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令和3(2021)年度税制改正大綱(資産税関連)
令和2(2020)年12月10日に、自由民主党及び公明党から令和3(2021)年度の税制改正大綱が公表されました。
本稿では、特に資産税関連の項目について解説します。
なお、下記の内容を織り込んだ税制改正法は令和3(2021)年の3月下旬に成立し、その後、政令・省令によって具体化されますが、本稿は、その確定前の段階の解説であることにご留意ください。
相続税・贈与税関係
■ 1. 相続税・贈与税の納税義務者〈相法1の3,1の4など〉
内容
- ・国内に短期的に居住する在留資格を有する者、国外に居住する外国人等が、相続開始の時又は贈与の時において国内に居住する在留資格を有する者から、相続若しくは遺贈又は贈与により取得する国外財産については、相続税又は贈与税を課さないこととされます。
- ※ 上記の「在留資格」とは、出入国管理及び難民認定法別表第一の上欄の在留資格をいいます。
■ 2. 住宅取得等資金の贈与税の非課税〈措法70の2〉
内容
- ①令和3年12月31日までの間に住宅用家屋の新築等に係る契約を締結した場合における非課税限度額が、令和3年3月31日までの間の非課税限度額と同額まで引き上げられます。
- ②受贈者が贈与を受けた年分の所得税に係る合計所得金額が1,000万円以下である場合に限り、床面積要件の下限を40㎡以上(現行:50㎡以上) に引き下げられます。
- ・2021(令和3)年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。
現行 | 改正案 | |||
---|---|---|---|---|
耐震、省エネ又は バリアフリーの住宅用家屋 |
一般の 住宅用家屋 |
耐震、省エネ又は バリアフリーの住宅用家屋 |
一般の 住宅用家屋 |
|
消費税等の税率10%が適用される住宅用家屋の新築等 | 1,200万円 | 700万円 | 1,500万円 | 1,000万円 |
上記以外の住宅用家屋の新築等 | 800万円 | 300万円 | 1,000万円 | 500万円 |
■ 3. 住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例〈措法70の3〉
内容
- ・床面積要件の下限を40㎡以上(現行:50㎡以上)に引き下げられます。
- ・2021(令和3)年1月1日以後に贈与により取得する住宅取得等資金に係る贈与税について適用されます。
■ 4. 教育資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度〈措法70の2の2〉
内容
- ①適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されます。
- ②信託等があった日から教育資金管理契約の終了の日までの間に贈与者が死亡した場合には、その死亡の日までの年数にかかわらず、同日における非課税拠出額から教育資金支出額を控除した管理残額を、受贈者が当該贈与者から相続等により取得したものとみなされます。 なお、その死亡の日において、受贈者が23歳未満、学校等に在学、教育訓練給付金の支給対象となる教育訓練を受講している場合は除かれます。
- ③上記②により相続等により取得したものとみなされる管理残額について、贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額が2割加算されることになります。
- ・上記②・③の改正は、2021(令和3)年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。
- ④本措置の対象となる教育資金の範囲に、1日当たり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち、都道府県知事等から一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものに支払われる保育料等が加わります。
- 2021(令和3)4月1日以後に支払われる教育資金について適用されます。
■ 5. 結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の贈与税の非課税制度〈措法70の2の3〉
内容
- ①適用期限が2023(令和5)年3月31日まで延長されます。
- ②贈与者から相続等により取得したものとみなされる非課税拠出額から結婚・子育て資金支出額を控除した管理残額について、当該贈与者の子以外の直系卑属に相続税が課される場合には、当該管理残額に対応する相続税額が2割加算されることになります。
- ・2021(令和3)年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。
- ③受贈者の年齢要件の下限が18歳以上(現行:20歳以上)に引き下げられます。
- ・2022(令和4)年4月1日以後の信託等により取得する信託受益権等について適用されます。
- ④本措置の対象となる結婚・子育て資金の範囲に、1日当たり5人以下の乳幼児を保育する認可外保育施設のうち、都道府県知事等から一定の基準を満たす旨の証明書の交付を受けたものに支払われる保育料等が加わります。
- ・2021(令和3)年4月1日以後に支払われる結婚・子育て資金について適用されます。
(POINT!)
教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置及び結婚・子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税措置については、次の適用期限の到来時に、その適用実態も検証した上で、両措置の必要性について改めて見直しを行うこととされています。
事業承継税制関係
■ 1. 個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度
〈措法70の6の8、70の6の10〉
内容
- ・個人事業者の事業用資産に係る相続税・贈与税の納税猶予制度について、適用対象となる特定事業用資産の範囲に、被相続人又は贈与者の事業の用に供されていた乗用自動車が追加されます。
(POINT!)
乗用自動車は、取得価額500万円以下の部分に対応する部分で、青色申告書に添付される貸借対照表に計上されているものです。
■ 2. 非上場株式等に係る相続税の納税猶予の特例制度等
〈措法70の7の2、70の7の6〉
内容
- ①被相続人が70歳未満(現行:60歳未満)で死亡した場合や、後継者が中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律施行規則の確認を受けた特例承継計画に特例後継者として記載されている者である場合には、後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員でないときであっても、特例制度の適用を受けることができることになります。
- ②被相続人が70歳未満(現行:60歳未満)で死亡した場合には、後継者が被相続人の相続開始の直前において特例認定承継会社の役員でないときであっても、一般制度の適用を受けることができることになります。
土地・住宅税制関係
■ 1. 換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例〈措法33の3〉
内容
・マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正に伴い、次の場合が適用対象に追加されます。
敷地分割事業が実施された場合において、その資産に係る敷地権利変換により除却敷地持分等を取得したとき
■ 2. 収用交換等の場合の譲渡所得の5,000万円特別控除の特例等〈措法33の4 ほか〉
内容
・電気事業法等の改正に伴い、次の場合が適用対象に追加されます。
- (a) 土地収用法及び大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の対象事業に配電事業が追加された後も引き続き、土地収用法の規定に基づいて収用され、補償金を取得する場合
- (b) 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法の使用の認可に関する処分に伴い一定の補償金を取得する場合
■ 3. 特定住宅地造成事業等のために土地等を譲渡した場合の1,500万円特別控除【不利改正】〈措法65の4①三〉
内容
・一団の宅地の造成に関する事業の用に供するために買い取られる場合において、次の改正が行われるとともに、その適用期限が2023(令和5年12月31日)までとされました。
- (a) 適用対象から、開発許可を受けて行われる一団の宅地造成事業が除外されました。
- (b) 適用対象となる土地区画整理事業として行われる一団の宅地造成事業について、その土地区画整理事業として行われる一団の宅地造成事業の施行地区の全部が市街化区域に含まれる場合に限定されました。
固定資産税・登録免許税関係
■ 1. 土地に係る固定資産税の負担調整
内容
宅地等及び農地については、令和3年度の課税標準額を令和2年度の課税標準額と同額とされます。
(注)「宅地等」は、商業地等は負担水準が60%未満の土地に限り、商業地等以外の宅地等は負担水準が100%未満の土地に限られ、また、「農地」は、負担水準が100%未満の土地に限られています。
(POINT!)
本措置は、令和3年度限りの措置とされています。
■ 2. 新たな登録免許税の軽減措置
内容
- ①都市再生特別措置法の居住誘導区域等権利設定等促進計画に基づき取得する不動産の所有権等の移転登記等に対する登録免許税が、次のとおりに軽減されます。
- (a) 所有権の移転登記1,000分の10(本則1,000分の20)
- (b) 地上権等の設定登記1,000分の5(本則1,000分の10)
- ・2021(令和3)年4月1日から2023(令和5)年3月31日までの間に取得するものが対象となります。
- ②医療機関の開設者が、共同再編計画(仮称)に基づき、医療機関の再編に伴い取得する土地又は建物の所有権の移転登記等に対する登録免許税が、次のとおり軽減されます。
- (a) 土地の所有権の移転登記1,000分の10(本則1,000分の20)
- (b) 建物の所有権の保存登記1,000分の2(本則1,000分の4)
- ・関係法令の改正を前提に、改正法の施行の日から2023(令和5)年3月31日までの間に取得するものが対象となります。
- ③敷地権利変換手続開始の登記及び敷地権利変換後の土地について必要な一定の登記に対する登録免許税が免税されます。
- マンションの建替え等の円滑化に関する法律の改正法の施行の日から2024(令和6)年3月31日までの間の措置となります。
■ 3. 登録免許税適用期限延長
内容
次の軽減措置の適用期限(2021(令和3)年3月31日)等が2年延長されます。
- (a) 土地の売買による所有権の移転登記等〈措置法72〉
- (b) 利用権設定等促進事業により農用地等を取得した場合の所有権の移転登記〈同77〉
- (c) 認定民間都市再生事業計画に基づき、都市再生緊急整備地域内または特定都市再生緊急整備地域内に、特定民間都市再生事業の用に供する建築物を建築した場合の所有権の保存登記〈同83〉
- (d) 相続に係る所有権の移転登記に対する登録免許税の免税措置〈同84の2の3〉
- なお、同制度の適用対象となる登記の範囲に、表題部所有者の相続人が受ける土地の所有権の保存登記が追加されることとなりました。