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タワマン節税 6項の否認リスクを探る
2017/10/10
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平成29年度税制改正では、タワーマンション(60mを超える居住用超高層建築物)の各区分所有者が負担する固定資産税の計算方法の見直しが行われました。
今回は、相続税におけるタワマン節税の見直しは保留になりましたが、タワマン節税は6項による否認リスクがあるため、引き続き注意が必要です。
1.タワマン節税とは
タワマン節税は、家屋は財産評価基本通達では固定資産税評価額で評価されるのですが、固定資産税評価額はマンションの方角・階数・眺望などは考慮されていないため、相続税での評価額と実際の売却額が大きく異なることに着目したものです。
財産評価基本通達1項
財産の価額は、時価によるものとし、時価とは、課税時期において、それぞれの財産の現況に応じ、不特定多数の当事者間で自由な取引が行われる場合に通常成立すると認められる価額をいい、その価額は、この通達の定めによって評価した価額による。
財産評価基本通達89項
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。相続税財産基本通達別表第一に定める倍率を乗じて計算した金額(※)によって評価する。※貸家以外は、固定資産税評価額に1.0倍をします。
2.6項が適用されると考えられる場合
国税庁が行った調査によると、タワーマンションの市場価格と評価通達に基づく相続税評価額の乖離率は平均3.04倍とされていて、市場価格と大きく乖離しています。そのため、国税庁は、乖離率の幅だけではなく、個別的な要素も考慮して、6項の適用を検討します。
財産評価基本通達6項
この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。
6項の判断基準ですが、税務大学校の研究部教育官の山田重將氏によると、6項適用に係る裁判例では、「価格乖離型」と「租税回避型」の2つの枠組みに分類でき、次の4つになると考えられています。
〔ⅰ〕評価通達による評価方法を形式的に適用することの合理性が欠如していること
〔ⅱ〕他の合理的な時価の評価方法が存在すること
〔ⅲ〕評価通達による評価方法に従った価額と他の合理的な時価の評価方法による価額の間に著しい乖離が存在すること
〔ⅳ〕納税者の行為が存在し、当該行為と〔ⅲ〕の「価額の間に著しい乖離が存在すること」との間に関連があること
〔ⅰ〕は、相続開始直前に不動産を取得し、相続税の申告の直後に売却するなど一時的に所有権があるに過ぎないと認められる場合などです。
〔ⅱ〕は、不動産鑑定評価や、取引の経緯から客観的に明らかになっている市場価格が把握されている場合などです。
〔ⅲ〕は、形式的に〇倍以上のような基準はなく、あくまで個々の事例ごとに判断しています。
〔ⅳ〕は、相続開始直前に不動産を取得し、相続税申告後に売却する行為などが該当します。
(参考文献:税務大学校論叢80号(平成27年7月3日)『財産評価基本通達の定めによらない財産の評価について-裁判例における「特別の事情」の検討を中心に-』)
3.裁決より
タワマン節税で6項の適用となった裁決があり、その内容を簡単にご紹介します。
平成23年7月1日裁決の事例では、相続の1ヶ月前にタワーマンションを購入し、利用しないまま相続になりました。相続税評価額が5,801万円でしたが、相続して4ヶ月後に2億9,300万円で売却する契約を締結しました。この場合、相続開始日前後の一時的な期間のみの形態に過ぎないマンションを財産評価に基づきマンションとして評価することは、著しく不適当として、6項の適用となりました。
このように、市場価格の乖離率だけでなく、相続前後の一時的な期間しか所有権がないなど個別的な事情も考慮して判断されています。国税庁は評価方法に疑義がある事案は6項の適用を検討しているため、タワマン節税は6項により否認されるリスクがあることは引き続き認識しておくべきでしょう。
※本記事は記事投稿時点(2017年10月10日)の法令・情報に基づき作成されたものです。
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