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住民票が被相続人の住居にある単身赴任中の相続人は小規模宅地等の特例を使える?
サラリーマンに転勤はつきものですが、子どもの教育やマイホームなどの事情から、家族を赴任先に連れて行かずに単身赴任するケースもあります。親子三世代で住んでいた子(相続人)が単身赴任して、その間に親(被相続人)が亡くなった場合について考えてみましょう。
単身赴任する場合は、住民票は移さずに元の住所に置いておくのが一般的です。このとき、相続人の住民票は被相続人と同じ住所にあるものの、実際には被相続人とは同居していないことになります。
このような状況で被相続人が亡くなって、単身赴任していた相続人が自宅の宅地を相続したときは、小規模宅地等の特例を適用することはできるのでしょうか。
1.特定居住用宅地等に関する特例
まず、小規模宅地等の特例の内容と要件を確認しましょう。被相続人の自宅の宅地は「特定居住用宅地等」として、330㎡までの部分について評価額を80%減額することができます。
特定居住用宅地等に対する特例では、誰が被相続人名義の自宅の宅地を相続するかによって、特例を適用するための要件が異なります。
・ 配偶者:取得すれば無条件に適用できます。
・ 同居の親族:相続税の申告期限まで保有し、引き続き居住することが必要です。
・ 別居の親族:相続税の申告期限まで保有するほか、従来は、以下の要件がありました。
(イ)亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
(ロ)宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」の持ち家に住んだことがない
(ハ)相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する
しかし、平成30年度の税制改正で要件が追加され、次の全てに該当しなければ適用できなくなりました。
(イ)亡くなった人に配偶者や同居の親族がいない
(ロ)宅地を相続した親族は、相続の3年前までに「自己または自己の配偶者」「3親等以内の親族」「特別の関係がある法人」の持ち家に住んだことがない
(ハ)相続した宅地を相続税の申告期限まで保有する
(ニ)相続開始時に居住している家屋を過去に所有していたことがない
ただし、納税者に不利な改正であることを考慮し、平成30年3月31日現在において平成30年度改正前の「家なき子」特例の要件を満たしている場合には、平成32年3月31日までに発生した相続に限り、改正前の要件をもって「家なき子」特例が認められます。
以上のように、配偶者以外の親族(子など)が相続する場合は、被相続人と同居していたか別居していたかによって、土地の評価に大きな違いが顕れます。
家族を被相続人の下に残して相続人が単身赴任していた場合、被相続人と同居していたか別居していたかによって、どのような違いがあるのでしょうか。
被相続人と同居していたと認められれば、相続した宅地を相続税の申告期限まで保有することで小規模宅地等の特例を適用することができます。
しかし、被相続人と別居していたと認められれば、小規模宅地等の特例を適用することはできません。相続人の家族が被相続人と同居していたため、「被相続人に同居の親族がいない」という要件を満たさないからです。
2.同居していたか否かの判断
相続人が被相続人と同居していたかどうかは、どのように判断するのでしょうか。実際に住んでいた場所と住民票の住所が一致しない場合は、実際に住んでいた場所と住民票の住所のいずれかを基に判断するのかが分かれ目になります。
例えば、相続人が独身であり、被相続人を1人残して単身赴任した場合は、相続人が実際に住んでいた場所を基に判断します。住民票の上では被相続人と同じ住所であっても、その住所には数か月に一度帰省するぐらいであれば、「生活の本拠」になっていないと判断され、税務上は同居していたとは認められません。
3.相続人が単身赴任していた場合
上記のように、相続人が被相続人と同居していたか否かを、実際に住んでいた場所を基に判断すると、単身赴任は同居とは認められません。しかし、例えば、相続人に家族がいて、被相続人の元に家族を残して単身赴任していた場合には、異なる考え方を採ります。
相続人の家族が引き続き元の住所で被相続人と同居していて、相続人は週末や連休などの機会に家族の元に帰るのであれば、相続人の「生活の本拠」はなお元の住所にあると判断されます。相続人の「全生活の中心」は被相続人の居住する家屋にあり、赴任先の住所はあくまでも勤務のための仮住まいであると考えます。
また、被相続人が亡くなる前に転勤が解消されれば、再び相続人は被相続人と同居するのが自然であると考えられます。このようなことから、被相続人の元に家族を残して単身赴任していた場合は、相続人は被相続人と同居していたと判断されます。
したがって、被相続人の元に家族を残して単身赴任していた相続人が自宅の宅地を相続したときは、相続税の申告期限まで保有することで小規模宅地等の特例を適用することができます。
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