等の要件を満たすときは、一定の要件の下で非課税措置の継続適用を受けることができることになります。
- ・法人税法別表第一の(地方)独立行政法人(博物館等の設置等業務を主たる目的とするもの)に対する贈与等に係る有形文化財で一定のものを、当該贈与等の日から2年を経過する日までの期間内に、文化観光拠点施設(仮称)で行われる一定の公共目的事業の用に直接供される(見込みである)旨の証明書が添付された申請書の提出があった場合、みなし特例の対象になります。
- ・適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
相続税・贈与税関係
■ 1. 農地等に係る相続税・贈与税の納税猶予〈措置法70の6,70の4など〉
内容
- ・特例対象農地等に、三大都市圏の特定市の市街化区域内の農地で、地区計画農地保全条例(仮称)により制限を受ける一定の地区計画の区域内に所在するものが加わります。
- ・都市計画法の改正とともに適用される見込みです。
■ 2. 医業継続に係る相続税・贈与税の納税猶予〈措置法70の7の8、70の7の5など〉
内容
- ・適用期限(2020(令和2)年9月30日)が3年延長されます。
- ・良質な医療を提供する体制の確立を図るための医療法等の一部を改正する法律の改正とともに適用される見込みです。
■ 3. 手続の簡素化等
内容
- ・次の届出書等に貸借対照表と損益計算書の添付が不要になります。
- (a) 非上場株式等についての相続税・贈与税の納税猶予における継続届出書等
- (b) 担保が保証人(法人)である場合の物納申請書
- (c) 非上場株式を物納する場合の物納申請書
- ・適用時期は、税制改正法案に明らかにされる見込みです。
■ 4. 準確定申告の電子的手続の簡素化
内容
- ・e-Taxによる所得税の準確定申告書の提出において、同申告書に記載すべき事項と併せて申告書確認情報※1を送信する場合には、
申請等相続人※2以外の相続人の電子署名及び電子証明書の送信は不要とされます。- ※1 申請等相続人以外の相続人がその準確定申告書に記載すべき事項を確認したことを証する電磁的記録
- ※2 電子署名及び電子証明書を送信する相続人
- ・2020(令和2)年分以後の所得税の準確定申告書を2020(令和2)年1月1日以後に提出する場合に適用されます。
■ 5. 国外財産調書制度等の見直し〈国外送金等調書法5、6の2〉
内容
- ・相続の開始年の12月31日において有する国外財産に係る国外財産調書は、相続国外財産※1を記載しないで提出することができることとされます。この場合の国外財産調書の提出義務は、相続国外財産の価額の合計額を除外して判定します。
財産債務調書における相続財産※2についても同様とされます。- ※1 相続又は遺贈により取得した国外財産
- ※2 相続又は遺贈により取得した財産
*2020(令和2)年分以後の国外財産調書等に適用されます。
- ・国外財産調書の提出がない場合等の過少申告加算税等の加重措置の適用対象に、相続国外財産に対する相続税に関し修正申告書若しくは期限後申告書の提出又は更正若しくは決定があった場合が加わるなどの見直しが行われます。
*2020(令和2)年分以後の所得税又は同年4月1日以後に相続若しくは遺贈により取得する財産に係る相続税に適用されます。
■ 6. 相続税・贈与税に係る利子税の引下げ〈措置法93〉
内容
- ・利子税特例基準割合※が年7.3%未満の場合には、相続税・贈与税に係る利子税の割合に、利子特例基準割合が年7.3%に占める割合を乗じて得た割合とされます。
※ 平均貸付割合(各年の前々年9月から前年8月までの各月における銀行の新規の短期貸出約定平均金利の合計を12で除して得た割合として財務大臣が前年11月30日までに告示する割合)に年0.5%の割合を加算した割合
- ・2021(令和3)年1月1日以後の期間に対応する利子税に適用されます。
登録免許税
■ 1. 適用期限の延長
内容
次の軽減措置の適用期限(2020(令和2)年3月31日)等が2年延長されます。
- (a) 住宅用家屋の所有権の保存登記若しくは移転登記又は住宅取得資金の貸付け等に係る抵当権の設定登記〈措置法72の2〉
- (b) 特定認定長期優良住宅の所有権の保存登記等〈同74〉
- (c) 認定低炭素住宅の所有権の保存登記等〈同74の2〉
- (d) 特定の増改築等がされた住宅用家屋の所有権の移転登記〈同74の3〉